与野党6党が、ガソリン税に1リットル当たり25・1円を上乗せする暫定税率を12月末に廃止することで合意した。
 本則税率28・7円だけとなれば、1リットル当たり25・1円の減税となる。
現在は石油元売りに10円の補助金が出ていることから、販売価格で15・1円の値下げが期待できる。
 全国共通の物価高対策で、その効果は公平であるべきだが、今回の議論で、複雑な立場に置かれているのが沖縄県である。
 県内では輸送コストなどを理由に沖縄復帰特別措置法で暫定税率のうち7円が軽減されてきた。政府は暫定税率の廃止で、この軽減額を3・8円に縮小する方針を示している。
 政府の考え方はこうだ。
 7円は暫定税率を含むガソリン税53・8円の13%に当たる。廃止後のガソリン税の13%は「3・8円」でこの分を軽減するという。
 これによって県内での実質的な減税は1リットル当たり21・9円にとどまる。つまり1リットル当たりの値下がり幅は全国15・1円に対し、沖縄11・9円となり、全国に比べ暫定税率廃止の効果は小さくなる見通しだ。
 これに県が異論を唱えている。
 玉城デニー知事は離島県の地理的不利性や車社会であることからこれまでの軽減額の維持を求めている。
 都市部を除くと公共交通の選択肢が少なく、生活に自動車が不可欠な地域が多い。
1人当たり県民所得の低い県内では他県より所得に占めるガソリン費の負担が重くなる可能性がある。
 県民生活への影響を考えた制度設計が必要だ。
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 離島のガソリン価格はさらに高い。
 沖縄本島と離島のレギュラーガソリン1リットル当たりの税込み平均価格は、今年6月に本島164・3円に対し、離島195・4円と30円以上の開きがあった。
 離島ではガソリン販売の店舗が限られ、競争が働きにくいほか、法定検査などの費用が価格転嫁されている実態がある。
 県は離島の石油製品輸送費補助に充てるため、1リットル当たり1・5円を独自に課税しているものの、本島との格差是正には至っていない状況だ。
 軽減措置が縮小すれば、こうした離島への影響も避けられないのではないか。
 県は、軽減額の縮小に伴い県民生活にどういった影響があるのか、具体的に示してほしい。
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 国はガソリン税軽減を、沖縄の日本復帰の際の「激変緩和」と捉えているが、これを機会に全国の島しょ地域全体の恒久的な措置として導入する議論を始めてもいいのではないか。
 この問題は日本の地域間格差をどう是正するかという問いを突き付けている。
 政府は地方創生も目指している。
 都市部と地方の経済環境には違いがあり、それを国策に反映することは、税制上の公平性を欠くことにはならないのではないか。

 数字の帳尻合わせではなく、暮らしの実感に届く税制であってほしい。
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