アカデミー賞では、日本映画『国宝』とともに国際長編映画賞のショートリスト(15作品)に選出されていた作品で、今回のノミネーションでは作品賞、主演男優賞(ワグネル・モウラ)、国際長編映画賞、キャスティング賞の4部門に選出された。
昨年5月の「第78回カンヌ国際映画祭」で監督賞と主演男優賞をW受賞、さらに独立賞の国際批評家連盟賞、AFCAE賞(フランス・アート・シアター協会賞)も獲得し、同年のカンヌで最も多くの賞を受賞した作品でもあった。
監督は前作『バクラウ 地図から消された村』(2019年)で「第72回カンヌ国際映画祭」審査員賞を受賞したブラジルの鬼才クレベール・メンドンサ・フィリオ。前作では、ヴァイオレンス、SF、そして政治的寓話として唯一無二の世界観を構築し喝采を浴びた彼が、本作では1970年代の軍事独裁政権下のブラジル・レシフェを舞台に、「ある目的」を果たすために街に戻ってきた男の物語をスリリングかつエモーショナルに描く。
主演は日本でも大ヒットを記録した『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(2024年)にも出演していたブラジルを代表するトップスターの一人ワグネル・モウラ。フィリオ監督とのタッグで、キャリア最高の演技を披露し、カンヌ受賞の勢いそのままに、1月11日(現地時間)に発表された「第83回ゴールデン・グローブ賞」では、言語の壁を超え、並み居るハリウッドスターたちを抑え、ドラマ部門の主演男優賞を受賞した(作品として最優秀非英語映画賞も受賞)。
今回のアカデミー賞では、ゴールデン・グローブ賞ミュージカル・コメディ部門で主演男優賞を受賞した、ティモシー・シャラメ(『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』)や、レオナルド・ディカプリオ(『ワン・バトル・アフター・アナザー』)といったスターがひしめく激戦区。その中でモウラがどこまで存在感を示すかも注目される。
前回(第97回)のアカデミー賞でもブラジルの『アイム・スティル・ヒア』(監督:ウォルター・サレス)が国際長編映画賞を受賞。作品賞、主演女優賞にもノミネートされていた。この作品も軍事独裁政権下のブラジルを舞台にした作品だった。
もし『シークレット・エージェント』が国際長編映画賞を受賞すれば、同一国が2年連続で同部門を制するのは、第60回(1987年)『バベットの晩餐会』、第61回(88年)『ペレ』でデンマークの映画が達成して以来、約40年ぶりの快挙となる。
ブラジル映画界の勢いを象徴する一本として、アカデミー賞の行方とともに注目したい作品だ。アカデミー賞授賞式は、現地時間3月15日(日本時間16日)に、米ロサンゼルスのドルビー・シアターで行われる。
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