『ガンダム水星の魔女』スレッタ役の裏話

J:COMの動画配信サービス「J:COM STREAM」アニメ見逃し特設サイトでは、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』のスレッタ・マーキュリー役、『紫雲寺家の子供たち』の紫雲寺ことの役を演じる市ノ瀬加那の独占インタビューが公開中。公式インタビューの一部が到着した。 幼い頃からアニメを見るのが大好きで「アニメの世界に入れると本気で信じていた」と語る市ノ瀬加那。彼女はその夢を“声優”という形で叶え、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』のスレッタ・マーキュリー、『紫雲寺家の子供たち』の紫雲寺ことの、『葬送のフリーレン』のフェルン、『Dr.STONE』の小川杠、『ダーリン・イン・ザ・フランキス』のイチゴなど、多くの話題作で人気キャラクターを好演。自らの感情を場面ごとにキャラクターのセリフと重ね合わせ、心情を立体的かつ鮮やかに描き出します。インタビューでは、市ノ瀬加那の人となりをひもとき、作品への向き合い方と役づくりの秘密に迫る。━━2022年に放送された『機動戦士ガンダム 水星の魔女』（以下、『水星の魔女』）では、主人公のスレッタ・マーキュリー役を務められました。ガンダムという歴史あるシリーズ、しかもTVシリーズでは初の女性主人公とあって、プレッシャーも大きかったのではないでしょうか？市ノ瀬：最初の頃は、ものすごくプレッシャーを感じていました。マネージャーさんから「決まったよ！」という連絡をもらったときは、夢のような嬉しさを感じる反面、ものすごい緊張感も同時にありました（笑）。━━なかなか、ほかのアニメでは味わえない緊張感ですよね（笑）。市ノ瀬：あまりの大役なので不安も大きかったのですが、ただ、「そんな気持ちじゃ、多分演じ切ることはできないだろうな」と思ってもいたので、「精一杯、スレッタちゃんを演じることを楽しもう」という方向に必死に自分の気持ちを切り替えたら、だいぶ気持ちが楽になり、楽しくアフレコにも臨めました。━━スレッタを演じるときはどのようなことを意識されていたのでしょうか？市ノ瀬：オーディションの段階で「普段過ごしているときと、ガンダムに乗っているときは、ガラッと雰囲気を変えて大丈夫。ガンダムに乗っているときはかっこよく」とディレクションをいただきました。さらにエリクトは「ナチュラルで、幼く」と、それぞれディレクションをいただいていたので、スレッタとエリクトはそれに応える形で役作りをしていきました。ただ私自身、現場に入ってからもスレッタやエリクトが先々、どんな状況になっていくのか、物語がどう展開しているのかを知っていたわけではないので、その都度、渡される台本を見ながら模索していきました。━━スレッタは、どのような人物であると捉えていますか？市ノ瀬：水星が同年代の子のあまりいない惑星だったという、彼女の生まれ育った環境も要因の一つだと思いますが、私自身も、北海道から上京したあとに人見知りが発動してしまったタイプなので、スレッタの気持ち…例えば、学園に入ったばかりで同年代の子たちとうまくコミュニケーションが取れないシーンなどは、「めちゃ分かる…！」と共感しながらお芝居させていただいていました。━━そのお話を聞くと、いつも元気に振る舞っているように見えるスレッタの、日常の気持ちの変化が、もう少し深く理解できそうな気がします。物語の中での「スレッタの成長」というと、どのように捉えていますか？市ノ瀬：水星という、ある意味、狭く閉じられた世界の中で、「母親」を信じて生きてきた。無垢でまっすぐな彼女にとって、お母さんの言葉は絶対的な力があったのだと思います。そんな状態で学園に入学して、同年代の子たちと触れ合うことで、自分の中にある軸（お母さん）とは違う軸を、みんなが持っているということを少しずつ知っていく。Season1で描かれていたのは、スレッタのそんな“ズレに気づいていく”部分じゃないかと思います。そして、それが大きく動くのがSeason1の最後、衝撃的だったあのシーン…。━━ミオリネを救おうとして、ガンダムで初めて人をあやめてしまうシーンですね。市ノ瀬：そう、あのシーンで、それこそお母さんの言葉を信じて生きてきたスレッタにとっての正義感と、ミオリネが持っている正義感の違いが、決定的に描かれたと思うんです。でも人の生死に関わる正義感って、例えば、学園の日常生活での周囲の人とのちょっとした感覚のズレとは、比べ物にならないくらい重くて大きなことですよね。だからこそ、その事件がきっかけになって、スレッタは自分の中にある軸（お母さん）を疑い始めるようになる。自分の中にある「母親」という絶対的なものから少し離れて、自分自身で考えられるようになっていくんですね。本当の意味で、彼女が自分自身に向き合うようになったのはSeason2が中心なのかなと思います。━━市ノ瀬さんが思う『水星の魔女』という作品の魅力を教えてください。市ノ瀬：本当に、どんな場面、どんな人物を切り取ってもドラマがあるので、すごくたくさんの魅力がありますし、それこそ語り尽くすことができないくらいだと思います。その中で私が感じている『水星の魔女』の魅力の一つは、人間関係って人それぞれいろいろな形があって、どんな形でもどんな関係性でもいいんだと思わせてくれる作品だったことです。『水星の魔女』には、スレッタとミオリネの関係をはじめとした学園内の関係、スレッタとプロスペラの親子や、ミオリネの親子、ジェターク家の親兄弟、ゼネリ家の養親子と、本当に多様な人間関係が描かれていたし、そこにはさまざまな問題を抱える関係性があったと思います。一見、仲が良さそうで順調に見えても問題があることだってあるし、逆に仲良くなさそうに見えても絆が強かったりもする。作品の中で描かれたいろいろな関係性の中には、自分と重ね合わせられるものがあるかもしれない。そういう意味で、見た人の心に必ず何かを残してくれる作品なのではないかと思います。