――今回、主人公・のぶの母親役ですが、江口さんは羽多子という人物をどう捉えていますか?
まずオファーを受けたときに、どう考えても私は朝ドラのお母さんっぽい感じはないので、なんでだろうと思いました(笑)。
――第1週で夫・結太郎が亡くなってしまい、その後、第5週と第6週で結太郎が出張に行くたびにくれた手紙について話す場面がありました。
初週の木曜で亡くなってしまって、びっくりしましたね。羽多子としては、もちろん悲しいけれども、まずはそれよりも生活をどうにかしなくてはいけない。小さい子どもが3人いて、悲しむ暇がない。どんな夫婦だったのかというのは、今も想像するところではあるんですが……。というのも物語上、結太郎さんと直接話したのは「出張ご苦労さまでございました」「お気をつけて」「行ってらっしゃい」くらいしかないんですよ。でもきっと、結太郎さんが出張先で羽多子を思いながら手紙を書く時間は、唯一ゆっくりできる時間だったんだろうなと。羽多子にとっても、その手紙を読んでいる時間が、一番豊かな時間だったんだと思います。
――屋村草吉(阿部サダヲ)の助けもあり、羽多子は朝田家でパン屋を始めることができましたが、その辺りはいかがですか?
屋村さんは風来坊なのに、こんなに長い間、朝田家でパンを焼いてくれて。不思議ですよね。でも、屋村さんがいなかったらパン屋はできていないですし、羽多子は屋村さんをすごく大事にしていると思います。パン屋を演じるにあたって指導してくださっているパン職人の竹谷さんという方がいるんですが、竹谷さんが焼いたパンが本当においしいんですよ。今まで味わったことのないような深い味のパンで。それを食べられるのがうれしいですね。
――娘であるのぶへの思いと、演じる今田美桜さんの印象について教えてください。
のぶって本当にいい子なんですよね。自分のことだけを考えているのではなく、いつも家族のことを考えていて。なので、自分の子どもでありつつ、羽多子を助けてくれる人という感じもあるんですよ。朝田家はのぶが照らしてくれている気がしますね。
美桜ちゃんは、数年前にドラマでご一緒させていただいて。そのときは、私が美桜ちゃんの上司で、彼女の成長を見守るという役どころだったんです。だから、自分の体の中に“今田美桜を見守る”という免疫がもうすでにあるんですね(笑)。とても素直で誠実な方なので、のぶ役にピッタリだなと思いますし。見ているだけで羽多子の気持ちになれるので、美桜ちゃんのお母さん役をやらせてもらえるというのは、すごくうれしいなと思います。