セクハラ行為で第三者委員会から辞職提言を受けていた古謝景春南城市長の不信任決議を、市議会が可決した。
 4度目となった今回の不信任の提案者は、いずれも市長を支えてきた与党の6人。
採決に加わった18人中15人が「不信任」との判断をした。
 地方自治法に基づき、10日以内に辞職か議会を解散するかの選択を迫られる。期限までに判断しなければ失職する。
 市政の混乱をこれ以上長引かせないためにも、市長は第三者委と市議会の判断を重く受け止め職を辞すべきだ。
 一連の疑惑を巡っては、市が設置した第三者委が、複数の女子職員へのキスや太ももを触るなどの行為をセクハラと認定した。
 古謝氏はそのたびに否定してきたが、被害者に口止めする音声が公開されるに至り、議会がやっと自浄能力を発揮した形である。
 決議は「市民に不信感と動揺が広がる」と指摘しているものの、市長の「多大な功績」に感謝する言葉も多く、理不尽なセクハラや被害者の痛みへの記述はない。
 市長が辞職するのは当然だとしても、被害を長期間防げなかったことの責任の一端は議会にもある。
 採決前の討論で野党の女性市議は、「被害者の時間を前へ進めよう」と切々と訴えた。与党議員も「被害者に寄り添える市議会に」と語った。
 不信任を可決したから終わりではなく、被害者の心の傷が癒えるような真摯(しんし)な対応が求められる。
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 古謝氏の運転手だった女性がセクハラ被害を訴え、問題が表面化してから2年近くがたつ。

 調査などで明らかになった被害自体深刻なものだが、その後の被害者捜しやSNSでの被害者攻撃は目に余るものがあった。
 数日前に公表された音声データでは「変なことやられてないって言って」など被害を口止めするような行為にも及んでいる。
 いまだにと思うほど、旧態依然とした感覚にあぜんとする。
 市長のセクハラで休職に追い込まれた女性職員もいる。勇気を振り絞って声を上げたのに、今も言い知れぬ恐怖におびえているではないか。
 まずは被害者の救済を早急に進めなければならない。
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 不信任可決後、古謝氏は進退について明言していない。
 ただ採決を控え「可決なら解散」と議員をけん制するような場面もあった。次期市長選へ立候補する可能性にも言及している。
 自身の問題で市政を混乱させ、市民の分断を招いているというのに、解散に大義があるとは思えない。
 解散、市議選となれば2千万円もの税金が使われることになる。
 議会を解散するという選択をした場合、混乱はさらに広がり、被害者の救済も遅れる。

 この期に及んでそういう判断をしてはならない。
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