太平洋戦争末期、ペリリュー島での壮絶な戦いを、親しみやすい三頭身のキャラクターで描いた武田一義による漫画を原作とするアニメーション映画『ペリリュー ー楽園のゲルニカー』が12月5日より公開される。本作の主人公で、心優しい漫画家志望の田丸均(たまる・ひとし)役を板垣李光人、頼れる相棒・吉敷佳助(よしき・けいすけ)役を中村倫也が演じることが発表された。

 主演の板垣はアフレコ前に実際に物語の舞台となったパラオ・ペリリュー島を訪れ、島の各地に点在する戦跡をたどった。未だ生々しく残るそれらに、時には言葉を失いながらも当時の若者たちが生き延びようとした痕跡と事実に向き合い、アフレコに挑む。

 南国の美しい島で相次ぐ戦闘、飢えや渇き、伝染病――家族を想い、故郷を想いながら、若き兵士が次々と命を落としてゆく。そんな壮絶な世界を田丸と吉敷は必至で生き抜こうとする。自決も許されない持久戦、1万人中最後まで生き残ったのはわずか34人だった地獄のような戦場、ペリリュー島で若者たちは何を想い、生きたのか。観る者の感情を揺さぶる、壮絶な世界で紡がれた戦火の友情物語が、終戦80年の冬に公開する。

 解禁となった特報映像は、「お母さん、お元気ですか?ぼくは死んだ仲間の雄姿を伝える功績係をしています」主人公・田丸(CV:板垣)のせりふから始まる。1944年パラオ南西部ペリリュー島での激戦の中に踏み込んだかのような銃撃戦の音。「過酷ですが、きっと日本に帰ります」田丸の力強い一言に続いて「生き残ろうぜ、田丸!」と手を差し伸べるのは吉敷(CV:中村)だ。3頭身のキャラクターデザインからは想像できないほど、戦争のリアルが描かれた本作の一部を垣間見ることができる特報となっている。

 ティザービジュアルは、過酷な戦地で相棒となる2人のつかの間の休息を描いたもの。ペリリュー島のジャングルの中でノートに島の美しい自然を描き記す田丸と、田丸に楽しそうに語り掛ける吉敷。二人の周囲を今もペリリュー島に残る傷だらけのゼロ戦や戦車が囲んでいる。

 過酷な戦場を生き抜こうとする若き兵士を熱く演じた板垣、中村それぞれのコメントは以下のとおり。

■田丸均役:板垣李光人のコメント

 終戦80年という節目の年にこの作品に携わり、田丸均という役に命を吹き込むことができる運命には、非常に大きな意味と責任を感じています。
 田丸は、遺族に向けて戦場での仲間の最期を記す「功績係」を担っています。
 自分もいつ死ぬかわからない状況の中、ついさっきまで言葉を交わしていた仲間の最期を綴る残酷さ。
 そしてそんな残酷な現実を時には、愛する人を待つ家族のために美しく仕立てなければならない。
 そんな田丸なりの、激しくも繊細な葛藤や感情を大切に描いていきたいです。

 この作品に携わるにあたって、舞台となったペリリュー島にも伺いました。
 そこには教科書やテレビ、ネットからは感じることのできない、まさしくここで確かに苛烈な戦いが繰り広げられており、たくさんの方々が様々な想いと共に命を落とされたのだと、強く実感しました。
 その中には、自分とも歳が近い二十代の若者たちもたくさんいたはずです。
 彼らの青春や人生に想いを馳せると、とても他人事とは思えません。
 80年前も 、2025年の今も、そしてこれからも。
 命の尊さは平等でありその尊厳は普遍的であると、そしてそれを我々は自分たちで大切にしていかなければならないのだと、この作品を観て少しでも感じていただけたらうれしいです。

■頼れる相棒・吉敷佳助役:中村倫也のコメント

 太平洋戦争後の様々な場所で、終戦を知らず、潜伏を続けていた日本兵がいたことを僕は知っていました。しかし原作に触れて、こんなにも生々しくその日々を感じたことはありませんでした。
 またこれまでの人生で出会ってきた作品の中で、こんなにも「生きてくれ」と強く願った登場人物はいませんでした。
 知ることから始まる、ということを、僕は知っています。そして学びは、それを肌で感じられた時により深く生まれます。
 終戦80年。当時を伝えられる人も減ってきている中で、この作品を通して多くの方がペリリュー島の日々を感じてもらうことはとても意義のあることだと思います。戦争という混乱の先に今生きている僕らが感じるべきことは何なのか。ぜひ劇場で、歴史の1日1日を体感してください。

■ストーリー
 太平洋戦争末期の昭和19年、南国の美しい島・ペリリュー島。そこに、21歳の日本兵士・田丸はいた。漫画家志望の田丸は、その才を買われ、特別な任務を命じられる。それは亡くなった仲間の最期の勇姿を遺族に向けて書き記す「功績係」という仕事だった。

 9月15日、米軍におけるペリリュー島攻撃が始まる。襲いかかるのは4万人以上の米軍の精鋭たち。対する日本軍は1万人。繰り返される砲爆撃に鳴りやまない銃声、脳裏にこびりついて離れない兵士たちの悲痛な叫び。隣にいた仲間が一瞬で亡くなり、いつ死ぬかわからない極限状況の中で耐えがたい飢えや渇き、伝染病にも襲われる。日本軍は次第に追い詰められ、玉砕すらも禁じられ、苦し紛れの時間稼ぎで満身創痍のまま持久戦を強いられてゆく――。

 田丸は仲間の死を、時に嘘を交えて美談に仕立てる。正しいこと、それが何か分からないまま...。そんな彼の支えとなったのは、同期ながら頼れる上等兵・吉敷だった。2人は共に励ましあい、苦悩を分かち合いながら、特別な絆を育んでいく。

 一人一人それぞれに生活があり、家族がいた。誰一人、死にたくなどなかった。ただ、愛する者たちの元へ帰りたかった。最後まで生き残った日本兵はわずか34人。過酷で残酷な世界でなんとか懸命に生きようとした田丸と吉敷。若き兵士2人が狂気の戦場で見たものとは――。

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