名護市辺野古の新基地建設を巡り、防衛省が今月中にも大浦湾側の埋め立てを始めることが分かった。
 国による「代執行」の後、大浦湾側では昨年12月から軟弱地盤の改良工事や護岸造成が進められてきた。
そしてついに本格的に土砂が投入されることになる。
 大浦湾には多種多様なサンゴや海中生物が生息している。生物多様性の環境は守られるのか。ジュゴンは戻ってくるのか。そうした疑問に政府が説明を尽くしているとは言い難い。
 そもそも、米軍基地がこれだけ集中する県内に新たな基地を建設すること自体が間違いである。本来、負担軽減のための措置とは、基地を減らすことだ。
 辺野古関連の県と国との裁判は終結したものの、司法でもそうしたことへの答えはないままだ。
 今回、土砂が投入されるのは辺野古側に隣接する区域で、大浦湾側に広がる軟弱地盤とは重ならない。
 軟弱地盤の改良工事は今年6月から中断している。高さのある地盤改良船は天候に左右されやすく、中断の理由について防衛省は気象・海象の条件を挙げる。
 だが今夏、本島で台風接近はなかった。
大雨の日もあったが、5カ月の間には波が穏やかな日もあった。今後も進(しん)捗(ちょく)は見通せないのではないか。
 土壌改良が進まなければ建設は不可能だ。そうした数々の疑問を残したまま、新たな土砂投入を始めるべきではない。
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 就任後初来県した小泉進次郎防衛相は訪問先の石垣市内で「普天間飛行場の一日も早い全面返還へ、辺野古移設に向けた工事を着実に進める」と述べた。
 だが、4年1カ月と見込まれている地盤改良工事はすでに大幅な遅延が避けられない状況だ。
 投入される大量の土砂の調達についても政府はいまだにはっきりと示していない。
 埋め立ては2018年12月にまず辺野古側で始まり、予定された土砂約318万立方メートルの投入がほぼ完了した。大浦湾側へは、最終的にその5倍以上となる約1700万立方メートルの土砂投入が必要となる。
 一方、土砂や石材は不足しつつある。
 防衛省は昨年11月からうるま市の宮城島からの土砂搬出を開始しているが、同島での調達可能量は30万立方メートルという。すでに埋め立てた辺野古側と合わせても事業全体の約17%にしかならない。

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 軟弱地盤に伴う設計変更をはじめ、この間、計画は何度も変更されてきた。政府は工事完了の期日を33年4月ごろとするが、現状を見れば、本当に完成するのかさえ見通せない。
 事業にかかる費用は24年度までの累計で約6483億円に上り、このままでは総事業費9300億円を大きく超過することは確実とみられている。
 莫(ばく)大(だい)な公金を注ぎ、県民が拒否する基地を建設する-。そうしたいびつな巨大プロジェクトを座視し続けることは許されない。 
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