本作は、伊藤氏自身が経験した性暴力事件を起点に、その後の社会の沈黙や偏見、そして、自身にのし掛かってきた圧力と向き合い続けた姿を、自らカメラを回して記録。製作には、『新聞記者』(2019年)、『月』(23年)など社会派作品で知られるスターサンズが参加。事件を公表した17年の記者会見以降、8年にわたる製作を経て完成した。
本作においては、承諾を得ずに撮影・使用された映像が含まれていたとして10月25日、対象となったタクシー運転手の映像は無断で撮影されたものであることを認め、当事者やその家族に不快な思いを与えたとして自身の公式ホームページで謝罪した。
これに関連し、製作過程でのトラブルについて聞かれると、「2024年1月のサンダンス映画祭でワールドプレミアを迎えてから、いろいろな国を旅してきました。ようやくこの日本、私が生まれ育ち、この問題に対して向き合いたいこの場所で映画を公開するのは、私にとって意味があることなんですけれども、映画のプロセスについてさまざまなご意見がありました」と振り返った伊藤監督。
続けて「わたしもとても反省することがありました。きょうを迎えるまで、この映画が本当に上映できるのかという恐怖がありました」と吐露。「同時に、お世話になってきた、尊敬している西廣弁護士であったり、弁護団からいろいろなご意見があって、その方々に対して中には事実と違うことが報道されてしまった、一方的な情報が回ってしまったことに対して、私は正面から対立するような形でお話はしたくないと避けてきたんですけれども、やはり事実でないことは正さなければいけない」と思い至ったとして、「防犯カメラ映像でしたり、どういったタイムラインでこの映像を使うことになったのかであったり、きのう西廣弁護士がステートメントをリリースされたんですけれども、それに対して、事実でないことに対して、私としても監督としてのステートメントを書きました」と明かした。
また、どういった部分が日本公開版で変わったのかという点も含めて、自身のホームページで公開していることを告知し、「本当にご迷惑、ご心配をおかけしました。ありがとうございます」と伝えた。
イギリス・アメリカとの国際共同製作として制作され、2024年1月の第41回サンダンス映画祭ワールドシネマ・ドキュメンタリー部門大審査員賞 に正式出品。
舞台あいさつにはほかに、プロデューサーのエリック・ニアリ氏、ハナ・アクヴィリン氏が登壇した。
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