新垣亮・社会部

感謝の気持ちを込めて敬老会で踊る南風原高校郷土芸能部のメンバーら=9月20日、津嘉山公民館

 去った9月20日。南風原町の津嘉山公民館では敬老の日の催しが開かれていた。
お年寄りたちの拍手喝采を浴びたのは地元・南風原高校の郷土芸能部。この夏、高校野球の沖縄尚学と同じく、「全国V」を成し遂げたメンバーたちだ。はつらつとした演舞は催しをにぎやかにし、シマの大先輩たちの頬も緩みっぱなし。「何から何まで見応えがあった。来て良かったよ」。終演後、92歳になる金城満子さんは満面の笑みを見せた。
雪辱晴らした総文祭

全国総文祭で創作舞踊「御願綱」の迫力ある演舞を披露する部員たち=7月30日、香川県丸亀市・綾歌総合文化会館アイレックス

 同校は7月下旬に香川県で開催された全国高校総合文化祭(かがわ総文祭2025)郷土芸能部門で4年ぶり2度目の最優秀賞(文部科学大臣賞)を獲得し、新国立劇場小ホール(東京)での優秀校公演の切符を勝ち取った。優秀校公演への出演権を得られるのは 部門上位2校のみ。同校は昨年、南風原町の津嘉山大綱曳きを題材にした舞踊「御願綱」を披露したが、3位の優良賞で悔し涙に暮れた。
 昨年の岐阜大会前から同校を取材していた。足元を見直し、「地域の宝」にこだわった演目だけに部員は住民から多くを吸収し、芸を磨いた。21年ぶりに復活した大綱曳き開催とも重なり、綱打ちから本番まで積極的に関わった。
住民からは棒術や祈りの歌なども指導を受けた。それでも結果は3位。2位相当の優秀賞を獲得し歓喜に沸く八重山とは対照的だった。
 今年、再び同じ「御願綱」で全国に挑んだメンバーたち。並々ならぬ思いで舞台に立ったのは想像に難くない。あれから1年、部員は「一つになること」に集中して取り組んだという。魅せる演出から舞台道具の細部に至るまで見直した。香川で雪辱を果たし、念願かなったが「喜び爆発」と言うよりは、「安堵(あんど)」の涙だったように映った。相当なプレッシャーもあっただろう。

大会終了後、全国優勝と東京公演の切符をつかんだ南風原メンバーに駆け寄ってきたのは優良賞(3位)の八重山のメンバー(緑のポロシャツ)。「東京でも頑張って」と踊りでエールを送った=7月30日、香川県丸亀市・綾歌総合文化会館アイレックス

地域に「感謝の気持ち」
 全国総文祭から約2か月。練習場所としてもお世話になった津嘉山公民館で開かれた敬老会では「御願綱」以外にも舞踊や歌謡ショーで場を盛り上げた。
お年寄りの手拍子に部員たちの舞も弾んだ。
 3年で部長の外間凪琉(なぎる)さんは「地域の方からまたパワーをもらえた」と汗をぬぐった。そして「日本一を取れたのは自分たちの力だけではない。練習でも公民館を貸してくれた。感謝の気持ちを込めて演舞した」と語った。

全国総文祭に向け稽古にはげむ部員たち。最終的な調整は本番直前まで続いた=7月12日、南風原町・津嘉山公民館

 外間さんら3年生のうち、7人が県立芸大への進学を希望しているという。将来、実演家として羽ばたく姿が今から楽しみだ。
 高校生から大きな力をもらった熱い夏だった。私のルーツも南風原にある。「地域の宝」を誇らしくも思えた。こちらこそ、ありがとうと伝えたい。

 12月12日には南風原町中央公民館黄金ホールで昼夜2回の自主公演があるという。日本一の演舞にぜひ多くの人が触れて欲しい。
 
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【記者のコラム】「全国一」の感謝の舞
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