米軍那覇港湾施設(那覇軍港)の浦添市西海岸への移設計画を巡り、沖縄防衛局は1日から環境影響評価(アセスメント)の方法書に関する住民説明会を始めた。1日は浦添市、2日は那覇市で開き、3日は宜野湾市で開催する。

 移設に関するアセス手続きは配慮書、方法書を踏まえて調査を実施。その後、準備書、評価書、報告書と続く。今回は第2段階の方法書で、防衛局は先月18日に公告・縦覧を開始した。
 方法書では、埋め立て予定の一部に作業ヤードを建設する計画になったことを踏まえ、事業実施想定区域を配慮書段階より南西に拡大した。代替施設の埋め立て面積は49ヘクタール。工期は着工後「少なくとも9年間と想定」としたが、今後の検討結果を踏まえ最終的に決定すると幅を持たせている。
 今回の方法書で、アセス項目に、供用開始後の米軍の運用内容が含まれていないことが明らかになった。
 環境影響を評価する項目として、大気や騒音、動植物、景観などを挙げているが、いずれも埋め立て工事が対象。軍港では民間港とは異なり、軍艦船の入港や航空機の離着陸などが想定されるが、一切考慮されていないことになる。
 環境影響評価法の目的は、大規模事業による環境悪化を未然に防ぎ持続可能な社会を構築することとされている。法の趣旨にのっとれば、米軍か否かに関係なく、どのような船舶や航空機がどの程度の頻度で運用するのかを把握し影響を調査するべきではないか。
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 1日の説明会では住民から、完成後の影響を評価する項目がないことへの懸念や、「海が死んでしまいかねない」との悲痛な声が上がった。
地域住民にとり軍港移設は、海が埋め立てられるだけではなく、生活の隣に新たな軍事施設が生まれることを意味する。懸念を深めるのは自明だ。
 方法書には約560件の市民意見(パブリックコメント)が寄せられ、「軍港移設による環境の変化を防衛局は過小評価しておりとても受け入れられない」など大半は反対だった。
 説明会で防衛局担当者は「米軍活動が地域に与える影響を最小限にするよう取り組む」と回答した。
 だが、米軍が軍港をどう運用するのかは不明だ。那覇軍港では、米軍基地の使用条件を定めた「5・15メモ」の使用目的に反する形で近年、オスプレイなどの航空機が離着陸している。
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 米軍基地のアセスを巡り県内には国への根深い不信がある。名護市辺野古の新基地建設で、防衛局はオスプレイ配備を隠し「後出し」の形でアセス最終段階の評価書に初めて記した。
 さらに、大規模な地盤改良工事が必要な「軟弱地盤」の存在が分かった後も、国はアセスのやり直しを否定している。辺野古のアセスは、専門家が「史上最悪」と指摘するほど、問題だらけだった。
 基地の運用は環境に大きな影響を及ぼす。国は、浦添移設事業でも米軍の想定する運用を把握し、アセスの対象とする必要がある。
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