改ざんされた公文書に市長はじめ部長級ら16人が押印。つじつま合わせで虚偽の答弁までしたとなれば、単なるミスでは済まされない。

 石垣市が専決処分した2025年度補正予算案を巡り、市議会が中山義隆市長の不信任決議案を与党、野党、中立の計19人の賛成で可決した。反対は公明2人だった。
 発端は、市が議会に提出した国民健康保険事業の特別会計補正予算だ。赤字分9200万円を専決処分したことについて承認を求めていた。
 だが、市が専決処分の日付を改ざんしていたことが判明したのである。
 赤字分の補填は5月末までに手続きする必要があったが、担当部署が気づいたのは6月上旬。放置すれば地方自治法違反となるため、市は5月30日付で決裁したように装う虚偽の文書を作成した。
 その上、日付の齟齬(そご)に気づいた議員に対し、担当課長が議会の委員会で「(5月30日の)ハーリー会場に出向いて市長から押印を受けた」などと虚偽の答弁をしていた。
 市は議案を撤回。本会議では中山市長も一連の経緯について報告を受けていたことを認め謝罪した。
 公文書の改ざんは刑法上の罪に問われる可能性がある。そうした不正を市長も黙認していたとなれば由々しき事態だ。

 ただ、問題発覚からたった1日での不信任可決は前代未聞だ。突如として市長の不信任案が出され、可決された。市長と与党が結託して市民を欺いたという疑いさえ生じている。
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 一体何があったのか。
 本会議で中山市長の対応を追及した中立会派の議員が不信任決議の提案を表明した。
 それを受け、議会休憩中に市長は与党の会派室を訪れ協議。その後、急転直下で決議が可決されたのである。
 与党の代表は不信任に賛成した理由について「野党と中立の一部が中山市政の足を引っ張っている」とし、「市民の信を問うため」だったと答えた。
 決議が野党への「意趣返し」とは。めちゃくちゃな論理だ。
 不信任に賛成したのに、与党側は「出直し選挙」となれば市長を支持するとも明かしており、つじつまが合わない。
 有権者を軽んじているというほかない。

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 中山市長は28日までに辞職か議会解散かの結論を出さなければ失職となり、選挙が前倒しされる。野党側の選挙態勢が整わない中、「出直し選挙」を演出するためだった可能性さえ浮上している。
 改ざん問題に加え、決議を使って自身の選挙を有利に運ぼうとしたのであれば、市長の責任はなおのこと重い。
 改ざんにどれだけ関与していたのか。採決前に与党との間でどんな協議があったのか。市政への信頼をどう回復するのか。
 中山市長は会見を開いて市民へ説明すべきだ。
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