東南アジア原産のグロスミッチェルは1950年代ごろまで世界各地で広く栽培されていたが、バナナを枯死させるパナマ病のまん延で生産量が激減した。しかし栽培技術の進展で、近年は復活しつつある。
おきなわ農業漁業事業協同組合は昨年8~10月にかけて、グロスミッチェルの苗を群馬県から2千株導入。組合員所有の糸満市喜屋武の畑を中心に植えた。栽培面積は約4万平方メートル。子株が順調に増え、今年9月には4千株になった。
糖度は20度以上で島バナナより数度高いほか、完熟すると皮ごと食味でき、もっちりとした食感や濃厚な甘さ、華やかな香りを楽しめる。さらに収量が高く、周年で収穫可能。樹高が低く、台風の影響を受けにくいといったメリットもある。
同組合は無農薬で栽培しており、當山和彦専務理事は「関係者向けの試食会でも反響が大きい」と手応えを話す。
日本はフィリピンや台湾から年間100万トン余のバナナを輸入している。市場で国内産は5%ほど。県産の生産量は年間およそ70トンにとどまる。
同組合は各市町村に働きかけてグロスミッチェルの試験栽培も進めており、年間10万トンの生産を目標に掲げる。初年度の収穫は60万本余を見込む。
組合設立は2020年で、組合員は現在22人。島元組合長は「組合員を増やし、栽培を普及させ、農家がしっかりと利益を作れる農業を実現させたい」と語った。
