[命ぐすい耳ぐすい 県医師会編](1368)
 がん細胞が骨に転移した状態を骨転移といいます。この骨転移はさまざまな症状(痛み・骨折・まひなど)を伴い、がん患者にとってはつらいものとなります。

 この骨転移の症状緩和に最も効果的な治療法とされるのが放射線治療です。放射線治療は多くの総合病院で行っており、骨転移患者の約70%が症状緩和を得られることが分かっています。残念ながら残り30%程の症状緩和が得られなかった患者は再度の放射線治療や緩和ケアにて麻薬系鎮痛薬で対応することになりますが、これらでも十分な緩和が得られない場合があります。
 そこで、近年では放射線治療で効果がなかった患者の症状緩和を目指した治療法の開発がいくつか試みられています。その一つに動脈塞栓(そくせん)術という治療法があります。動脈塞栓術はカテーテルという細い管を用いた治療法で、救急医療の現場では腹部の中などで出血している血管内にカテーテルを挿入し、そのカテーテルから塞栓物質を投与する事で出血を止める治療法として行われています。
 「がん」は生き物です。生き物が成長するためには栄養を取らなくてはなりません。がんの栄養補給路は動脈であることが分かっており、がんは動脈血を確保するためにいくつかの栄養血管を作り出し、それを介して動脈血を腫瘍内に採り入れているのです。この栄養血管を逆手にとった治療が、国内外で行われてきました。カテーテルを栄養血管の中に挿入し、カテーテルから抗がん剤や血管塞栓物質を投与し、がんを兵糧攻めにします。がんにとっては栄養補給経路が絶たれるため、非常につらいものとなります。
この兵糧攻めにより、がんの活動性が低下し、患者の症状緩和につながるとされています。
 この骨転移に対する動脈塞栓術はこれまでに約90%の患者で症状が緩和されることが示されています。
 今後は放射線治療と並び、がんの痛み緩和の治療法として普及していくことが期待されています。(平安名常一・南部徳洲会病院放射線治療科=八重瀬町)
骨転移に新たな治療法 がんの栄養絶つ動脈塞栓術 患者の90%...の画像はこちら >>
編集部おすすめ