公用車内で当時専属運転手だった女性にわいせつ行為をしたとして、強制わいせつ容疑で書類送検され、那覇地検が「嫌疑不十分」で不起訴にした沖縄県南城市の古謝景春市長について、那覇検察審査会は27日までに、不起訴を「不当」と議決した。
 古謝市長による元運転手女性へのセクハラ疑惑は2023年12月に報道で発覚した。
以来、2025年10月現在も、刑事・民事の双方で手続きが継続している。女性の訴えや、本紙記者と古謝市長の一問一答から、これまでの経緯をまとめた。
元運転手女性が訴えた被害とは?
 専属運転手を務めていた女性によると、2022年の12月9日夜、古謝市長宅前で停車する直前に、後部座席にいた市長が運転席の女性の左脇の間に手を入れ、胸を触ったという。女性は、業務開始当初から車中で言葉のセクハラも繰り返し受けたと訴えている。
 女性は市にセクハラ被害を訴えて第三者委員会の設置を求めたが、市は動かず、女性との業務委託契約を満了前の2022年12月末で解除した。

セクハラ被害の訴えを巡り本紙取材に答える古謝景春南城市長=2023年12月、南城市役所

 「胸を触られた」などとする女性のセクハラ被害の訴えについて、古謝市長は本紙取材に「肩は触ったが胸は触っていない」「女として見ていない」「女性として魅力を感じていなかった」と繰り返し否定した。
 古謝市長の発言について、ジェンダー問題に詳しい沖縄大学の宮城公子名誉教授は「女性として魅力を感じてない、という発言自体がセクハラ」「セクハラの問題で加害者側の感情は全く関係ない」と指摘している。
刑事:県警は市長の起訴求めるも不起訴に 再び捜査へ
 沖縄県警は2024年11月5日、古謝市長を強制わいせつ容疑で書類送検した。県警は起訴を求める「厳重処分」の意見を付けたが、那覇地検は嫌疑不十分で不起訴処分とした。古謝市長や女性の証言の裏付けを進めてきたが、客観的な証拠の乏しさなどから有罪の立証は困難と判断したという。
 不起訴処分を受けて、古謝市長は本紙取材に応じ「事実が証明されてうれしい。精神的に追い詰められたし、胃もおかしくなった。
夜眠れず睡眠薬も飲んだ」とコメント。一連の件は政治的に陥れられた結果だとして「一生懸命に頑張ってきたのに裏切られた。もう、政治の世界から引きたい。最悪ですよ。涙、涙ですよ」と持論を展開した。

不起訴を受けて取材に応じる古謝市長=2025年2月、南城市内

 一方、女性側は、那覇地検が市長を嫌疑不十分で不起訴としたのは不当として、2025年4月、那覇検察審査会に審査を申し立てた。
 選挙権を持つ一般市民で構成する審査会はこのほど、「不起訴不当」と議決した。この判断を受け、那覇地検が再捜査し、改めて起訴するか否かを今後判断する。
刑事:市長家族が訴えた女性の虚偽告訴容疑は不起訴
 古謝市長の息子と娘は2024年9月2日、セクハラ被害を訴えた元運転手女性を虚偽告訴罪で与那原署に刑事告発した。告発の理由として、市長本人が完全に否認していることや、近隣住民から目に付く自宅前で強制わいせつに及ぶのはあり得ないこと、などを挙げた。
 これに対し、女性の代理人は告発の取り下げを求める抗議コメントを書面で発表した。
 沖縄県警は女性を書類送検したが、女性を起訴するよう求めず、那覇地検は不起訴処分とした。

民事:今年12月に第10回口頭弁論へ、女性側は追加請求
 元運転手の女性は2024年2月、古謝市長と市を相手取り、慰謝料など計404万5千円の損害賠償を求める訴訟を那覇地裁に起こした。2025年12月に10回目の口頭弁論がある予定で、訴訟は継続中だ。
 女性側は、古謝市長がセクハラ行為以外にもSNSや市議会で女性をおとしめる発言を繰り返したなどとして、市長と市側に追加の損害賠償請求として440万円を請求。総額は844万5千円となった。 

 
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