「もともと視聴者として『TOKYO MER』を観ていたので、まさか自分がそのチームの一員になれるなんて夢にも思っていませんでした。“いつか医療作品に挑戦してみたい”という目標が叶ったことが本当にうれしくて。すでに完成されたチームに入るプレッシャーは正直ありましたが、“絶対に頑張ろう”という気持ちで現場に入りました」
生見が演じた知花は、臨床工学技士(ME)や操舵士の資格も取得してMERに志願した若き看護師。とある島で噴火が発生し、島民全員の救出に奮闘する中、過酷な現実に直面して「死にたくありません」と本音を吐露する場面もある。
「台本を読んだ時から、知花の気持ちにすごく共感できたんです。火山が噴火して、“そこへ向かえ”と言われても、喜多見先生のようには動けないのではないか。助けたい気持ちはあっても、怖さもある。だけど“行かなきゃいけない”という思いが次第に強くなっていく。その心の揺れ動きがとても人間らしくて、自分自身と重なる部分も多かったです」
初の看護師役に挑むにあたり、医療リハーサルも念入りに重ねた。現場で頼りになったのは、主演の鈴木亮平の存在だった。
「鈴木さんは“僕も忘れてるかもしれないから”と、医療リハーサルにも付き合ってくださって。“気軽にやって”と、私の緊張を和らげるようにいつも優しく声をかけてくださいました。どうしたらいいか迷った時、鈴木さんに聞くとすぐに解決することが多くて、本当に心強かったです。まるで“監督がもうひとりいる”みたいでした(笑)」
医療の専門性に加えて、芝居面でも高い柔軟性が求められる現場でもあった。時には台本にないせりふや即興のリアクションが必要な場面もあり、生見にとっては新たな挑戦の連続だったという。
「最初は“どうしよう”って戸惑うことも多かったです。でも、“今この瞬間に集中するしかない!”と気持ちを切り替えて臨んでいました。毎日がドキドキの連続で、今までとは違う自分に出会えた気がします。“自分の殻を破れた”と実感できる現場でした」
本作では、沖縄本島で約1ヶ月にわたるロケーション撮影が行われた。生見は東京との行き来を繰り返しながら撮影に臨んだ。
「自宅と同じ寝具やディフューザーを持ち込んで、なるべくいつもの環境に近づけるようにしていました。撮影に集中できたし、沖縄の自然や人の温かさに何度も助けられました」
特に心に残ったのは、地元の人々との触れ合いだった。
「撮影は昨年の秋だったのですが、沖縄といえども寒い日もあって、“私たちは慣れているけど、“寒くない?”って声をかけてくださったり、カイロをくださったり。ああ、本当にここで生きている人たちなんだな、って。現地の風景だけでなく、エキストラ出演されている地元の方々のあたたかい空気感も映像から伝わると思います」
最後に、作品を届けるにあたっての思いをこう語った。
「『TOKYO MER』は、“目の前の命を全力で救いたい”という強い思いを持つ人たちの姿を描いた作品です。喜多見先生(鈴木)や夏梅さん(菜々緒)の安心感、牧志先生(江口洋介)の頼もしさ、そして南海MERのチームが少しずつ成長していく姿は、観る方にとって“希望”になると思います。災害や事故はいつどこで起こるかわからないからこそ、もしもの時に“自分ならどうするか” “自分にもできることがあるかもしれない”と考えるきっかけになればうれしいです。子どもたちには“将来こんな仕事がしたい”と思ってもらえたら本当に光栄です」
医療作品への挑戦を経て得た経験は、生見自身にとっても、これからの糧となっていくに違いない。