こんにちは、結婚式で飲むお酒が一番美味しいと思っている宮城です。
沖縄の結婚式といえば、招待客が300人規模になることも珍しくない。

スモークの中からゴンドラで新郎新婦が登場し、余興はプロ顔負けのダンスやエイサーで会場が揺れ、フィナーレは全員でカチャーシーを踊り狂う……。
ウチナーンチュなら、この「まつり感」に覚えがあるはずだ。
先日、私がカメラマンとして立ち会ったそにあさんとブリトニーさんの結婚式は、そういった賑やかさとは対極にあった。それでいて、「沖縄の家族の絆ってこれだよ」と、これでもかと詰め込まれたような、最高に温かい式だったのである。
「大好きな沖縄のトートーメー(仏壇)の前で、結婚式を挙げたい」
そんな純粋な願いから実現したのは、手作りの仏前結婚式だ。
ファインダー越しに私が見た、古き良き沖縄の精神と、国を越えた愛が入り交じるピースフルな一日。その全貌をレポートしたい。
 
でーじチャンプルーな2人が出会った奇跡
まずは、今回の主役である2人を紹介させてほしい。

鮮やかな黄色の琉装と着物姿で笑顔を見せるそにあさん(左から2人目)とブリトニーさん(左)とそにあさんの両親=2月28日、読谷村長浜

結婚式を挙げた同性カップルの一人、ガリバー・そにあさんは、沖縄出身の母とアフリカ系アメリカ人の父を持つ、アメリカ系ウチナーンチュだ。沖縄で生まれ、その後アメリカで育った。
「ソニア(Sonia)」という名前は、15年前に亡くなった姉のオヤナさんが名付けた。これから生まれてくる妹のために「沖縄の家族も、アメリカの家族も、どちらも発音しやすい美しい名前だから」と、この名を贈ってくれた。
両方のルーツを繋ぐ架け橋となるよう願いが込められた、大切で温かい名前だ。ただ、その大切な名前であっても、日本で「ソニア」とカタカナで表記されることには、ずっと違和感を持っていたという。
「自分には、日本語の名前がない」。カタカナ表記では自分のルーツである沖縄(日本)との繋がりが薄れてしまうという、彼女なりの葛藤があった。
姉がくれた名前も自分のルーツも大切にしたい。そんな真っ直ぐな思いがあるからこそ、あえて日本らしさを感じる、ひらがなの「そにあ」を使っているという。
実は、私の妻とそにあさんはいとこのような関係だ。
そにあさんの祖母と私の妻の母は姉妹で、年の差が親子ほども離れているという、昔の沖縄ではよくある異母姉妹。妻自身もボリビア出身のウチナーンチュで、沖縄からの海外移民という歴史を持つ家系だ。そんな縁があって、今回、私たちは夫婦で、結婚式の記録係を務めることになった。
そして、パートナーのブラウン・ブリトニーさんもまた、驚くほど多国籍なバックグラウンドを持ち、世界中のルーツを身に宿している。母はジャマイカ出身、父は韓国・日本・アフリカ系アメリカ人のミックスなのだという。

この2人が出会い、結ばれること自体が、まさに「でーじチャンプルー」な奇跡。そんな2人が門出に選んだ場所が、そにあさんの沖縄の祖父母の実家――読谷村長浜にある玉城家のトートーメー(仏壇)の前だった。
度肝を抜く、愛にあふれた「仏壇」
2月28日、読谷村長浜にある玉城家のご実家。ここで、そにあさんと、ブリトニーさんによる、同性カップルの仏前結婚式が執り行われた。
私は妻とともに、大量の機材を抱えて現場入り。会場に到着して、まず私の度肝を抜いたのが「仏壇」の様子だった。
沖縄のトートーメーといえば、家の真ん中にドンと構え、毎日の暮らしの中にしっかり溶け込んでいる存在だ。朝起きたら水を供え、ヒラウコー(お線香)をくゆらせ、家族が集まれば誰かが自然と話しかける。そんな生活の真ん中にある一方で、「長男が継ぐべき」「慶弔ごとには作法がある」など、家族で話し合うべき独特の重みも持ち合わせている。
でも、今日だけは様子が全く違った。
祭壇には、そにあさんの母方の玉城家のご先祖様だけでなく、父方のアメリカのご先祖様の遺影、さらには、ブリトニーさんのご先祖様の遺影まで並んでいるではないか。その中にはもちろん、そにあさんの姉・オヤナさんの笑顔もあった。

まさにワールドワイド、異文化ごちゃ混ぜの「チャンプルー仏壇」。(こんなに自由で、愛にあふれた仏壇を、ウチナーンチュとして生きてきて初めて見た……!)

両家のルーツが交差する、この日だけの特別な祭壇。国境を越えた家族が静かに見守っていた=2月28日、読谷村長浜

本土の仏前式は寺院で行う宗教儀式という側面が強いが、沖縄の仏前式はご先祖様への報告儀礼、という性格が強いらしい。
実は、そにあさんがトートーメーの前での結婚式にこだわったのには、もう一つ深い理由がある。彼女のルーツの一つ、父方の「アフリカ系アメリカ人」の文化においても、ご先祖様を大切にする「先祖崇拝」の精神が深く根付いているのだ。つまり、この仏前式は単なる沖縄の伝統儀式ではなく、そにあさんの中にある「アフリカ系のルーツ」と「沖縄のルーツ(トートーメー)」が美しく交差する、唯一無二の場所だった。
その思いを受け止めたそにあさんの母が、玉城家が日頃からお世話になっている角田哲也住職(浄土真宗本願寺派・屋良山法谷寺)に「こんな風にやりたいんですが……」と相談したところ、なんとトントン拍子に話が進み、この挙式が実現したのだという。
式を取り仕切った角田住職も「仏前結婚式を執り行うのは25年ぶりで、個人の家の仏壇の前で行うのは初めての経験でした」と振り返る。
同性婚という形を、沖縄の伝統的な先祖供養の場であるトートーメーの前で報告し、受け入れる。その懐の深さに、早くも私の涙腺は緩みっぱなしだった。
そにあさんのいとこの奏でる三線「かぎやで風」(沖縄の伝統的なお祝いの幕開けの曲)が響く中、ついに式が始まった。
まさかの「サプライズ衣装」に胸熱
式のハイライトは、なんといっても2人の「衣装のお披露目」だ。

実はブリトニーさん、自分が当日何を着るかを、そにあさんには一切ナイショにしていたのだという。そにあさんが黄色の琉装を着ることは事前に伝えていたが、ブリトニーさんの衣装は、あえてのサプライズ。親族全員がその瞬間を、ドキドキしながら待っていた。
そして当日、ブリトニーさんが身にまとっていたのは……なんと、そにあさんの親戚が、かつてトーカチ(米寿)のお祝いで着たという、思い出の詰まった「着物」だった。家族の歴史を受け継ぐ運命的な意味が込められているようで、私もひどく胸を打たれた。
言葉がなくても、衣装を通して相手のルーツや家族の歴史を思いやる気持ちが痛いほど伝わってくる。ブリトニーさんの最高のサプライズは、大成功だった。
ちなみに今回が4回目の沖縄となるブリトニーさん。日本語やうちなーぐちも少しずつ勉強中という熱心さだが、それでもやはり、親族が勢揃いする場でのコミュニケーションには少し緊張もあったかもしれない。それが、この日の着物姿を見ていると、全くそうは思えない。沖縄の家族に向き合う姿が、何とも頼もしかった。
太平洋を越え深夜のアメリカと繋ぐ
実はこの日、私にはカメラマンに加えて、もう一つ、重要なミッションがあった。
アメリカにいるブリトニーさんの家族に向けた、Zoomによるリアルタイム中継だ。機材のセットアップからカメラの切り替え、配信オペレーターまでを一手に担う「特設配信デスク」として、式の最初から最後まで配信を回し続けた。
沖縄は賑やかな昼下がりだが、アメリカはなんと深夜12時を回る時間帯。それでも画面の向こうには、夜更けにもかかわらず起きて待ってくれたご家族の顔がある。
モニターに映し出されたその顔を見た瞬間、会場の空気が一気に温かくなった。
会場が静寂に包まれる中、住職による温かい読経が響きわたる。続いて念珠(数珠)の授与、二人の指輪交換、そして二人で数珠を手に取り合う「数珠の交換」と、仏前式ならではの儀式が一つひとつ丁寧に進んでいく。
誓いの挨拶まで、式の一部始終をアメリカのご家族はリアルタイムで見届けた。
式が終わると、画面越しに見守るブリトニーさんのご家族から温かい祝福が届けられた。代表して、ブリトニーさんの母ブレンダさんからはこんなメッセージが。
「互いのすべてを理解し、ありのままを愛し合う二人の姿を、私はずっと尊敬の念を持って見守ってきました。そにあ、あなたはもう私たちの家族の大切な一員です。
遠く離れたアメリカからですが、この美しい門出を皆さんと共有できたことに心から感謝します」

オンラインで参加したブリトニーさんの家族からの祝福の挨拶=2月28日、読谷村長浜

太平洋を越えてダイレクトに伝わってくる家族の愛情。事前のケーブル配線とカメラの設定に格闘した甲斐があったというものだ。
すべての挨拶が終わり、配信が終了すると、いよいよ祝宴レセプションの幕が開いた。
「能力カオスないとこ軍団」が本領発揮
式の幕開けを凛と彩った三線、そして祝宴を支えた料理の数々。実はこの結婚式、振り返ってみると、挙式をサポートしたそにあさんのいとこたちが随所ですごい仕事をしていた。
今回の結婚式の準備段階、いとこたちのグループLINEはかなりカオスなことになっていたらしい。発端は、長崎県に住む猟師のいとこの一言だ。「自分が猟銃で仕留めたイノシシの肉、お祝いのご馳走で出してもいいんじゃない?」と。(長崎で猟師しているいとこ、いる?ふつう……? 海の漁師のいとこならいそうだけどね)
「猟銃で仕留めたイノシシ」をグループLINEで提案できるいとこが存在すること自体が、このいとこたちの「能力カオス度」を物語っている。
ブリトニーさんにとっては異国での結婚式だ。言葉や文化の壁をどうやって越えるか。いとこたちが出した答えはとてもシンプルだった。「胃袋を沖縄食材を使った料理で掴む」。こだわったのは、ブリトニーさんの大好物を、沖縄食材で美味しくアレンジすること。事前のヒアリングをバッチリ行い、味の好みを徹底リサーチ。ブリトニーさんとそにあさんのための完全オーダーメイドなスペシャルメニューを完成させた。
結果的にイノシシ肉はお蔵入りとなったものの、食卓には、いとこが丹精込めて育てた水耕栽培の新鮮なレタスをはじめ、沖縄食材をふんだんに使った手作りのケータリングがズラリと並んだ。美味しい料理があれば言葉の壁なんて一瞬で溶けてしまう。沖縄に限らず、これって世界に通じる最強のコミュニケーション術なのではないだろうか。
料理に目を輝かせた親族のひとりがひとこと。「意識高い系の料理だねー!」
思わず笑ってしまったが、「普段家で作る料理とは違う、まるで高級レストランみたい」という彼女なりの最高の褒め言葉なのだろう。みんなが笑顔で美味しく食べられるのだから、お祝いの席として文句なしの大正解。

いとこが手塩にかけて育てた水耕栽培レタスが彩る料理の数々。優しさが詰まった味がした=2月28日、読谷村長浜

この家族はワイン好きが多いようで、乾杯と同時にワインボトルが次々と開いていく。結婚式の余韻に浸りながら、グラスを傾け、笑顔でわいわいと語り合う。翌日、空き瓶の山の写真が届いて思わず笑ってしまったが、それもまたこの一日が最高だった証拠だろう。
この歓談の輪の中でも、密かに大活躍していたのがそにあさんのいとこたち。実は、このいとこたち、一見するとどこにでもいる普通の沖縄の親戚の集まり。見た目からは英語が話せるなんて全然わからない。しかし驚くべきことに、日常会話からビジネスレベルまで、英語を聞ける・話せるメンバーがざっと14人ほどいるのだ。参加者の約三分の一。彼らはブリトニーさんはもちろん、そにあさんの父とも、ちょくちょく英語でコミュニケーションを取りながら場を盛り上げ、言葉の架け橋(通訳)となって親族を優しく繋いだ。
コテコテのうちなーんちゅのお祝いに見えて、英語が飛び交う。やはりこのいとこたちの能力カオス度は底知れない。
美味しい料理とワインにお腹も心も満たされた頃、宴もたけなわのタイミングで、式の幕開けに「かぎやで風」を演奏したいとこが、ふたたび三線を手に取った。軽快なリズムで「唐船ドーイ」の演奏が始まると、待ってましたとばかりに参加者全員でカチャーシー!祝福のムードは一気に最高潮に達した。

三線の音色に合わせてカチャーシー。一緒に踊るそにあさんの父アムステードさん(左から3人目)と親族たち=2月28日、読谷村長浜

私は、ファインダー越しに、カチャーシーを踊るいとこたちの姿を追いかけた。猟師、水耕栽培農家、三線奏者、通訳、そして、私たちカメラ・ムービー担当の夫婦まで。それぞれがまるではじめから役割分担されていたかのように、各持ち場でプロフェッショナルの仕事を務め、気づけば最高の一日が完成した。
親戚みんなでわちゃわちゃ助け合う沖縄ならではの空気感が、国や文化など様々な違いも軽々と飛び越えて、新しい二人の門出をまるごと祝福している。
トートーメーに誓った新しい家族のカタチ
祝宴の終わり、そにあさんがマイクを持った。
「心の底から天国まで、感謝します。おじーおばーの家で、先祖様の前で結婚することは夢で、琉装を着ることも夢で——信じられないくらい嬉しい日です」
そして、ブリトニーさんへの言葉へと続いた。
「言語の壁っていうのは結構さみしい思いをする。でも、ブリトニーは勇気を持って向き合ってくれて、こういう風に自分の文化を大事にして参加してくれる。すごい人だなって、自分でも思ってる」「沖縄はアメリカから遠いけど、もうここは地元っていう気持ちだし、純ウチナーンチュっていう気持ち」「みんな、一人一人の役があって、今日は一緒にお祝いができて……理想的な結婚式でした」
スピーチに、この日の全てが詰まっていた。
続いて、ブリトニーさんが英語で話し始めた。「メモは書いてきたんですが、せっかくこの場所にいるので、今日は心からの言葉でお話ししたいと思います」と前置きして、語り続けた。
ブリトニーさんの英語を、沖縄の親戚みんなに分かるように日本語へ訳して伝えようとした、そにあさん。しかし、胸がいっぱいになり、感極まって涙をこらえきれなくなってしまった。「ごめんね、ちょっと……」。言葉を詰まらせたその瞬間、スッと前に出てきたのが、そにあさんのいとこのひとり。ブリトニーさんの英語を日本語へと、その場で急遽、完璧に訳し切ってみせた。
いとこの通訳を通して、ブリトニーさんの心からの言葉が会場に届けられる。
「そにあがどれだけ皆さんのこと、そして沖縄のことを愛しているかは、皆さんにお会いする前から、彼女に聞かされていました」「玉城家の皆さんが持つ、すべてをふんわりと包み込んでくれるような、穏やかで優しい愛情(soft love)は、アメリカではなかなか感じられないものです。私はこの温かい家族の一員になれることを、本当にありがたく思っています」
そして最後、そにあさんへの言葉をたどたどしくも、一生懸命な日本語で締めくくった。
「俺の妻はオマエしかいない。私はあなたのすべてを尊敬しています」
その言葉を聞いた瞬間、すっかりお酒の回った親族たちから「フゥーーッ!!」と大歓声と指笛が沸き起こった。笑顔と歓声が飛び交う大盛り上がりの最高のシーン。手作りの温かさと、沖縄の家族の深い愛情に満ちた、本当に素敵な一日だった。
国境や文化の違い、言葉の壁やこれまでの常識。そうしたもので線を引くのではなく、すべてを優しく受け入れて一つのテーブル(祭壇)に乗せてしまう。これこそが、沖縄が昔から大切にしてきた「チャンプルー文化」の本当の魅力なんだと、改めて気づかされた。

そにあさん、ブリトニーさんを囲んで玉城家で集合写真=2月28日、読谷村長浜

伝統的なトートーメーの前で繰り広げられた、最高にピースフルな結婚式。
いろんな違いを笑って混ぜ合わせ、みんなで一緒に祝福する。
やっぱり沖縄の家族って、最高に温かくていいなぁと、心からほっこりできる一日だった。
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