値札を見て驚き、そっと商品棚に戻す-。そんな人が少なくないかもしれない。
この秋も、値上げラッシュが止まらない。
 帝国データバンクの調べによると、10月に値上げが予定されている食品は3024品目。4月の4225品目以来、半年ぶりに3千品目を超える値上げとなった。2025年通年では2万1千品目前後になる見込みである。
 特に目立つのが500ミリリットル入りの清涼飲料水だ。炭酸飲料「コカ・コーラ」の希望小売価格は194円から216円に値上げされる。自販機のペットボトルは「1本200円時代」に突入する。
 コメ価格の高騰で、コメを原料にしたパックご飯や切り餅、日本酒も上がる。
 民間の調査で、1年前と比べて食料品の物価高を感じると答えた人の割合は沖縄県が83・7%で全国で最も高かった。
 一方で、政府が暑さ対策として7~9月に再開した電気・ガス料金の補助金は予定通り9月で終了した。沖縄地方の厳しい残暑は当面続く。まだまだエアコンが必要で、家計への負担は重くなる。

 75歳以上で一定の所得がある人の医療費の窓口負担は、1日から完全に2割へ引き上げられた。外来受診時の負担を軽減する措置が9月末で終了したためだ。
 実質賃金はマイナスが続く中、これからどう生活を維持していくか。頭を抱えている家庭も多いはずだ。物価高対策は一刻の猶予も許されない課題である。
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 こうした状況にもかかわらず、暮らしに直結する政策が停滞している。
 7月の参院選で自民、公明が公約に掲げた国民1人当たり2万円の現金給付は実現していない。
 野党は消費税減税などを掲げたが、こちらも実現の兆しが見えない。
 自民、公明、立民による給付と減税を組み合わせた「給付付き税額控除」の議論も大きく進んでいない。
 ガソリン税に上乗せされる暫定税率は、廃止を盛り込んだ法案の成立を秋の臨時国会で見込んでいるが、年1兆円規模の税収減に対応する代替財源の確保が課題となっている。
 最低賃金が全都道府県で初めて時給千円を超えるが製品やサービスに価格転嫁されることで物価上昇が長期化する可能性もある。
 「石破降ろし」など自民党内抗争で貴重な時間を費やし大事な議論は足踏みしたままだ。
家計は悲鳴を上げている。政治の責任は重い。
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 自民党総裁選はきょう、投開票される。
 共同通信の世論調査では、議論してほしい課題の3割を物価高対策が占めていた。しかし論戦は、外国人政策の厳格化や「ステマ問題」などに関心や話題が集まり、物価高対策は盛り上がりに欠けた。
 新総裁が新たな首相に就く公算が大きいとされる。総裁選でさらに政治的空白が生じた。15日にも召集される臨時国会の最優先事項は物価高対策である。議論を深め、政策を前に進めてほしい。
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