■「この被写体には〇〇の角度の照明が最適」というセオリーは覚えなくていい
食べ物をよりおいしく撮るにはどうすればよいのか。例えば、いちごを上手く撮るにはどういった視点が必要なのだろう。物撮りをするときは、まず被写体の構造を把握することを意識しているというわたなべさん。
「“物撮りは被写体に対して35°の角度で当てたほうがいい”というセオリーもありますが、厳密な決まりは存在しないとわたしは考えています。食べ物といっても、いちごやピザ、パスタなど形はバラバラですから」
「この角度から光を当てたら面白いかも」と実際に照明の当て方を工夫して撮影していくこともポイントだという。
「もっといい写真を撮りたい!と思っている真面目な人ほど、“この被写体には〇〇の角度の照明が最適”と、セオリーを覚えようとしてしまいがちです。セオリーを覚えるのではなく、照明を動かしたり自分が立ち位置を変えたりして、写真がどう変わるかを試してみる。この感覚が、写真ではとても大切だと私は思います」
自然光やカフェの照明のように、自分で照明を動かせない場合は、被写体を動かしたり自分が立ち位置を変えたりしてみる。自由に照明の位置を変更できるときは、実際に照明を動かしながら被写体の見え方をチェックする。
「こうした試行錯誤で得られる変化を、肌身で感じて写真を撮ることを楽しんでほしいです。
■光と物の両方を見る意識が大切「そのものだからこそ出せる味わいを研究する」
写真を撮るときに重要なポイントは、カメラを構える前に被写体をちゃんと見ること。特に被写体を観察するときは、照明など「光を見る視点」と、「物(被写体を見る視点)」の両方を見る意識が大切だという。
「夢中に撮影していると、ついつい被写体ばかりに目がいってしまいます。一度被写体から離れて、光を見るようにすると、違う発見があるかもしれません。どっちつかずの中途半端な構図だと、写真全体のバランスが悪くなってしまうので、写真の中の主役を決めて、奥行きを出したり横一列に被写体を並べたりしてみてください」
だが、物撮りのポイントを押さえていても、自宅で作った料理を撮影する場合、家にあるお皿が必ずおしゃれとは限らない。キャラクターもののお皿しかない場合もあるだろう。
そんなときは、「そのお皿を活かして、生活感を見せる写真にしてみては」と提案するわたなべさん。あるものを上手に使って、そのお皿だからこそ出せる味わいを研究することが重要だという。
どのような撮影環境や被写体であっても、「まずは試してみる」「被写体をじっくり観察する」の2つのポイントを意識して、物撮りに挑戦してみてはいかがだろうか。