石破茂首相、赤沢亮正経済再生担当相が出席した4日の衆院予算委員会集中審議。日米関税交渉の合意内容を巡り、野党側が合意文書を交わさなかったことなどの問題を追及した。
関税合意の柱は、トランプ米政権が日本に対する相互関税、日本車への関税をそれぞれ15%としたことだ。しかし米国との間で合意文書は作成されておらず、解釈の違いも表面化してきている。
合意した5500億ドル(約80兆円)の対米投資で、トランプ大統領は投資利益の9割が自国に入ると胸を張る。一方、日本側は対米投資の枠組みは出資や融資、融資保証からなり、米側が9割の利益を得るのは出資案件に限られるとみている。
質問に立った立憲民主党の野田佳彦代表が「トランプ政権がどんどん拡大解釈して、日本がぼられ続けるのではないか」と懸念を示したのは当然といえる。
合意文書の不作成について石破首相は「関税の引き下げが遅れることを恐れた」と説明した。
だが投融資枠を設けたのは日本の政府系機関であり、投入されるのは公的資金だ。
トランプ大統領の過去の振る舞いを見ると、合意内容の曖昧さは火種として残り続ける。
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米国産のコメを無関税のミニマムアクセス(最低輸入量)の枠内で拡大する合意に関しても、後日、米側が「即時に75%増やす」約束だと明らかにした。
日本はミニマムアクセスで年約77万トンを輸入している。
大幅な輸入拡大は、はじき出される国の反発を招き、国内農家に打撃を与える恐れがある。
米側が「年数十億ドルの防衛装備品購入」としている合意についても、首相は「今回の交渉で議論になっていない」と説明した。
それにしても国家間の合意に、なぜこれほどまで食い違いが生じているのか。
日本経済や国民生活に多大な影響を与える合意である。「普通の人ではないトランプ大統領が相手だから」では済まされない。
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トランプ大統領が日本の実行状況に不満であれば、関税率は自動車も含め25%に逆戻りする-ベセント米財務長官は交渉が合意に達したその日に、テレビのインタビューで言い放った。
日本の国益を損ねないためにも、あらためて米側と意見を擦り合わせ、合意文書を交わし、その内容を国民に説明すべきである。
同時に自由貿易体制を推進する秩序の再構築に向け、欧州などと連携していくことも重要だ。
米国市場依存から貿易パートナーの多角化へ、政策を強化しなければならない。