映画『宝島』(9月19日公開)の主演兼宣伝アンバサダーを務める俳優・妻夫木聡が、大友啓史監督とともに行っている全国キャラバン。8月9日・10日の2日間で京都・神戸・姫路・熊本・鹿児島の5劇場を巡り、計約1200人の観客一人ひとりに名刺を手渡し、直接思いを届けた。
6月から続くキャラバンは、この2日間で20エリアに到達した。

 本作の舞台は、アメリカ統治下にあった戦後の沖縄。物資の乏しい時代に、米軍基地から奪った物資を住民に分け与える“戦果アギヤー”と呼ばれる若者たちがいた。ある襲撃の夜、リーダー格だったオン(永山瑛太)は「予定外の戦果」を手に入れ、忽然と姿を消す。残された幼なじみのグスク(妻夫木)、ヤマコ(広瀬すず)、レイ(窪田正孝)は、それぞれ刑事、教師、ヤクザの道を歩みながら、オンの行方を追い続ける20年にわたる物語。

■京都での対話「昇華しないでほしい」

 9日、最初に訪れたT・ジョイ京都では、「見終わって『人間はバカじゃない』と思いたい気持ちと、『バカかもしれない』という思いが共存しています。このようなモヤモヤをどうやって昇華させたらいいでしょうか」という観客の声に対し、妻夫木は「昇華しないでほしい。簡単なことじゃないから」と応答。「僕たちは生きることに迷うし、みんな強くない。弱くていいと僕は思っています。だからこそ人の痛みを感じることができる。昇華せずに燃えていきましょう、みんなでたぎっていきましょう」と呼びかけ、大きな拍手を受けた。


■神戸では「未来につなげる使命」

 続くOSシネマズ神戸ハーバーランドでは、妻夫木から「今年は戦後80年という年でもあるし、今日は長崎に原爆が落ちた日でもあります」と切り出し、「それは忘れてはいけないし、知っていなきゃいけない。それをちゃんと伝えていかなきゃいけない。未来につなげていくのが僕たちの使命」と強調。「俳優として映画を通じて皆さんに知ってもらう機会をつくらなきゃいけない」と語った。

■姫路で被爆体験の証言を受けて

 休む間もなく姫路に移動。会場のアースシネマズ姫路には「実は僕たち5分前にこの会場に到着しました」と安どの表情を見せたふたり。観客から祖父母の被爆体験や8月15日の墓参りへの思いが語られる中、妻夫木は「映画は人や世界を変える力を持つかもしれない。各地で想いが伝わっていると感じるし、逆に学ばせてもらっています」と述べた。

■熊本での問いかけ「考えは変わったか?」

 10日、熊本ピカデリーでは、本作の前と後で、戦争や平和に対する考えの変化を問われ、妻夫木は「当然、変わりました」と即答。沖縄・宜野湾市の佐喜眞美術館で鑑賞した「沖縄戦の図」という絵を見て、「教科書の言葉しか知らなかった自分が、沖縄の方々の痛みを感じた」と語った妻夫木は、時折、言葉を詰まらせながら、「この映画を通して、改めて戦争について、日本について、沖縄について、僕たちの未来、現在、過去、すべていろんなことと向き合わせてくれた、きっかけをくれた作品」と語った。

■鹿児島での振り返りと監督の信頼

 締めくくりとなった鹿児島ミッテ10では、これまでの全国キャラバンを振り返り、もっとも印象深い会場として沖縄を挙げ、「『ありがとう』と言われたことが忘れられない」と回想。

 「大友監督から見た妻夫木さんは?」という質問も。
大友監督は、この映画の企画が、コロナ禍などの影響により、二度もとん挫しては復活したことについて言及し、「妻夫木くんは『監督とこのプロジェクトと心中します』と言ってくれたんです。その言葉がすごく支えになりました」とあらためて感謝の思いを述べた。

 本作の脚本と出会い、「運命だと思った」と振り返った妻夫木は、「映画が土地土地で愛され、その地の映画になる姿を見てきた。今回も映画の力を信じたい」と観客に託し、大友監督も「映画は大事な子どものようなもの。皆さんで育ててほしい」と締めくくった。
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