日本初開催となる聴覚障がい者の国際スポーツ大会「東京デフリンピック」がきょう開幕する。陸上や水泳、卓球など21競技に80カ国・地域から約3千人の選手が参加し、26日まで12日間にわたって熱戦を繰り広げる。

 「デフ(Deaf)」は英語で「耳が聞こえない」という意味だ。大会には、話し声と同程度(55デシベル)が聞こえない選手が出場する。全く聞こえない選手も、ある程度聞こえて話ができる選手もいる。
 オリンピックと同じように4年に1度、開催される。第1回は1924年にフランスのパリで開催された。今回は100周年の記念大会となる。
 陸上や水泳のスタートはランプが点灯し、サッカーでは旗で判定を知らせる。テニスなどでは選手は打球音が聞こえず、目で見た情報で状況を判断する。
 デフスポーツの観戦は初めてという人も多いかもしれない。
 県勢は4人が出場する。
 バレーボール男子の眞謝茂伸さん(25)=豊見城市出身=は初のデフリンピックで、チームの得点源となる「オポジット」を務める。サウスポーで放つ強烈なスパイクが持ち味だ。
普段着けている補聴器を外し、音のないコートで世界に挑む。
 サッカー女子の宮城実来さん(24)=那覇市出身、バスケットボール女子の豊里凜さん(23)=北谷町出身、ボウリング女子の金城祥子さん(58)=那覇市生まれ=の活躍にも注目したい。
 県勢を応援しながら、デフリンピックならではの魅力に接したい。
■    ■
 ろう者の歴史は、差別や偏見との闘いの歴史でもあった。かつて手話は軽視され、多くの学校で禁じられていた時代がある。相手の口の動きで言葉を読み取り、声で返す「口話」が強く推されていた。卒業した後に困るから、聞こえる人に合わせるという考えだった。
 生まれつき耳が聞こえない全日本ろうあ連盟の石橋大吾理事長も口話で会話していた。うまく発音できず中学の先生から「あなたの声は動物と同じ」と差別的な言葉を浴びせられた経験がある。
 「おかしな社会を変えなければ」とろう者の権利運動に加わり、手話の「言語」としての位置付けを広める活動に力を注いだ。2013年に鳥取県で、全国初となる手話言語条例制定を実現した。
 大会を、ろう者が歩んだ歴史と手話への理解を深める機会にもしたい。

■    ■
 口話は習得が難しく、長時間の会話や多人数での会話には不向きだ。手話はろう者の「言語」である。一人でも多くの人が使えるようになれば、ろう者と健聴者のコミュニケーションが広がり、誰もが生きやすい共生社会に近づくはずだ。
 手話の拍手は、両手を上げて手首を回転させながら、手をひらひらと動かす。デフアスリートに届く、見える応援「サインエール」で選手の活躍を後押ししたい。
[社説]デフリンピック開幕 サインエール届けようの画像はこちら >>
編集部おすすめ