こうの史代による同名漫画を原作に、片渕須直が監督・脚本を手がけたアニメーション映画『この世界の片隅に』(2016年)の公式Xが、6日に更新。同日、広島県が被爆から80年の原爆の日を迎えたことを受け、イラストを添えて思いを記した。


 Xでは「8月6日午前8時15分この世界の片隅で、たしかに生きていた人たちのことを思います。誰かが笑い、誰かがご飯を食べ、誰かが恋をしていた、あの日々のことを。いま私たちが立っているこの場所にも。遠く離れた地にもきっとあったはずの、かけがえのない日常。その静かな営みに、思いを馳せます。これからも、忘れないように」と投稿。

 2025年は、同映画の主人公・すずが、もし、この世界のどこかで今も暮らしていたとしたら、ちょうど100歳を迎える年でもある。すず役を務めたのんも、自身のXで「今年も黙祷いたしました。「この世界の片隅に」リバイバル上映をはじめ、終戦80年のこの年に私自身様々平和について考える機会が増えたように思います。ぜひ、皆様も共に」と呼びかけている。

■映画『この世界の片隅に』

 すずは、広島市江波で生まれた絵が得意な少女。昭和19(1944)年、20キロ離れた町・呉に嫁ぎ18歳で一家の主婦となったすずは、あらゆるものが欠乏していく中で、日々の食卓を作り出すために工夫を凝らす。
だが、戦争は進み、日本海軍の根拠地だった呉は、何度もの空襲に襲われる。庭先から毎日眺めていた軍艦たちが炎を上げ、市街が灰燼に帰してゆく。すずが大事に思っていた身近なものが奪われてゆく。それでもなお、毎日を築くすずの営みは終わらない。そして、昭和20(1945)年の夏がやってきた――。

 戦時下の広島・呉を舞台に、大切なものを失いながらも前を向いて生きる女性、すずを描いた本作は、公開当初は63館でのスタートながら、累計動員数210万人、興行収入27億円を突破、累計484館で上映される社会現象となった。第40回日本アカデミー賞 最優秀アニメーション作品賞ほか、第90回キネマ旬報ベスト・テン日本映画第1位など、アニメーション映画としては異例となる日本映画賞を次々と受賞。その評価は海を越え、国際的な映画祭でも高く評価された。
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