消費者の信頼を裏切る行為だ。実態を解明し、責任の所在を明らかにしなければならない。

 南城市の養鶏業「みやぎ農園」が、「平飼い卵」に平飼いでない卵をまぜて販売する偽装を行っていたことが分かった。
 平飼いはニワトリをケージ(かご)に入れず、鶏舎内の床で自由に歩き回れるように飼育する方法。国内ではまだケージ飼育が主流の中、アニマルウェルフェア(動物福祉)の考え方から選んで購入する消費者が増えている。
 その県内最大手が不正を行っていた失望は大きい。
 農園によると、偽装は2021年5月ごろから始まった。平飼いではない卵の割合は全体の5~8%ほどで、1日平均500~800個分に相当する。
 一方、社長は1パック(10個入り)の中に数個入れたとも証言している。それだと混入割合はもっと多くなる計算だ。
 偽装は創業者である会長の指示で行われたという。生産が需要に追い付かず不足を補う目的で始めたとするが、本末転倒だ。
 平飼いの偽装は景品表示法違反の「優良誤認表示」に当たる恐れがある。
 社長は偽装に気付きながら見逃したと証言しており組織ぐるみとみられても仕方ない。

 卵はスーパーやホテルなど県内約100社に納入されていた。
 農園側は今後、取引先の返品や返金に応じるというが、それで済む問題ではない。少なくとも会見を開き消費者へ謝罪すべきだ。
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 県内で早くに平飼い卵の販売を始めた農園は、平飼い卵を使った加工品販売を県外でも展開しており、ブランドを目当てに購入してきた消費者は多い。
 偽装は、そうした信頼を根本から揺るがすものだ。
 食品表示の偽装問題は全国で繰り返されている。
 県内でも宮崎県で収穫したシイタケを沖縄県産と偽って販売していた産地偽装は記憶に新しい。産地偽装は警察の捜査対象ともなってきた。
 平飼い卵は一般的に他の卵より高値で販売される。それでも消費者が購入するのは、アニマルウェルフェアに配慮した取り組みへの理解が背景にある。
 一方、平飼いかそうでないかは消費者からは見えにくい。
 再発防止のためにも、いつからどのような仕組みで偽装が続けられてきたのか。
公的機関による調査も求められる。
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 今回の偽装は農産物のトレーサビリティー(生産流通履歴)にも関わる問題であり、根が深い。
 発覚を受けて一部のスーパーは商品の撤去を始めている。
 卸業者は今後県外から平飼い卵を買い付けるというが、県内の需要に十分届くかは不透明だ。
 持続可能な農業の取り組みとして平飼いの養鶏業者は県内でも少しずつ増えてはいるものの、まだ少ない。
 問題を機にこうした取り組みが後退することがあってはならない。
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