松下が演じる二郎は、主人公・悦子(広瀬すず)の夫という重要な役どころ。キャスティングにあたり、石川監督が求めたのは、「古風とも言える昭和の雰囲気を持ちながら、華やかさも兼ね備えた佇まい」だったという。二郎という人物を、人間臭さや色気を感じさせる存在にしたかったと語る監督は、松下の名前を挙げたときから「確信めいたものがあった」と振り返る。
また、松下が長崎の原爆を題材とした舞台『母と暮せば』に出演していたことを知るプロデューサー陣は、その演技と長崎弁、さらには時代背景に対する理解力に強くひかれたという。こうして、作品のテーマと役柄に真摯(しんし)に向き合える俳優として、松下が白羽の矢を立てられた。
本作は、終戦直後の長崎という“まだ過去にしきれない傷跡”と、“未来を夢見る生のエネルギー”が交錯する時代を生き抜いた女性たちの姿を鮮やかに描く。希望と哀しみが交差する物語は、現代を生きる私たちに、前へと進む力をそっと与えてくれるはずだ。
今回解禁された3枚の場面写真では、松下演じる二郎の多面的な表情が捉えられている。妊娠中の妻・悦子の膨らんだお腹に手を添え、静かに寄り添う夫の姿。福岡から訪ねてきた父・緒方(三浦友和)との再会に戸惑うかのような物憂げな表情。そして、悦子から核心的な問いを投げかけられながらも、言葉を濁してはぐらかす姿──そのすべてに、過去の傷と向き合いながら生きる男の陰影がにじんでいる。