『天地人』の撮影終了後、どうしても兼続の墓にお礼を伝えたかったという妻夫木。両親とともに訪れたのは、大雪の日だった。
「“こんな雪じゃロウソクや線香に火なんてつかないよ”と言われたんですが、お墓の前に立った瞬間、自分の周りだけ急に晴れたんです。無事に火も灯すことができて、『やれることはやりました』と伝えました。感極まって涙が出てしまい、振り返ると親もが泣いていて……、3人で泣きながら『ありがとうございました』と手を合わせました。お墓を離れた途端、また雪が降り出して。車を運転してくれていた方が『今のは完全に直江兼続さん、来てましたね』って言ってくれたんです」
このエピソードに、会場からは大きな拍手が起こった。「山形でこの話を直接伝えることができて、本当によかった」と妻夫木。幽霊がいる・いないという話ではなく、「想いは絶対になくならない」と語る。それは、映画『宝島』のテーマである“命のバトン”にも通じるという。
「祖先崇拝の文化が根づく沖縄では、“ご先祖様に恥ずかしくない生き方をする”ことが大切にされてきました。
キャラバン開始から2ヶ月。各地を回るなかで、妻夫木は確かな手応えを感じている。「『宝島』のキャラバンは、本当に特別なんです。山形のお客さんもとにかくあたたかかった。作品や取り組みが伝わっていて、“ようこそ”という空気で迎えてくれる。もともとは“家族になってもらうため”に全国を回ろうと始めたんですが、“もう家族です”という空気で受け入れてくれる。それが本当にありがたいですね」
最後に、「……米沢にも、また行かなきゃ」と微笑みながら山形を後にした。翌3日は、新潟を訪問。直江兼続の生誕地は、現在の新潟県南魚沼市とされている。