東京・池袋で開催中の「東京アニメアワードフェスティバル2026」で15日、アニメ功労部門顕彰記念『地球(テラ)へ…』(2007年)セレクション上映&トークショーに、原作者の竹宮惠子氏が登壇した。

 会場には原作を10代の頃に愛読していたという世代の女性ファンが多く詰めかけ、作品への変わらぬ支持と熱い視線が注がれた。
上映後のトークで竹宮は「可能性を持つキャラクターを自分のテーマとして描いていこうと思っていた」と“少年”というモチーフに込めた思い、アニメ化当時のエピソードなどを語った。

 竹宮氏は「昔、公開された時に見ていた記憶よりも緊張しました。なぜだろうと思ったんですけれど、自分のキャラクターが今度はどうなるのだろうという心配というか、親心のような気持ちがあったんですね。でも、とても素晴らしかったと思います。ラストシーンが、こんなに感動的だったんだと、あらためて感じました」と率直な感想を述べた。

 今回、竹宮氏はアニメ功労部門で受賞。『地球へ…』(1977年)をはじめ『風と木の詩(うた)』(1976年)、『アンドロメダ・ストーリーズ』(1980年~82年/原作:光瀬龍)といった作品で、耽美な少年愛、本格SFなど異色ジャンルへ果敢に挑戦し、少女漫画とアニメに無限の可能性を指し示した先駆者として選出された。アニメ化は決して多くはないものの、『地球へ…』は1980年に映画化、2007年にテレビシリーズとして再アニメ化された。

 竹宮氏は、原作『地球へ…』を少年誌「月刊マンガ少年」で連載した当時について、少女漫画家が少年漫画誌で連載を持つことは当時としては画期的とされているが、「ちょうどその頃、読者は女性でも男性でもいいじゃないか、という考え方が漫画界にあった」と回想。「私は少年漫画で育ってきて、あまり少女漫画を読まずにきたので、少年誌で描けることに可能性を感じました。このチャンスを逃したくない、一度きりだから普通ならできないことを書いてしまおう、という気持ちだった」と振り返った。

 また、作品がSFであることについては、「SFは好きでしたが、熱心なSF読者というわけではなかった」としつつも、当時の時代の空気は強く感じていたようで、「『スター・ウォーズ』が日本より先にパリで上映されると聞いて、旅行中に観に行ったこともあります。
フランス語なので内容はわからなかったんですけど、それでも画面だけでも観たくて行きました」と明かした。

 1980年に公開された映画『地球へ…』については、竹宮氏は当初「自分の漫画がアニメになるとは思っていなかった」と語る。一方、モデレーターを務めた高橋望氏(アニメ特撮アーカイブ機構理事)は『宇宙戦艦ヤマト』『機動戦士ガンダム』『銀河鉄道999』といった作品が人気となる流れの中で、「次は『地球へ…』だと思っていた」と熱を込めた。

 劇場版では原作からの変更もあったが、竹宮氏は「映画は尺が限られているので、説明のための改変は必要だったと思う」と理解を示し、「自分の主張や原作の流れをそのまま優先すると、映画としてまとまらない。私はアニメの専門家ではないので、そこに口を出すつもりはありませんでした」と語った。

 その後、話題は2007年のテレビアニメ版へ。今回、全24話の中から第4話・第8話・第24話が上映された。竹宮氏は「またアニメになるんだと驚きましたし、思いがけないチャンスを持ってきてくださったと感謝しています」と話し、毎週欠かさず見ていたことも告白。「自分の産んだ子が今度は何をするんだろう、というドキドキ感がありましたが、深いところまで説明するためにキャラクター設定も変えられていて、関係者がうまく絡み合うように作られていると感じました」と評価した。

 トークでは、“少年”という存在についての考えも語られた。竹宮氏は「私にとって、少年がいちばん描きやすい存在。自分を乗せやすい存在でもあります」と話し、「少年という言葉を別の言葉に置き換えるなら“可能性”だと思っています。
そういう可能性を持つキャラクターを自分のテーマとして描いていこうと思っていました」と明かした。

 さらに、『地球へ…』に登場する、特殊な能力を持つ者たち「ミュウ」について、大人になることを拒否しているようにも見えるという指摘には、「年を取らずに済むなら、誰だって少年のまま、少女のままでいたいですよね。それは当たり前のことだと思うんです」と応じた。

 作品のテーマについて高橋氏が「人と人が分かり合えるのか、という物語ではないか」と投げかけると、竹宮氏は「同じような管理社会になりそうだ、という気持ちで読まれる方も多いと思います。でも、そうではなくて、希望を持った“可能性のある少年たち”が、どうやって生きていくのかという物語なんです。既定の路線を跳ね返しながら、どう自由に生きるのか。窮屈な世の中ではあるけれど、それでも希望になればいい。そう思って『地球へ…』を読んでいただきたいです」と語った。

 高橋氏が「少年たちの存在そのものが希望だということですね。それは昔も今も変わらない」と応じると、竹宮氏も深くうなずいた。

 終盤には、会場にいた2007年版テレビアニメを監督したヤマザキオサム氏も急きょ登壇。久しぶりに自作を見た感想を問われると、「制作側としてはやり残したことも多く、少し心苦しい気持ちもありました」と率直に語りつつ、「最終回では先生にもいろいろ助けていただいて、当時の制作状況を思い出して涙が出ました」と明かした。


 竹宮氏も「絵コンテが上がってきた時に相談を受けたことがありました。大丈夫だから勇気を持ってやってください、とお伝えしました」と振り返り、作品作りの裏側をのぞかせた。

 最後に竹宮氏は、会場の観客や、ものづくりを目指す人たちへ向けてメッセージを送った。

 「何かを作るというのは、何もないところから材料を引っ張ってきて形にする仕事です。そういう道に進もうとしている方だけでなく、自宅で小さな刺しゅうを作っている方でも同じことだと思います。できるだけそれを楽しんで、たくさん想像して、自分の未来の可能性を広げていってほしいと思います」

 会場には、原作漫画を10代の頃に愛読していたという世代の女性ファンが多く詰めかけた。トークショーでは真剣なまなざしで竹宮氏の言葉に耳を傾けるなど、作品が世代を超えて深く愛され続けていることを印象づけた。
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