初日を迎え、伊藤監督は「まだ実感がなくて」としながら、「観てくださったみなさんのお顔を一人ひとり見ることができるというのは夢のようで、なんとも言葉に表しがたいですが、きょうここに3人で、ずっとコアでやってきたメンバーでこの場所に立っているというのは、本当に本当に感動しています」と声を弾ませた。
自身の性暴力被害を映画化することについて、「葛藤の嵐で、葛藤でしかなかったですね」と吐露。「本を出したときは、民事事件もはじまっていなくて」と振り返り、「自分の感情を一切入れずに、ジャーナリストとして書いていたんですけど。ちょっと距離ができて、自分に起きていることのトラウマから逃げられていたと思うんですね」と向き合い方を振り返った。
続けて「それに気づいたときに、やはりこの映画の中で当事者として何が伝えられるんだろうってことを、自分の内面と、言葉にできない感情と、向き合いたくないものすべてと向き合って作りたい」「当事者が語る映画を観てみたいと自分でも思った」と変化があったとし、「自分をドキュメンタリーにするのはすごく苦しいですけど、450時間の映像があったんですけど、向き合いたくなかったことにひたすら向き合わされて、自分のなかで整理ができたかなとという気持ちになりました」と語った。
本作は、伊藤氏自身が経験した性暴力事件を起点に、その後の社会の沈黙や偏見、そして、自身にのし掛かってきた圧力と向き合い続けた姿を、自らカメラを回して記録。製作には、『新聞記者』(2019年)、『月』(23年)など社会派作品で知られるスターサンズが参加。事件を公表した17年の記者会見以降、8年にわたる製作を経て完成した。
イギリス・アメリカとの国際共同製作として制作され、2024年1月の第41回サンダンス映画祭ワールドシネマ・ドキュメンタリー部門大審査員賞 に正式出品。その後、世界各国の映画祭や賞レースで高い評価を獲得し、第97回アカデミー賞で日本人監督初の長編ドキュメンタリー映画賞にノミネートされた。
舞台あいさつにはほかに、プロデューサーのエリック・ニアリ氏、ハナ・アクヴィリン氏が登壇した。
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