沖縄タイムス社と女性の健康支援サービスを手掛けるファミワン(東京都)は、企業参加型勉強会や紙面特集、オンライン学習、イベントなどのメニューを提供する企業向け健康経営サポートサービス「オフィスのやさしい保健室」を始めました。本特集では、同サービスの紹介や、女性の健康課題を切り口に、社会全体で他者理解を深め、誰もが働きやすい環境づくりを進めるための情報を発信します。


 

事例検討交え 県内企業勉強会 代表や担当者 7社18人参加

女性の健康課題について講話する臨床心理士の戸田さやかさん=9月24日、那覇市・タイムスギャラリー

 「オフィスのやさしい保健室」の第1回勉強会が9月24日、那覇市のタイムスギャラリーで開かれ、7社から人事担当者ら18人が参加した。月経にまつわる不調や更年期症状、不妊などに悩む女性の立場に立って、働く環境をどう変えていけるかを考えた。
 ファミワンの公認心理師、臨床心理士の戸田さやかさんが講師を務め、女性のライフステージごとの心身の変化や負担の重さなどを説明。不妊治療や更年期症状で仕事をどう続けるかに悩む女性の事例検討もあり、参加者同士で解決策などを話し合った。
 社員から不妊治療で遅刻や早退、急な休みを取ることになり、「職場に迷惑をかけるだろう」という相談があった場合、どう向き合うか。「あまり同僚に知られたくない」という意向も踏まえると、どんな環境整備ができるか。当事者の立場を想像し、「終わりの見えない不安を抱えているだろう」「離職を考えるほど悩んでいるかもしれない」などの意見が出た。
 「ここちホーム」(浦添市)の平良幸奈さん(31)は、不妊治療を経験した友人や知人がいるといい「自分にも起こり得ること、仕事とどう両立できるかを学びながら考えたい」と話した。同社の又吉拓馬代表(41)は「規模の小さな会社だと、治療を隠し続けるのは難しい。助け合う態勢ができないか。本人にも周囲にも負担にならないような対策を見いだせたら」と見据えた。
 更年期症状に悩む女性から、異動や昇進の打診に「自信がない」と打ち明けられるという事例の検討もあった。
アミューズメント企業「サンシャイン」(宜野湾市)の諸見里泉美さん(51)は「もしかしたらあの女性もそうだったのかもしれないと思い浮かぶ人がいた。症状や気持ちなど更年期について理解していたら、何かできただろうかと考えた」と言う。自身も、仕事へのモチベーションなど「不安がないわけではない。学んだことを同世代の女性に伝えていきたい」と前を向いた。
 りゅうぎん総合研究所が沖縄タイムスの依頼で試算したところ、女性特有の健康課題による経済損失は、県内だけでも年間約335億円に上る。那覇空港ビルディングの豊里倫乃さん(24)は「さまざまな困り事の視点を持ち、どう働いていくかを多角的に考えることが大切だと実感した。いろいろな役職の人を巻き込んで変えていきたい」と語った。(社会部・嘉数よしの)

女性の健康をテーマにしたグループディスカッション後に発表する参加者=9月24日、那覇市・タイムスギャラリー

企業同士の学び 変革の力 ヘルスコミュニケーション育てて
「まるのうち保健室」井上友美さんに聞く

まるのうち保健室の井上友美さん

 オフィスビルが立ち並ぶ東京・丸の内に2014年、三菱地所が推進する「まるのうち保健室」が立ち上がった。働く女性の健康課題に目を向ける先駆的な取り組みだ。プロデューサーを務める井上友美さん(ウェルイット代表)に経緯や成果、課題を聞いた。(聞き手=社会部・嘉数よしの)
 -「まるのうち保健室」を始めたきっかけは。 
 「食生活に注目したアンケートをしたところ、女性たちが栄養や睡眠、運動に問題を抱えていることが見えた。
特に驚いたのが1日の平均摂取カロリーの低さ。食糧難だった戦後直後よりも栄養飢餓状態だった。妊娠・出産にも関わる問題。月経や妊娠など性差による健康課題について学ぶ機会が少ないことも分かり、意識を持てるきっかけをつくろうと考えた。キャリアとライフイベントの中で目を向けなければならないことを捉える調査に発展した」
 -課題解決に向けどんな活動をしたのか。    
 「健康測定やアンケート、カウンセリングなど敷居の低い参加の機会をつくった。妊活や疲れやすいといった悩みを相談できるため、集まる人が増えた。栄養指導などを通して個人にフィードバックすることができたが、個人の努力だけではどうにもならないことも分かり、企業や社会へのアプローチも始めた。女性の健康課題への理解を深め、支える環境を整えていくため、近年は企業向けの勉強会に力を入れている。各社一緒に学ぶと、課題を共有しやすく、どんな取り組みをしているかも参考にできる。働きやすい環境づくりを進めやすくなる」
 -10年余続けての課題や手応えは。       
 「月経痛や更年期にまつわる不調などは女性同士でも話しづらかったが、理解が広まり、『体調が悪いので休ませてほしい』などと女性は相談しやすくなったのではないだろうか。
ポジティブに環境整備する会社も出てきた。例えば、月経痛や月経前症候群(PMS)の症状を軽くする低用量ピルの代金を、福利厚生として負担する企業が広がっている。当初は考えられなかった動き。女性たちに自分の体をマネジメントしながらキャリアデザインする意識が高まり、企業、社会にも理解が生まれ、職場からの支援の形も変化を遂げている」
 「ただ、企業規模や従業員の年齢構成などはそれぞれ異なるので、自社の課題を踏まえて取り組みを進める必要がある。私たちはデータとともに課題を可視化して、ヘルスケアについて考える機会を提供していく。迷いがちなヘルスコミュニケーションについて学べる動画も作成した。女性の健康を守り、未来への選択肢が広がるよう後押ししていきたい」
 いのうえ・ともみ wellit(ウェルイット)代表、「まるのうち保健室」プロデューサー。2007年に三菱地所へ入社、新丸ビル開業や丸の内エリアのブランド戦略等に携わる。「まるのうち保健室」では、働く女性の迷いや不安に寄り添い、その声を可視化し発信してきた。25年に独立。
10月18日 世界メノポーズデー 24日まで週間セルフチェック試して
 
 10月18日は「世界メノポーズデー」。メノポーズとは閉経のこと。
閉経前後の5年、計10年間の更年期の健康に関わる情報を全世界へ提供する日として、1999年に国際閉経学会(本部スイス)が制定。日本では日本女性医学学会が、18日から24日の1週間を「メノポーズ週間」と定め、啓発活動を展開している。同学会のホームページでも関連情報を見ることができる。更年期症状の程度について知る指標の一つに、SMI(簡略更年期指数)がある。症状に応じて点数をつけ、合計点でチェックする(詳細は下図)。

SMIスコア(簡略更年期指数)

 
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