射程がこれまでの200キロから千キロ程度に伸びる。日本が相手国のミサイル発射基地などを攻撃する敵基地攻撃能力(反撃能力)を保有することになる。
政府は従来から、他に手段がなければ相手の基地を攻撃することは憲法上の自衛の範囲で「可能」と解釈してきた。一方、専守防衛の観点から、その能力を保有してこなかった。
ところが、中国の軍事的台頭や北朝鮮のミサイル開発などを受け、17年に保有に向けた検討を開始。20年に長射程ミサイルの開発を決定し、22年の安保関連3文書で敵基地攻撃能力の保有を明記した。
26年度だった当初計画を25年度に前倒ししたものの、配備の時期や場所を明らかにしていなかった。
県内ではうるま市の勝連分屯地、宮古島と石垣島の駐屯地に12式地対艦誘導弾の部隊が配備されている。
中国に近い沖縄では過度に緊張が高まる懸念から九州で先行する狙いがある。防衛省は既成事実を積み重ね、将来的に県内での長射程化を視野に入れる。
政府は「抑止力」を強調するが、有事になれば攻撃対象になるリスクが高まる。住民生活への影響は必至で、今後の配備を含め、計画を明らかにすべきだ。
■ ■
長射程ミサイルの運用には相手国の基地や発射機の位置を把握する必要がある。こうした役割を米軍と分担するために日米共同訓練の規模を拡大し、頻繁に実施している。
それ以外にも、政府は護衛艦での発着が可能なF35Bステルス戦闘機を8月から宮崎県の空自新田原基地に新たに配備する。
射程約1600キロの米国製巡航ミサイル「トマホーク」400発の導入は、1年前倒しで25年度から始める。国際情勢を理由に、前のめりで防衛体制の強化が進む。
防衛省は運用を一元的に指揮する「統合作戦司令部」を設置。米側は在日米軍司令部を「統合軍司令部」に再構成し、一体化を強めている。敵基地攻撃能力を巡る判断などがあいまいになるとの指摘もある。
長射程ミサイルの配備でどういった事態が想定されるのか、疑問に答えるべきだ。
■ ■
沖縄には在日米軍基地が集中する。それに加え、自衛隊の配備、増強が続く中で、もし配備されれば新たな負担となる。
憲法と日米安保条約の下、日本は守りに徹する「盾」、米軍が敵基地を攻撃する「矛」の役割があった。
国民的な議論を欠いた配備計画は検証すべきだ。
専守防衛の枠を超えるような軍事化をなし崩し的に進めることは許されない。