またもや、住民生活を脅かす日米安保体制の課題が露呈した。
 うるま市のホワイトビーチ沖合で、米海軍佐世保基地(長崎県)のドック型揚陸艦「ニューオーリンズ」の火災が発生した。

 20日午後5時ごろ、米軍から海上保安庁に通報があった。米軍や自衛隊が小型ボートから放水し、21日午前4時ごろに鎮火したと発表した。
 乗組員2人が軽傷を負ったほか、鎮火後にニューオーリンズの汚水回収作業に当たっていた日本人男性が左手の指を骨折した。
 一方、日本側に火災の詳細は明らかにされていない。米軍は原因と再発防止策を直ちに示すべきだ。
 通報の30分前には、米軍側が日本語で「火災です」と周囲に注意を呼びかけ、放水が始まっていたという証言もある。米側からの通報は適切になされたのか、検証が必要だ。
 玉城デニー知事は21日の記者会見で「艦船には弾薬が搭載されている可能性もあるという情報がある」と懸念を示した。
 しかし、その後も米側から県へ積み荷の内容は伝えられていない。
 米軍施設や区域とはいえ、民間地域へ影響が広がる恐れがある場合、危険物を積んでいるかどうかの情報を提供するのは当然ではないか。
 米軍の事故のたびに同じような問題が起きている。基地と民間地が隣接する県内で事故の情報が隠されれば、県民を危険にさらしかねない。
日本政府も強く情報提供を迫るべきである。
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 過去には沖縄国際大学の構内や東村高江の牧草地に米軍ヘリが墜落した際、放射性物質を搭載している情報が伝えられず、消防隊員が防護服なしで消火活動したケースがある。二次被害を招きかねない。
 仮に搭載した弾薬が爆発すれば、自治体の想定外の大事故につながりかねず、消防が対応できるかどうかといった疑問も出る。
 米軍の航空機や、艦船による日本の民間施設の使用が拡大し、日米共同訓練などで空港や港湾、公道を利用するようになっている。
 住民の命を守る立場の自治体が、避難の必要性などを判断するには、積み荷の内容は欠かせない情報の一つのはずである。
 日本政府は国内で活動する米軍航空機や艦船などの積載物について、少なくとも事故時には危険性の有無などを地元へ伝える仕組みを構築する必要がある。
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 日米地位協定では、米軍が日本の空港、港湾を使用する権利を認めている。
 日本側に通告すれば、空港や港湾の管理者が反対しても、「自由使用」できると解釈されている。
 一方、県は民間航空機や船舶の円滑で安全な運航を確保するため、緊急時以外の使用禁止を求めている。
 今回のように、米側が事故の起きた艦船の積み荷の内容を明らかにしないようであれば、安全の確保は、より難しくなる。
 改めて地位協定の問題を指摘し、改定を求めたい。
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