1980年4月にデビューし、45周年を迎えた松田聖子。今なお、第一線でリリースやコンサート活動を継続し、シングル、アルバムのトータルセールスは3000万枚超え。
そのヒット曲の数々は、老若男女誰もが口ずさむことができる。時代も国境も超えて愛され続ける“永遠のアイドル”松田聖子の功績やターニングポイントをオリコンランキングで振り返る。

■80年代の幕開けとともにデビュー 2ndシングルでブレイク

 松田聖子は1980年4月1日、シングル「裸足の季節」(週間最高位12位)でデビューした。アイドルシーンの時代背景を振り返ると、78年4月にキャンディーズが解散。同年にミリオンヒットを連発し、79年に米進出したピンク・レディーの社会現象的人気が落ち着きはじめ、80年3月には、70年代を象徴するアイドルだった山口百恵が同年10月で芸能界から引退することを表明したばかりの頃だった。

 80年代の幕開けとともにデビューした松田聖子は、2ndシングル「青い珊瑚礁」(同7月発売)でブレイクポイントを迎える。目の前にキラキラとした青い海が広がる情景が浮かぶような突き抜けた明るい歌声は、アイドル新時代の到来を感じさせるものだった。週間最高位は2位。デビュー曲の約2.1倍となる累積60.3万枚を売り上げ、松田聖子の名を世に知らしめた。

 オリコン週間ランキングで自身初の1位を獲得したのは、続く3rdシングル「風は秋色」(80年10月発売)。前作比1.3倍の累積79.7万枚を売り上げた。ここから連続1位記録がスタートするとともに、「チェリーブラッサム」(81年1月発売=年間シングルランキング9位)、「夏の扉」(81年4月発売)、「白いパラソル」(81年7月発売)と3ヶ月に1度のハイペースで新曲をリリースしていった。


■松本隆氏が世界観を構築 大瀧詠一、細野晴臣、ユーミンらと強力タッグ

 その後、長きにわたって作詞を手がけることになるキーパーソン、松本隆氏は、6枚目シングル「白いパラソル」(81年7月発売)から参加した。88年発売の25枚目シングル「Marrakech」まで、7年間に発表したシングル20枚、表題曲22曲のうち19曲の作詞を手がけ、すべて週間シングルランキング1位を獲得した。さらには、週間アルバムランキングで1位を獲得した18作品のうち、オリジナルアルバム8作品の全収録曲を松本氏が作詞し、楽曲の世界観を構築した。

 日本語ロックの礎を築いた4人組バンド・はっぴいえんど(72年末解散)のドラマーだった松本氏が楽曲制作でタッグを組んだのは、70年代後半から80年代にかけて流行し、昨今では海外でもブームとなっている「シティ・ポップ」を代表するシンガー・ソングライターたちだった。はっぴいえんどの盟友ともコンビを組み、大瀧詠一が作曲した「風立ちぬ」(81年10月発売)は累積売上52.0万枚、細野晴臣が作曲し、松田聖子が主演した映画『プルメリアの伝説 天国のキッス』の主題歌となった「天国のキッス」(83年4月発売)は同47.2万枚を記録した。

 そして、松本氏と呉田軽穂(松任谷由実のペンネーム)のゴールデンコンビは、不朽の名曲「赤いスイートピー」(82年1月発売)で結成された。登場2週目から3週連続1位を獲得し、累積50.1万枚をセールス。続く「渚のバルコニー」(同年4月発売)は累積51.5万枚と、2作連続でハーフミリオンのヒットとなった。2年4ヶ月の短期間に、前出2作と「小麦色のマーメイド」(82年7月発売)、「秘密の花園」(83年2月発売)、「瞳はダイアモンド/蒼いフォトグラフ」(同年10月発売)、「Rock’n Rouge」(84年2月発売)、「時間の国のアリス」(同年5月発売)の7作のシングルでタッグを組み、いずれも週間1位を獲得した。

■「SWEET MEMORIES」でイメージ一新 連続1位記録も樹立

 83年には、前出の12枚目シングル「秘密の花園」で週間シングルランキング10作連続1位を達成している。ピンク・レディーが保持していた9作連続の記録を破って打ち立てた「シングル連続1位獲得作品数」歴代1位記録は、自身がSeiko名義で作詞を手がけた26枚目シングル「旅立ちはフリージア」(88年9月発売)まで24作続いた。この記録は、2000年にB’zに抜かれるまで11年10ヶ月にわたって保持することになる。


 80年代の自身最大ヒット作は、14枚目シングル「ガラスの林檎/SWEET MEMORIES」(83年8月発売)。登場2週目の83/8/15付で1位を獲得した同シングルは、もともとは「ガラスの林檎」としてリリースされ、「SWEET MEMORIES」はB面曲だった。これまでのイメージと一線を画す大人っぽいバラード「SWEET MEMORIES」は、初期から数多くの編曲を担当してきた大村雅朗氏が手がけたもので、サントリーCANビールのCM曲として書き下ろされた。

 オンエア当初は歌手名が表記されていなかったことから、英語詞の楽曲をしっとりと歌う歌手が誰なのか、問い合わせが殺到。松田聖子が歌っていることがわかると、大きな反響が広がった。

 これを受けて、シングルは「ガラスの林檎/SWEET MEMORIES」の両A面表記となり、83/10/10付で4位に浮上、4週ぶりにTOP10に返り咲く。その後もじわじわと順位を上げていき、83/10/31付で11週ぶりに首位に返り咲いた。翌週の11/7付ではニューシングル「瞳はダイアモンド/蒼いフォトグラフ」(83年10月28日発売)が初登場1位、「ガラスの林檎/SWEET MEMORIES」が2位と、1・2位を独占。結果、「ガラスの林檎/SWEET MEMORIES」は累積売上85.9万枚(年間シングルランキング7位=83年度の売上は70.1万枚)の大ヒットとなり、ターニングポイントとなった。

■デビュー16年で初ミリオン 90年代に自作曲で達成

 最大のヒット曲は90年代に入ってから、しかも自作曲でというのもアイドルシーンの開拓者らしい功績といえるだろう。96(平成8)年4月22日にリリースした「あなたに逢いたくて~Missing You~/明日へと駆け出してゆこう」が累積110.1万枚を売り上げ、デビュー16年で自身初のミリオンを達成する快挙を成し遂げた。作詞・作曲は自身が手がけたもの(作曲は小倉良氏との共作)で、時代は平成に変わってからの偉業は意義も大きかった。
「あなたに逢いたくて~」を含め、シングル通算1位獲得作品数25作は、歴代女性ソロアーティスト2位。キャリア40年以上の女性ソロでは堂々の1位だ。

 シングルのみならず、アルバムでも大きな足跡を残している。「ガラスの林檎/SWEET MEMORIES」の直前にリリースしたアルバム『ユートピア』(83年6月1日発売)は、83年のオリコン年間アルバム(LP)ランキングで『フラッシュ・ダンス』サントラ、フリオ・イグレシアス『愛の瞬間』に続く3位で、邦楽では1位。収録曲「小さなラブソング」では作詞に初挑戦している。

 休業中の86年6月にリリースした『SUPREME』は、累積売上70.2万枚で自身最多セールスを記録した。同作には、アルバム曲の中でとりわけファンに愛されている壮大なバラード「瑠璃色の地球」が収録されている。89年12月には全収録曲の作詞を本人が手がけた『Precious Moment』(週間最高位6位)を、90年6月には全米デビュー作『Seiko』(同最高位2位)を発表するなど精力的に挑戦を続け、アルバムでは女性ソロアーティスト歴代3位となる通算18作で1位を獲得。80年代のシングル・アルバム総売上枚数では歴代1位の金字塔を打ち立てた。

■ジャズ、セルフカバーへの取り組みを強化 全米リリースも

 近年では、ジャズへの取り組みを本格化している。2017年3月には構想から6年をかけ、ジャズアルバム『SEIKO JAZZ』をリリース。本作をアメリカの名門ジャズレーベル「Verve Records」のトップを務めるダニー・ベネット氏が絶賛し、同レーベルと契約を結ぶと、同年5月12日に日本人シンガーとして初となる全米リリースし、デビュー37年目に新境地を開拓した。


 本作は、米ハイレゾ最大手配信会社「HD Tracks」のジャズ部門で2位、ベストセラー部門で4位に。同年の『第59回日本レコード大賞』では企画賞を受賞した。2019年には『SEIKO JAZZ 2』、2024年には『SEIKO JAZZ 3』を発表。『SEIKO JAZZ 3』ではシリーズ初の試みとして、代表曲「赤いスイートピー」のジャズアレンジ・セルフカバーを収録。芳醇なサウンドに乗せ、名曲に新たな息吹を吹き込んだ。

 本人発案によるセルフカバーも精力的に取り組んでいる。コロナ禍の2020年9月に発表したデビュー40周年記念のオリジナルアルバム『SEIKO MATSUDA 2020』では、収録曲10曲のうち、「瑠璃色の地球2020」「セイシェルの夕陽 ~40th Anniversary~」「赤いスイートピー English Version」「SWEET MEMORIES ~甘い記憶~」の4曲がセルフカバーだった。同作はオリコンデイリーアルバムランキング1位、週間では3位となった。

 2021年10月発表の続・40周年記念アルバム『SEIKO MATSUDA 2021』でも、「青い珊瑚礁~Blue Lagoon~」「時間の国のアリス~Alice in the world of time~」「瞳はダイアモンド~Diamond Eyes~」「チェリーブラッサム2021」「時間旅行~I still miss you~」のセルフカバー5曲を収録。デビュー記念日の4月1日に先行配信した「青い珊瑚礁~Blue Lagoon~」は、オリジナル曲の発売当初には存在していなかったミュージックビデオを自らの監督で制作した。その中で、40年前に社会現象を巻き起こした“聖子ちゃんカット”を再現するサービス精神で大反響を呼び、YouTubeでは370万回(2025年5月20日現在)を超す再生数を記録している。

 「青い珊瑚礁」といえば、24年6月末に韓国の5人組グループ・NewJeansが東京ドームで開催した初の単独日本公演で、メンバーのハニが同曲を歌唱したことも記憶に新しい。
老若男女に刷り込まれているイントロが流れ、歌い始めた瞬間、東京ドームを揺るがす大歓声が轟き、同公演のハイライトの一つに。SNSでは日韓でトレンド入りする大反響となった。24/7/15付オリコン週間ストリーミングランキングでは同曲最高となる週間再生数110.6万回を記録し、不朽の名曲が時代も国境も超えた。

■本人厳選45曲収録のオールタイムベスト セルフカバー10曲を新録

 今年4月1日にデビュー45周年の記念日を迎えた松田聖子は、槇原敬之が作詞・作曲・プロデュースを手がけた新曲「Shapes Of Happiness」をリリースし、同曲のミュージックビデオを自らプロデュースした。

 そして、6月4日にはこれまでの足跡を集約したオールタイムベストアルバム『永遠のアイドル、永遠の青春、松田聖子。~45th Anniversary 究極オールタイムベスト~』をリリースする。10年ぶりとなるオールタイムベストは、45周年を記念し、本人厳選の45曲を収録、4500円。高音質マスタリングで仕上げられたCD4枚組で構成される。

 DISC1・2はセルフカバー集。DISC1はシングルA面曲のセルフカバーで「青い珊瑚礁 ~Blue Lagoon~ 2025 Mix」「瞳はダイアモンド ~Diamond Eyes~」など代表曲のセルフカバーを主体に構成、ボーナストラックとして「赤いスイートピー English Jazz Version」も盛り込まれる。DISC2はシングルB面曲およびアルバム曲のセルフカバー集。「SWEET MEMORIES ~甘い記憶~」「瑠璃色の地球2020」などが収録される。


 さらに、今作に向けて、DISC1・2合計で10曲ものセルフカバーを新録した。「あなたに逢いたくて ~Missing You~ 2025」「渚のバルコニー 2025」「Rock’n Rouge 2025」などを新たにレコーディングした意欲的なラインナップとなっている。

■ユーミンから愛情あふれるプレゼント「きっと聖子さんに合うと思って」

 本作の目玉となるのが、DISC2のラストを飾る「Stardust」。松田聖子と呉田軽穂こと松任谷由実が、「永遠のもっと果てまで」以来10年ぶりのタッグを組んだことで話題のこの曲は、ジャズのスタンダード曲「Stardust」の日本語訳詞をユーミンが手がけた。

 遠く離れた愛する誰かを想う歌、「Stardust」の訳詞を手がけたユーミンは「私は聖子さんを喜ばせたかった。勝手な想像だとしても、今の彼女の心情を自然に重ねられるような、この先ずっと愛し、傍らに置けるようなナンバーを提供できたらうれしいと思った」「きっと聖子さんに合うと思って、少し前から日本語に訳してみた」と説明している。

 愛情あふれる訳詞を受け取った松田聖子は「尊敬する松任谷由実さんから、また大きな宝物をいただいたような気持ちです」「今まで歌ってきて本当に良かった」と感激。5月14日の先行配信リリースとともに公開された同曲のミュージックビデオでは自らプロデュースを務め、深い余韻を残す映像作品となっている。

 DISC3・4は「聖子が選ぶ!オリジナル・シングルベスト」がコンセプト。デビュー曲「裸足の季節」から、X JAPANのYOSHIKIが作詞・作曲・編曲を手がけ、オリコンデイリーシングルランキングで1位、週間ランキングで6位となった「薔薇のように咲いて 桜のように散って」(2016年9月発売)まで、歴代シングル曲から本人が厳選した23曲を年代順に収録する。

 45年間の軌跡と変遷を詰め込んだ、タイトルどおりの“究極オールタイムベスト”は、ファンでなくとも誰もが口ずさめるスタンダードナンバーがズラリと並ぶ。これだけ多くのヒット曲を持つ松田聖子の凄みを改めて感じさせられるとともに、時代を経るごとに深みを増す表現力と歌唱力も堪能できる。

 本作リリースに向け、松田聖子は「デビューからこれまでリリースされた楽曲の中から、私の大好きな曲を選びました。そして、セルフカバーにも挑戦しました。胸がキュンとする懐かしい曲がいっぱいのベストアルバムに仕上がりました。たくさんのみなさまに聴いていただけたら幸せです」とのメッセージを発信している。

 アイドルは昭和、平成、令和と時代を経ても旬は短く、ましてや、卒業や入れ替わり制度のない一代限りの女性ソロアイドルが、40年以上にわたって毎年のようにアリーナツアーやディナーショーを行う前例はなく、まさにオンリーワンの存在。日本武道館公演回数は女性アーティスト最多の129回を数え、さらに、6月21・22日、9月5・6日の計4公演が予定されている。こうした精力的な歌手活動と並行し、2024年3月には中央大学法学部通信教育課程を4年間で卒業したことが明らかになり、生き方のうえでもリスペクトを集めている。

 時代を超え、国境を超えて愛される“永遠のアイドル”松田聖子は、これからもたゆまず道を切り拓き続け、燦然と輝き続けることだろう。

■『永遠のアイドル、永遠の青春、松田聖子。 ~45th Anniversary 究極オールタイムベスト~』収録曲

【Disc 1】
1. 青い珊瑚礁 ~Blue Lagoon~ 2025 Mix
2. チェリーブラッサム 2021
3. 赤いスイートピー English Version
4. 渚のバルコニー 2025
5. 瞳はダイアモンド ~Diamond Eyes~
6. Rock'n Rouge 2025
7. 時間の国のアリス ~Alice in the world of time~
8. ピンクのモーツァルト 2025
9. Pearl-White Eve 2025
10. あなたに逢いたくて ~Missing You~ 2025
11. Shapes Of Happiness
Bonus Track 赤いスイートピー English Jazz Version

【Disc 2】
1. レモネードの夏 2025
2. 愛されたいの 2025
3. 未来の花嫁 2025
4. セイシェルの夕陽 ~40th Anniversary~ 2025 Mix
5. SWEET MEMORIES ~甘い記憶~
6. 蒼いフォトグラフ ~Photograph of yesterdays~
7. Star 2025
8. 瑠璃色の地球 2020
9. 時間旅行 ~I still miss you~
10. ベルベットフラワー 2025
11. Stardust

※通常盤はDisc1&2のみ

【Disc 3】
1. 裸足の季節
2. 風は秋色
3. 白いパラソル
4. 風立ちぬ
5. 赤いスイートピー
6. 野ばらのエチュード
7. 天国のキッス
8. ハートのイアリング
9. ボーイの季節
10. Strawberry Time
11. Precious Heart
12. きっと、また逢える...

【Disc 4】
1. 大切なあなた
2. 素敵にOnce Again
3. さよならの瞬間
4. 私だけの天使 ~Angel~
5. Gone with the rain
6. 恋する想い ~fall in love~
7. 20th Party
8. いくつの夜明けを数えたら
9. 薔薇のように咲いて 桜のように散って
10. 風に向かう一輪の花
11. 私の愛
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