トランプ米大統領が主導してまとめたパレスチナ自治区ガザの包括的な和平計画について、イスラム組織ハマスは、全ての人質の解放に条件付きで同意する、との声明を出した。
これを受けてトランプ大統領はイスラエルに対し、ガザ爆撃の即時停止を求めた。
ガザの市民にとって、戦争終結ほど切実に待ち望まれていたものはない。
イスラエルの容赦ない攻撃。飢餓のまん延。何度も人道危機が叫ばれながら戦争を止めることができず、この2年で6万7千人以上が死亡した。
ここにきてようやくガザ市民に「戦争が終わるかもしれない」という一筋の希望の光が差し込んだのである。
仲介役のエジプト政府の発表によると、イスラエルとイスラム組織ハマスは6日、エジプトで協議する。
ただ人質解放についてイスラエルのネタニヤフ首相は、イスラエル軍の完全撤退を否定する一方、ハマスの武装解除も改めて要求した。
人質の全面解放をどのような条件の下で実現するか。
ハマスはイスラエル軍の攻撃停止に加え、ガザからの完全撤収を要求している。
両者の隔たりは大きく楽観視できる状況にはないが、双方が譲歩し、なんとしても戦争終結につなげてもらいたい。
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ガザの和平計画は、トランプ大統領がネタニヤフ首相の同意を取りつけ、カタールやエジプトなど仲介国の協力を得て発表したもので、ハマスは外交上、外堀を埋められた形だ。
カタールやエジプトは「これが最善の取引」だとしてハマスに受け入れを迫ったといわれる。
ハマスにとって拘束する人質は「唯一の切り札」になっているが、パレスチナ住民の中には「人質が解放されれば、イスラエルが戦争を続ける口実がなくなる」と、ハマスの人質解放を支持する声もあるという。
ハマス関係筋は「『イエス、バット』で理解されるべき」と主張する。和平計画を肯定しつつも、「受け入れられない項目がたくさんある」という意味だ。
人質解放を実現するためにはイスラエルの譲歩が必要で、ハマス壊滅一辺倒では公正な和平は不可能だ。
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ロシアのウクライナ侵攻に対する対応もそうだが、トランプ大統領の方針は二転三転する。
今後、誰がどうトランプ大統領に働きかけ、彼の心を動かすかも、和平協議の行方を左右しそうだ。
「ガザは生きる意味を失った荒廃地だ」「地獄よりも現実はもっと地獄だ」
そんな絶望的な言葉がガザ市民や国際機関の関係者から聞こえてくる。
イスラエルの攻撃で、今も罪のない市民が毎日のように命を失っている。そのような惨状を止めることが全てに優先されるべきである。