バイキングの少年ヒックと、彼が出会ったドラゴン・トゥースとの友情と大冒険を描いた『ヒックとドラゴン』。2010年に公開されたアニメーション映画を、最新のIMAXカメラを用いて実写映画化した本作は、9月5日時点で全世界累計興行収入約6億3027万ドルを記録する大ヒットに。
いよいよ日本公開を迎える。日本語吹替版で主人公ヒックの声を担当した坂東龍汰が、本作への想いを語ってくれた。

 本国オーディションを経て、ヒック役に決まった坂東。「オーディションがあると聞いて、“ぜひやってみたい!”と思い挑戦しました。数シーンを2時間ほどかけて声を当てて、それを本国に送り、結果を待つという流れでした。『決まりました』と連絡をいただいた時は本当にうれしかったですし、すでに海外で大ヒットしていたので、“すごい作品に関わっちゃったな…”と責任と重圧で急に怖くなりました」

 映画『ヒックとドラゴン』は、ひ弱で頼りない少年ヒックが、伝説のドラゴン<ナイト・フューリー>と出会い、「トゥース」と名付けて心を通わせ、共に成長していく姿を描いた冒険ファンタジー。友情や親子の絆、そして「共に生きる」というテーマを壮大なスケールで描き、世界中で愛される名作となっている。

 試写で日本語版を観たとき、自分の声を通してヒックの変化を実感できたという。「収録は3日間でしたが、1日目より2日目、2日目より3日目の方が良くなっていきました。それが映画の前半・中盤・後半にうまくリンクしていて、ヒックの成長と自分の成長が重なっていく感覚がありました。自画自賛みたいですが、必死に声を当てていたら自然とそうなったんです。不思議な没入感がありました。
吹替版をご覧になる方には、そこも感じてもらえたらうれしいです」

 お気に入りは、ヒックとトゥースが一心同体となって空を駆け抜ける大迫力のドラゴンライドシーン。「ヒック役のメイソン・テムズさんの声や音楽、効果音を聴きながら声を当てていたので、実際にドラゴンに乗ることはできないもどかしさもありつつ、自分も乗っているような臨場感がありました。リップ合わせには苦労していたんですが、あの時は気持ちが完全に乗っていて自然に合ったんです。“今の奇跡だ!”と思いました。子どもの頃は『ハリー・ポッター』シリーズを含め、映画はほぼ吹替版で観ていたので、試写で自分の声が映像に溶け込み、“ヒックの声”に聞こえたときは感動しました」

 ヒックがトゥースと出会って少しずつ変わっていったように、坂東もひとつひとつの経験を積み重ねながら成長してきた。

 「役者を始めた頃は“自分なんて…”“いつか芝居ができないのがバレる”と、不安や劣等感ばかりでした。主役に抜てきされても“本当に大丈夫なのか”“いつか終わってしまうんじゃないか”と心のどこかで怯えていたんです。でも、がむしゃらに目の前の仕事に向き合い続けるうちに、少しずつ“これでいいんだ”と思える瞬間が増えていきました。気がつけば“大丈夫だ”と自然に思える自分になっていました。ヒックも同じだと思います。弱さや不安を抱えながらも、純粋な気持ちで目の前のことと向き合い、トゥースと共に成長していく。その姿にすごく共感しました。
トゥースがいなければヒックは成長できなかったように、僕自身も支えてくれる仲間や作品との出会いがあったからこそ今があるんだと思います」

 最後に、本作の魅力について坂東はこう語る。

 「ヒックの成長が自然な流れで描かれるからこそ心に響く。頼りなかったヒックが立派に成長していく姿は、実写版でも鮮やかに表現され、アニメ版への敬意も感じられます。IMAXカメラによる壮大な映像、そしてジョン・パウエルさんの胸を打つ音楽も素晴らしいので、ぜひ日本語吹替版でも楽しんでください」
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