セクハラの事実だけではなく、その後も人権侵害が続いている状況を示すには十分過ぎる。
 南城市の古謝景春市長によるセクハラ問題で、古謝市長が市の女性職員に対し、セクハラを認め、さらに口封じするような発言が録音されていた。

 女性は10年以上前から市長に繰り返し体を触られ、キスされるなどの被害を受けてきたという。
 市長室で録音したデータには「会った時にハグしたさーね」と認め、「それ以外(キスなど)変なこと、やられていないって言ってね」と口止めしている。
 市の第三者委員会は5月、市長のセクハラとパワハラを認定した。市長室では「第三者委員会にあんた話したの?」と問い詰めるような声も収めている。
 力の差がある中での威圧的な「申告者捜し」に遭い、女性は休職を余儀なくされている。
 「仕事に行くのが毎日怖くて、市長が出張だとほっとした」と語るほど追い込まれていた。重大な二次被害であり、原因は市長の存在に他ならない。
 古謝市長は録音内容が明らかになっても「ハグは相手からしてきた。娘のようにかわいがってきた」とセクハラを否定し、「政治的な絡みがある」と憤った。
 「認識と理解の欠如」としか言いようがない。
 第三者委の報告の時点で市長は身を引くべきであった。それを無視し、被害者の傷を広げる権力の乱用は許されない。

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 南城市議会では26日の9月定例会最終本会議で市長への4度目の不信任決議案を提出する動きがある。これまで否決を繰り返してきた議会の責任も重い。
 与党の一部は「市政の混乱が長期化している」などと結果に絞った文面で調整している。セクハラ問題の核心を避ける及び腰の姿勢には違和感がある。
 市議は報復を恐れながら被害を訴える職員たちに寄り添い、市民の信頼回復につながる道を選ぶべきだ。
 古謝市長は来年2月までの任期を全うする考えで、辞職の意思はない。
 可決となれば「議員は自分の首を絞める」と議会解散をちらつかせる。
 市政は市長個人のものではない。市議を揺さぶり、市民の分断を招く脅しはやめるべきである。
 与党側が不信任を模索しなければならない事態の深刻さにこそ目を向ける必要がある。
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 古謝市長のセクハラ問題は、2023年12月に運転手だった女性の申告で表面化してから2年近くたつ。
 市議会の調査で、職員9人が被害を具体的に告発した。
「胸を触られ、キスされた」「手を握られ、太ももをなでられた」と耳を疑うような内容が並んだ。
 第三者委はセクハラを認定した。否定する市長を「不合理」と断じた。原因を「権限集中と長期在任の影響」と指摘し、再発防止策として辞職を求めた。
 古謝市長がその座に居座り続ける時間は、市政への信頼が失墜し続ける時間に重なって映る。
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