■家庭で冷凍した手作りおかずや『自然解凍品』表示がない冷食は加熱調理を
凍ったままお弁当にいれるだけという手軽さから、弁当派の強い味方になっている『自然解凍品』。実は、この『自然解凍品』は冷凍食品の中でも、特に厳しい基準が定められている。
「パッケージに<自然解凍品><自然解凍OK>と表示しているのは、35℃の環境に9時間置いても安全が保たれて、おいしさが損なわれないことが試験で確認された商品です」(日本冷凍食品協会 広報部長・三浦佳子さん/以下同)
ところが近年、この『自然解凍品』の誤った使い方が広がっていることに、同協会では危機感を覚えるという。
「ときどきネットで『自然解凍品は保冷剤代わりになる』というライフハックを見かけるのですが、この使い方は危険です。凍ったままお弁当に入れられるとは言え、自然解凍品が他の食材を"保冷"する役割を果たすわけではありません。『お弁当に自然解凍食品を1品入れておけば安心』と考えず、温かい食材を入れたら必ず粗熱取りをする、保冷剤を使う、保冷バッグを使用するなど、基本の食中毒対策をしてください」
『自然解凍品』そのもののおいしさと安全性が担保されるのは、あくまで厳格なルールのもとで製造されているからだ。
「ホームフリージングした作り置きのおかずを『お昼頃には自然解凍されているから』とお弁当に入れるのは、危険なのでやめましょう。食中毒を起こす菌は冷凍しても死滅せず、解凍してから再び活動を始めます。どんなに注意していても、一般家庭のキッチンから完璧に菌を排除することは不可能なので、ホームフリージングおかずは、召し上がる前にしっかりと再加熱することが大切です」
さらに、『自然解凍品』とパッケージに表示されていない冷凍食品を自然解凍するのも、「NG」と言う。
「基本的に冷凍食品は加熱調理をすることで、おいしく安全に召し上がっていただけるように製造されています。最近は自然解凍ができる冷凍野菜などもありますが、多くは加熱調理をする必要があります。製造から物流、販売まで徹底した衛生管理をしている冷凍食品も、解けたらナマモノと同じ。高温多湿の環境で放置すれば、菌が繁殖するリスクも高まります。さらに言えば<自然解凍品>であっても、9時間を超えて常温放置したものは品質の保証ができません」
加熱調理の必要がないため忙しい朝の時短はもちろん、電気・ガス代の節約にもなる『自然解凍品』。正しく使ってタイパ・コスパの良い生活を送りたい。
(取材・文/児玉澄子)