石垣市議会で、子どもたちに国歌「君が代」を歌えるか尋ねるアンケートの実施を求める決議が可決された。
決議案を提出した与党議員は、学習指導要領に小中学校での指導が定められていることから、国歌に対する認識や習熟度を把握し、今後の指導に生かすとする。
市内の児童生徒を対象に聞くのは(1)日本の国歌を知っているか(2)国歌を歌えるか(3)音楽の授業で国歌を習ったか(4)入学式や卒業式で国歌を歌っているか-の4項目。決議の宛先は石垣市長、市教育長(各小中学校長)となっている。
なぜ今なのか、唐突な印象は拭えない。君が代をしっかり歌えるようになるためというのが理由だが、強制につながりかねない危うさをはらんでいる。
提出者の議員は「無理やり歌わせようというものではない」とするが、保護者の意見として十分に歌えていないという懸念を取り上げ問題視する。
憲法は思想・良心の自由(19条)、信教の自由(20条)といった内心の自由を保障している。
文部科学省は、学習指導要領で「歌えるよう指導する」ことなどを定めているが、一方で児童生徒の内心に立ち入らないよう繰り返してきた。そもそも「歌えるか」問うこと自体「歌わなければならない」との無言の圧力となる。
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君が代を巡っては、大阪府吹田市教育委員会が2023年3月、全市立小中学校を対象に、君が代の歌詞の暗記状況を一斉に調査し、問題となったことがある。
吹田市の場合、市議の求めに応じた形だったが、今回は市議会の決議であることを考えると、「圧力」はより強い。教育基本法にも抵触しかねない。
日の丸を国旗、君が代を国歌と定めた国旗国歌法は1999年に成立した。
当時、有馬朗人文相は、児童生徒への指導について「歌わないのは個人の自由で、長時間の指導を繰り返すような精神的苦痛を伴う指導や、口をこじ開けてまで歌わせることは許されない」と強調した。
そもそも、法律には、国民に義務を課す条項は何もない。政府も法律制定時に「国民に義務を課すものではない」と説明していた。
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日の丸や君が代は、特に県内では、沖縄戦の体験から複雑な思いを抱える人が多い。
天皇陛下(現上皇さま)は2004年の園遊会で、
学校現場での日の丸掲揚と君が代斉唱について「強制になるということでないことが望ましい」と発言した。
なぜ、今、国歌の調査なのか。南西諸島の軍事化と日米一体化が進む中、国防への関心や国家への忠誠心を高める狙いがあるのか。
国や郷土への愛着は、国歌を歌わせることではなく、自然に育まれるものでなくてはならない。