小学5年生で出会い「親友」になったハッシーさんとこーたんさん。大学1年のときにハッシーさん起きたある出来事をきっかけに、2人の距離は少しずつ変化していき、やがてかけがえのない「人生のパートナー」になった。そんな、漫画のような馴れ初めを紹介した動画シリーズに「感動した」「もらい泣きしちゃいました」「大変な時期に支えてくれた存在って尊い」など感動の声が寄せられている。投稿者で、You Tubeチャンネル「スパイシーサワー -Spicy Sour-」(@SpicySour_Official)を運営する2人に交際までの道のりと「幼馴染カップル」の魅力について聞いた。

■幼馴染、親友、そしてカップルへ…隣にいるのが当たり前で、居心地のいい2人の関係

――小学5年生の時に出会ったハッシーさんとこーたんさん。はじめは大勢いた友だちの中の1人だったそうですが、お互いの第一印象について教えてください。

こーたん「小学5年生の時は、ただクラスが同じになった男の子という印象でした。接点があまりなかったのですが、6年生でまた同じクラスになり、席が近くなったことでよくつるむようになったんです。僕の第一印象は『ハッシー=筋肉キャラ』(笑)。初めて家にお邪魔したとき部屋にダンベルが置いてあって、それをいじって遊んでいたのをよく覚えています」

ハッシー「こーたんの第一印象は『やんちゃ坊主』ですね。何かとちょっかいをかけてくるタイプで、とにかく常に笑いが絶えない男の子でした」

――その後、中学・高校を過ごすうちに「親友」という間柄になります。もともとタイプが異なるというお2人が、どういった経緯で関係を深められたのでしょうか?

ハッシー「高校のとき『同じバイトをしよう』と誘い合ったのですが、結局違うところになってしまって。こーたんがほかの友だちと遊ぶことも多く、僕としては少し寂しい思いをしていたんです。でも、大学受験を前に僕の家で勉強会を開くようになり、また自然と一緒に過ごすようになりました。大学生になってからは同じバイト先で働いていたので、さらに関係が深まっていって…っていう感じですね」

こーたん「正直、僕は『この出来事がきっかけで親友になった』という、はっきりとした瞬間は覚えていないんですよね。お互いの性格が真反対だったからこそ、自分にはない部分を発見し、惹かれていったのかもしれません。あと、学生時代からずっと一緒に遊んでいたので、いつの間にか隣にいるのが当たり前になり、居心地の良さを感じていました」

■唯一の家族をうしなった大学1年の冬 寄り添ってくれた彼の存在が心の支えに

――そして大学1年生のとき、ハッシーさんの身に降り掛かったある出来事がきっかけで、親友として過ごしてきたお2人に転機が訪れます。ハッシーさんは動画で「この出来事がなければ交際に発展しなかったかもしれない」「異性愛者として生きていたかも」と明かされていました。改めて、当時の状況やお気持ちについてお聞かせください。

ハッシー「大学1年の冬、がんで闘病中だった母が息を引き取りました。母子家庭で育ってきた僕にとって、唯一の家族を喪い『ひとりになった』という現実は、とても大きく重たいものだったと記憶しています。きょうだいもいなかったので、耐え難い孤独感に潰れそうでした」

――そんな時、ずっとそばで支えてくれた存在が…。

ハッシー「ここにいる、こーたんでした。旅行に連れ出してくれたり、家に泊まってくれたり…彼は毎日のように僕に寄り添ってくれて、そんな彼と一緒に過ごすことで、僕は再び家族のような温かさを感じられるようになったんです。本当に心の支えでした。あの時期がなければ、今の自分はなかったと思います」

――こーたんさんのご心境はいかがでしたか。

こーたん「当時はただ『支えたい』という気持ちが強く、“傷心旅行”のつもりで6泊8日の旅に誘ったんです。その中で、今まで知らなかった彼の一面を知ることがあって、『ずっとこのままでいたい』と心から思うようになりました。そこから自然と恋愛感情に変わっていったように思います」

――交際から7年。時にはぶつかったり、すれ違ったりしたこともあったのではと思います。良い関係を続けていくため、2人が心がけてきたことを教えてください。

ハッシー「僕たちは性格が真逆なので、相手に『ここは直してほしい』と思う部分はもちろんあります。でも、それを無理に直させようとはせず、相手の考えを尊重するようにしてきました。自分の考えを押し付けたり、合わせるよう強要したりしてこなかったからこそ、良い関係が続いているんだと思います。軽い“諦め”も時には大事ですよね」

こーたん「本当にその通りで、性格が違うからこそぶつかることもありましたが、変えようとせずに『そのままを受け入れる』スタンスでいたのが大きかったです。だからこそ、壁を乗り越えられたし、今も一緒にいられるんだと思います」

■幼馴染カップルの魅力は「自然体でいられること」「居心地の良さと安心感」

――幼馴染カップルの魅力についてお聞かせください。

ハッシー「幼い頃から一緒に成長してきたので、お互いの良い部分も悪い部分も全てわかっていること。だからこそ、自然体でいられるのが一番の魅力だと思います。変に取り繕う必要もなく、弱さやだらしない部分も含めて、全部さらけ出せるところがいいですよね」

こーたん「幼馴染だからこそ得られる『一緒にいるのが当たり前』という感覚は大事だと思います。特別なことをしなくても居心地がいいし、隣にいてくれること自体が安心につながっている。それが、長く一緒にいられる一番の魅力ではないでしょうか」

――幼馴染から関係が始まっているお2人には、共通のお友だちやお知り合いも多いのではと思います。周囲の方々には、交際をオープンにされているのでしょうか?

ハッシー「交際していることは、ごく一部の友人だけに伝えています。ただ最近、職場の何人かに思わぬ形で知られることになりまして。SNSに僕らの動画がたまたま流れてきたみたいで『これって?』と驚いていました」

こーたん「小学校からの友人に伝えたときは、もちろん驚かれましたが、もともと『シェアハウスをしている』とは話していたので、そこまで抵抗なく受け入れてもらえたように思います。『やっぱりそうだったんだね』と納得されることも多かったですね」

ハッシー「ただ、家族に関しては違いました。母が他界した後、僕は祖父母の家で暮らしていたのですが、その頃からこーたんとのお泊まりが続いていました。ある晩、コンビニに買い物に行く途中、薄暗い中で『周りには見えないだろう』と思って手をつないで歩いていたところを祖父に見られてしまっていたようで翌日、険しい顔で呼ばれ家族会議になりました。

 祖母から『昨日、手をつないでいたの?』と問い詰められました。その時は必死に否定したのですが、最後に言われたのは『もし本当なら、この家から出て行ってもらう』『近所の人から"気持ち悪い人たちが住んでいる"と思われたくない。私たちが住めなくなるから』
という言葉でした。

 小さい頃から祖父母にも育てられてきたので、その一言は余計に胸に刺さりました。孫としての僕の人格を否定されただけでなく,自分たちの立場や安全を優先されたように聞こえて、本当に悲しかった。

 当時、僕は大学生で、祖父母の援助なしに生きていける自信はありませんでした。こーたんとの生活に終止符を打つか、学校に通い続けるか――その葛藤に駆られていました。そのことをこーたんに相談したら『一緒に2人で暮らせるところを探そう』と提案してくれて、その言葉が背中を押してくれました。その結果、シェアハウスという名目で本格的な同棲生活を始めるきっかけになったんです」

こーたん「はっしーから相談を受けた時、僕も本当に悲しかった。でも同時に、『じゃあ2人で安心して暮らせる場所を探そう』と自然に思えました。背中を押したというより、僕自身もそうしたかったんだと思います。あの出来事は辛かったけれど、僕たちにとって大きな転機になったと今では感じています」

――思いを伝えられずに悩んでいる人たちに向けて、メッセージをお願いします。

ハッシー「自分の気持ちを伝えるって、本当に勇気のいることですよね。相手に伝えることで、今まで築き上げてきた関係が壊れてしまうかもしれない。そんな風に思って不安になる人が多いと思いますし、実際、僕自身もそうでした。もしあの時、こーたんに思いを伝えていなかったら、僕はセクシュアルを隠したまま違う人生を歩んでいたかもしれません」

――思いを伝えたことで、人生が大きく変わったのですね。

ハッシー「結果として今の生活に後悔はなく、むしろ伝えてよかったと心から思っています。言わずに後悔するより、言って後悔する方が、自分の気持ちに正直でいられると思うんです。誰にどう思われようが、自分の“存在”や“あり方”を自分自身で否定しないで欲しい。そして、相手の気持ちも否定しないことが大切だと感じています」

こーたん「僕自身も『ハッシーはどう思っているんだろう』とか『気を遣われているんじゃないか』って、迷うことはありました。でも結局、彼と一緒にいたいという思いがあり、それを伝えたからこそ今があります。勇気を出して一歩踏み出すことで、想像以上に温かい未来が待っていることもあると思いますよ」

――You Tubeチャンネル「スパイシーサワー -Spicy Sour-」では、日常や馴れ初めを発信しているお2人。最後に、配信を通じて伝えたい想いや叶えたい夢についてお聞かせください。

ハッシー「僕たちが伝えたいのは、セクシュアルマイノリティだから特別なのではなく、同じ人間として日々を過ごしているということです。ゲイカップルで幼馴染から恋人になった…という関係性は珍しいことかもしれません。でもそれは、性別で相手を選んだからではなく、人として惹かれ合った結果です。そういった多様な形の関係性も自然なものだから、『存在していいんだよ』と発信していきたいです」

こーたん「僕たちの姿をみて『こういうカタチもあるんだ』『自分らしくいていいんだ』と感じて安心した、勇気を持てたという人が、どんどん増えてくれたら嬉しいですね。僕たちの配信が誰かの背中を押せていたらいいな…と思います。日常の中で『ちょっと頑張ってみよう』と思えるような、そんな“きっかけ”をこれからも届けていきたいです」

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