基地の機能強化であり、沖縄の負担増につながる。
一時的という当初の説明を簡単に変えて、恒久配備化していく日米両政府の姿勢は、あまりに不誠実だ。
防衛局は昨年8月、南西地域周辺で情報収集や警戒監視を強化する目的で、海兵隊のMQ9(6機以下)を約1年間、嘉手納に一時展開すると説明していた。
嘉手納には米空軍のMQ9が8機、海軍のMQ4(トライトン)も2機それぞれ配備されている。最大16機の無人機が無期限で展開することになる。
全幅約40メートルもある大型のMQ4も昨年10月、一時配備を終えグアムに戻った後、今年4月再配備された。
安全保障政策は、地元の理解を得ることが何より重要だ。にもかかわらず、「一時的」の約束をほごにした米軍の方針転換を日本政府が伝えるだけというのは地元軽視もはなはだしい。
住民の安全と生活を守る立場から當山宏嘉手納町長が「防衛局の当初の説明と異なり、無期限配備は基地負担のさらなる増加につながる。容認できない」と反発するのは当然だ。玉城デニー知事も「計画を見直すよう(日米に)伝えていた。大変遺憾だ」と述べた。
県民を欺く行為であり、認められない。
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米戦略国際問題研究所(CSIS)は2023年、台湾有事を想定したシナリオを公表。台湾防衛に成功したが、日米は艦艇数十隻や航空機数百機を失うほか人的被害も数千人に上り甚大な損害を被るとした。
「嘉手納基地の滑走路の両脇には機体の残骸が並び、多数の死者の仮設墓地も造られるだろう」との記述もあった。周辺住民も巻き込まれかねない。
海兵隊は小規模部隊を島しょ部に分散展開する「遠征前方基地作戦(EABO)」を掲げる。その一環として、県内に一時配備としていた無人艇「ALPV」1隻を無期限配備に切り替えた。来年、最新式の地対艦ミサイル搭載無人車両「NMESIS(ネメシス)」を配備する。
装備の無人化は、自国の兵士の命を守るためだが、一方で、攻撃の心理的ハードルを下げる。無人化は沖縄に何をもたらすのか。
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来月、八重山諸島を含む県内外で陸上自衛隊と米海兵隊が、離島防衛を想定した最大規模の演習を行う。
防衛省は敵基地攻撃能力(反撃能力)を備えた陸自の長射程ミサイルを、将来沖縄に配備することも見据える。
「抑止力」を過信し防衛力増強に頼れば相手も軍拡に走る安全保障のジレンマに陥り緊張を高める。信頼醸成のための外交に、政治はかじを切る必要がある。
なし崩しの機能強化でリスクを負うのは県民だ。