沖縄・多良間島を守る「緑」　琉球王国時代から続く抱護林（ポーグ）の秘密

　今月23日に夏の甲子園の決勝戦が行われ、沖縄尚学が3－1で日大三に勝利しました。弊社のオフィスは日大三の本拠地である東京にあるのですが、沖縄出身の従業員は私一人ということもあってか、連日「沖縄おめでとう」のお祝いを言葉をいただきます。まるで私自身が甲子園に出場したかのようなこの感じは、県外にいるうちなーんちゅの皆さんも同じような体験をされているのではないでしょうか。

 

甲子園の決勝戦　天気振り返り
　当日の甲子園の決勝戦の試合中の天気は薄曇りが続き、試合開始の午前10時台は29.8度、最高気温は32.7度でした。試合中の風向きは西→西南西→北西の風へと変わり、3メートル前後の強さでした。予想していたよりも雲の広がりがありましたが、選手の皆さんにとっては非常に厳しい暑さからは回避できたのではないかと思います。来年の甲子園がまた楽しみです。
多良間島で季節めぐり
　前回のコラムは甲子園決勝の天気についてお届けしたため、今回は予定していた多良間島めぐりの続きをお届けします。
　宮古島地方の多良間村は、宮古島と石垣島のほぼ真ん中に位置し、多良間島と水納島があります。

多良間村観光案内版※2025年8月9日筆者撮影

　“水納島”は沖縄に二つ存在するのをご存知でしょうか。宮古島の北西にある水納島と、沖縄本島の西にある水納島です。宮古島地方の水納島は島民の方が3名ほどいらっしゃるそうです。多良間島は周囲20キロの楕円形の島。隆起サンゴ礁の島で宮古島と同じく平坦な地形が特徴です。
　人口はおよそ1,000人で、多良間島は県内で唯一「日本で最も美しい村」に加盟しています。多良間島へのアクセスは、宮古島から飛行機でおよそ20分、もしくはフェリーでおよそ2時間です。
多良間島の抱護林（ポーグ）　台風から島を守る
　多良間島の海岸線は防潮林(ぼうちょうりん)が取り囲み、集落はフクギの抱護林(方言でポーグ)がぐるっと取り囲んでいます。

多良間村の海岸線、左側が海、右側が道路※2025年8月9日筆者撮影
多良間村の塩害防備保安林が海岸線に並ぶ※2025年8月9日筆者撮影

 

多良間村の塩害防備保安林※2025年8月9日筆者撮影

　抱護林(ポーグ)は、18世紀の琉球王国の三司官だった蔡温(さいおん)によって、施策で整備されたといわれています。防風・防潮・防火・土砂の流失防止の役割を果たしています。このような抱護林(ポーグ)は他ではほぼ消滅をしていて、県内唯一の貴重な遺産として、天然記念物に指定されています。

多良間村の抱護林(ポーグ)※2025年8月9日筆者撮影.
多良間村の抱護林(ポーグ)※2025年8月9日筆者撮影
多良間村の抱護林(ポーグ)について※2025年8月9日筆者撮影
多良間村の抱護林(ポーグ)について※2025年8月9日筆者撮

　また、2019年には抱護林(ポーグ)と 蔡温(さいおん)が記した「林政八書」が県内で初めて林業遺産に登録されました。抱護林(ポーグ)は、台風による暴風や北寄りの季節風から、今も島を守っています。

多良間村の抱護林(ポーグ)の林業遺産について※2025年8月9日筆者撮影

宮古島は少雨状態に
　宮古島は8月に入って雨の少ない状態が続いています。宮古島のアメダスの28日(木)時点の8月の降水量は40.0ミリとなっています。
　これまで8月として最も少ない月合計値の降水量は、2017年の43.5ミリとなっています。今月31日にかけても降水が観測されない状況が続くと、8月としては観測開始以来、最も降水量が少なくなる可能性があります。農作物の影響が心配されます。
旧盆期間は雨の可能性も　台風の卵の発生にも注意
　9月14日(日)にかけての各地の天気と気温の予想をグラフで見てみましょう。那覇、宮古島、石垣島、南大東島の全ての地点で、最高気温、最低気温ともに平年のこの時期よりも気温の高い状態がしばらく続く予想となっています。これは、沖縄付近に湿った空気が入りやすい気圧配置となるためです。

那覇の9月14日(日)にかけての天気と気温予想 ※8月29日(金)午前11時、ウェザーマップ発表
宮古島の9月14日(日)にかけての天気と気温予想 ※8月29日(金)午前11時、ウェザーマップ発表.
石垣島の9月14日(日)にかけての天気と気温予想 ※8月29日(金)午前11時、ウェザーマップ発表.
南大東島の9月14日(日)にかけての天気と気温予想 ※8月29日(金)午前11時、ウェザーマップ発表.

　8月28日(木)に「高温に関する早期天候情報（沖縄地方）」が沖縄気象台から発表されました。沖縄地方はこの先、暖かい空気に覆われやすく9月3 日(水)ごろから、かなりの高温になる予想で、農作物の管理などへの注意を呼びかけています。9月に入っても引き続き熱中症への対策をお願いします。（かなりの高温の基準：５日間平均気温平年差＋0.9℃以上）

熱中症予防のポイント※ウェザーマップ
熱中症の症状※ウェザーマップ
熱中症になった時は※ウェザーマップ

　うちなぁ行事で大切な旧盆期間の9月4日(木)から6日(土)にかけてのこの期間の前後は、南海上から沖縄付近にかけて雨域が予想されています。
　雨の少ない状態が続いている宮古島地方では恵みの雨となってほしいところですが、台風の卵の発生などにも注意が必要です。
　なお、8月29日(金)午前0時時点での沖縄本島の合計11ダムの貯水率は96.0％で、平年値との差は＋0.9ポイントとなっています。
週末は大気不安定　体感ジメジメ
　今週末の沖縄地方は、湿った空気の影響で雨雲が点在する予想です。天気の急な変化にお気を付け下さい。各地の最高気温は33℃前後の予想です。気温だけではなく湿度の高い状態も続きますので、部屋の中の温度管理や食べ物の管理にご注意下さい。

沖縄本島地方・大東島地方の予報 ※8月29日(金)午前11時、ウェザーマップ発表
宮古島地方・八重山地方の予報 ※8月29日(金)午前11時、ウェザーマップ発表

　一方、南シナ海には熱帯低気圧があって、30日(土)にかけて台風に変わる見通しです。29日(金)正午現在の熱帯低気圧情報によりますと、今後の進路は北西方向へ進み、大陸方面へ向かう予想となっています。今のところ沖縄地方への大きな影響はない見通しです。
　ただ、フィリピンの東には別の低圧部(周辺よりも気圧の低いエリア)が30日(土)にかけて発生する予想で、今後の発達や進路に注意が必要です。
崎濱綾子
気象予報士／防災士（株式会社ウェザーマップ）
　沖縄県宜野湾市生まれ。ミスはごろもとして地元の観光大使を務める。RBC琉球放送でラジオ・テレビのリポーター、QAB琉球朝日放送で気象キャスターを担当。2005年に沖縄初の女性気象予報士となる。2005～2016年3月までRBC琉球放送の夕方のニュース番組で月～金曜日の気象キャスターを担当。2016年4月から東京の本社で勤務。Yahoo!ニュース動画出演・記事執筆を担当。Yahoo!ニュースエキスパート。好きな天気現象は、夏至南風（カーチーベー）。