NHKは9日、2028年放送の大河ドラマ(第67作)が『ジョン万』に決定したと発表した。主演は山崎賢人、脚本は藤本有紀が手がける。
幕末に異国へ渡り、日本の未来に影響を与えたジョン万次郎こと中濱万次郎の生涯を描く。なぜ今、この人物が大河の題材に選ばれたのか。

 万次郎は漂流の末に米国へ渡り、言語や文化の壁を越えて知識と技術を吸収した存在だ。帰国後はその経験を生かし、日本の近代化にも影響を与えたとされる。その波乱万丈な人生は「ロマン」に満ちた冒険譚であると同時に、挫折や苦悩を伴う現実的な人間ドラマでもある。藤本は「どんな困難な状況にあっても、自分で進む道を選び取ることがどれほど大事かということを感じる」と語り、現代に通じる普遍性を強調した。

 制作統括の家冨未央も、現代社会との接点を強く意識する。「国籍や言語、宗教、文化の違いで人が分断されていく世の中」とした上で、異なる背景を持つ人々と関わりながら道を切り開いた万次郎の姿に意義を見いだす。「違いを理解することで人生を切り開いた人物」と位置付け、その生き方を描くことで前向きな価値観を提示したい考えだ。

 主演の山崎については、家冨が「触れるものへの反応や気付きが純粋で鮮明」と評価し、万次郎像と重ね合わせた。実際に米フェアヘーブンを訪れた際も、その姿勢が印象的だったという。山崎自身も「知れば知るほど魅力的な人」と語り、1年をかけて役を作り上げることに意欲を見せた。


 また、藤本にとっては2012年『平清盛』以来の大河脚本であり、長年温めてきた題材でもある。「いつかジョン万次郎を書きたい」という思いが実現した形だ。制作側の間でも企画段階から意見が一致していたことからも、この人物への関心の高さがうかがえる。

 19世紀の日米を舞台にした壮大なサバイバルと再会の物語でありながら、その核心にあるのは「異なる他者とどう向き合うか」という問いである。分断が深まりがちな現代において、万次郎の生き方は単なる歴史上の偉人ではなく、今を生きる人々への示唆として再評価されている。『ジョン万』は、その意味を問い直す作品となりそうだ。
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