■エンディングには「灯台」をおく
3幕のエンディングのてっぺんに、灯台がにょきっとそびえ立っている。これがエンディングにあるべき「灯台」だ。エンディング灯台は、主人公の航海、この物語の航海を明るい光で照らしている。そして何より、作家であるあなたに光を送っているのである。あなたのドラマが真冬の荒波をかき分け、正しい方向へ進めるように。
エンディング灯台は、この航海の目的地であり、ドラマが始まった理由であり、作品が最終的に行き着くべき終着地だ。台本の最初から最後まで、作家に「向かうべき方向」を提示してくれ、強力なストーリーラインを維持できるように助けてくれるのがエンディング灯台だ。
エンディング灯台にはどんなものがあるのか?
1.作品のテーマやメッセージ。作家の哲学。
2.ストーリーの最終結末。中心となるジレンマの解決方式と主人公の最後の表情。
3.深い余韻を残すセリフや視覚的イメージ。
4.つい口ずさんでしまうメロディーや歌の歌詞。
5.主人公の人生観の劇的な変化。
6.作家・監督が創作者として、この作品を扱った理由。
たとえば、ドラマ『トッケビ~君がくれた愛しい日々~』、『SKYキャッスル~上流階級の妻たち~』、『ディア・マイ・フレンズ』、『椿の花咲く頃』、『五月の青春』、映画『インセプション』、『タイタニック』、『ラ・ラ・ランド』、『ショーシャンクの空に』、『テルマ&ルイーズ』の最後の場面を思い出してみよう。
これらの作品のエンディングは1~6のどれかと自然に結びつかないだろうか?
これらのエンディング灯台は、企画意図の1行から出てくるときもあれば、作家の胸の内で消化されずに残り続けていることもあるし、監督の脳内に描かれている場合もある。エンディング灯台はいつ立てるべきだろうか?それはあなたがコンセプトを決めるときや最初にアイデアを思いつくときでもいいし、企画案を構成するときでもいい。
小説『小さな地の獣たち』の作家キム・ジュへも、表現は異なるが、エンディング灯台を作家の創作の核心と考えている。「作家の創作プロセスにおいて、もっとも重点を置く部分はリサーチではありません。作品を書くとき、インスピレーションが湧いて、核心部分を理解したうえで始めます。
目標があれば、途中に何が入ってきても、そこに向かって最後まで走ってゆけばいいのです。到達地点がどこであるかわかっていなければ、私はストーリーを書けません。
(※)YouTube〈That Korean Girl〉コンテンツ中、キム・ジュへ作家インタビュー編、2023年7月6日。このインタビューでキム・ジュへ作家はエンディングの重要性を再度強調した。「ジョージ・サンダースという作家が言っています。ストーリーとは、レーシングカーのようにぐるぐると回って最後に目的地まで読者を連れていくことなのだと」。作家トニ・モリスンは、ストーリーをエンディングから始める、と言い、“I always know the ending; that’s where I start.”キャサリン・ポッターは、エンディングを知らないまま書き始めることはできない、と言った。“If I didn’t know the ending of story, I wouldn’t begin. I always write my last page first.”(Jon Winokur, 《Writers on Writing》、Running
Pr, 1990年、37~39ページ、未邦訳)