いま、健康を意識した「水」が増えている。コンビニの飲料棚には、「内臓脂肪を減らす」「食物繊維がとれる」など、さまざまな機能をうたった水が並び、どうせ飲むなら健康のための付加価値も一緒に取りたいという声も。
水=ピュアなものという認識は今や昔、いかに健康価値を高めるかが求められる要素になっているのではないか。そうした中、先月には「腸活」に着目した水が登場。開発したのは、美容メーカーとして知られるBCLカンパニー。長年コスメを手掛けてきた同社が、健康分野への参入で、なぜ「腸活」に着目し、その手段として「水」を選んだのか。BCLカンパニー企画本部長の齊藤久美子さんに話を聞いた。

■腸活の“最新素材”が水に、毎日の生活に自然に健康価値をを取り入れる時代

 近年、コンビニやスーパーの飲料棚には、機能性を持たせた水(機能性ウォーター)がいくつも並んでいる。種類も豊富で、内臓脂肪対策、免疫ケア、ビタミン・ミネラル強化など、現代人の悩みに応じたさまざまな健康価値が加わっている。

 こうした機能を謳う商品が身近な店舗に並ぶ背景には、消費者の健康意識の高まりがある。デスクワーク中心の仕事や食生活の変化など、ライフスタイルが変わる中、30~40代でも、疲れやすい、肌が荒れるといった複数の悩みを抱える人は少なくない。“整う”ブームに見られるように、医療機関を受診する前に、まずは自分でできることから始めたいと考える人もいる。

 その“整う”手段のひとつとして、腸活がある。腸と健康の関係は古くから注目されており、20世紀後半には善玉菌・悪玉菌という概念が知られて以来、長く腸活トレンドが続いている。
これまで便通改善を目的とした取り組みが中心だったが、近年では、生きた乳酸菌だけでなく、死菌や菌が生み出す代謝物などにも注目が集まり、腸と美容や睡眠、免疫、認知機能などとの関係を意識した商品も増えている。

 次々と進化し続ける腸活市場。活発な研究と商品開発が消費者に恩恵をもたらす一方で、多種多様なアプローチや効果に翻弄される人々もいる。情報が多すぎて、何から手を出したらよいかわからず、「腸活迷子」となってしまうのだ。

「SNSやインターネットがあるからこそ情報だけは有象無象にあって、そこから自分に合った情報を選ぶことがめんどくさいと感じる人はいると思います。腸活で最も大切なのは“継続”ですが、味の好みや飽き、甘さ、高価格、錠剤を水で飲む手間のせいで飽きてしまう人が多くいます。だからこそ、日頃必ず行う『水分補給』そのものを味方につけるような、ストレスフリーなアプローチが求められていると感じます」(齊藤さん)

■調査で見えた“腸活には口コミの場がない”問題、「選ぶ」「続ける」ハードルも

 この9月、BCLから腸活の最新トレンドとして注目されている短鎖脂肪酸を含む「プレ・ポストバイオティクス」を配合した水が登場。いつもの水分補給を腸活に繋げるアイデアだ。新インナーケアブランド『GYURUTT(ギュルット)』を立ち上げ、機能性ウォーターで腸活市場に参入するかたちとなった。コスメブランドとして知られる同社は、アウターケアのスペシャリストとも言えるが、なぜインナーケアである「腸」に注目したのか。

「長年スキンケアなどのアウターケアに携わってきましたが、年齢を重ねる中で、外側からのアプローチだけではどうしても整いきらない限界を感じることがありました。からだの内側、特に『腸』をケアすることが、健康や美容のあらゆる悩みの“肝”になると辿りついたのです」(齊藤さん)

 繰り返される肌荒れ、くすみ、吹き出物など…現在はそれぞれの悩みに対して“成分”でケアをする美容法も浸透している。
しかし、外側のケアだけでは不十分で、「からだの内側からのアプローチが必要不可欠」だという。

「腸内環境の状態がわかりやすく表れるのは、お通じの次に肌だと考えています。腸は肌に関係する場所であるからこそ、美容メーカーとして内側からのアプローチは不可欠でした。また、お肌のケアに関する理論は肌質の違いはあってもある程度共通しています。しかし、腸内環境は一人ひとり全く異なるというパーソナル性を持っています。ここにアプローチすることこそが本質だと考えました」

 また、日本には味噌や漬物などの伝統的な発酵食品があり、日々の食生活の中に腸内環境を意識するヒントがもともと身近にあるという。

「味噌汁などの発酵食品を取り入れつつ、糖質や脂質の摂りすぎやバランスに気を付けた基本的な食生活を送ることが一番良いと言われていますが、本人の嗜好性もあり、我慢して生活を整えるのも大変だと思います。だからこそ、食生活やライフスタイルを大幅に変えるのではなく、日常の延長で根本ケアを叶える方法を模索してきました」

 インナーケア市場に参入するにあたり、「腸活」に注目した同社が事前調査を行ったところ、ある問題にたどり着いた。化粧品には総合口コミサイトが存在し、体験談を集約して選ぶ環境が整っているが、腸活領域にはそうしたプラットフォームが存在しないのだ。

「化粧品なら@cosmeのような場があって口コミを参考に探せますが、腸活の場合、情報はあっても、レシピサイトから医療系まで情報が散乱しており、自分に合うものを探すだけで疲れてしまいます。事前調査として行ったユーザーインタビューでも、腸活については知っているが、まず何をやっていいかわからない、一歩目のハードルがとても高いということを感じました」

■「続かない」をどう解消するか 美容メーカーが腸活に持ち込んだ発想

 このような「腸活迷子」の存在を目の当たりにし、時間が無くても朝のルーティンを定着させた『サボリーノ』や、直感的な訴求で迷わせない『乾燥さん』といったヒットブランドで培った知見を、インナーケアにも応用できると考えたという。

「我々美容メーカーである我々の強みは、消費者に勉強や我慢をさせず、直感的に選べて習慣化できる環境を提供することだと捉えています。
味や価格など、続ける上でのハードルをできるだけ減らし、とにかく簡単に、日常生活の延長で腸活できるようなブランドを目指しました。また、職場で『それ何?』と聞かれた、という声をいただいていて、それが会話のきっかけになっているようです。続けるには、置いておきたくなる見た目であることも大事だと思っています」(齊藤さん)

 同社が提案している腸活は、普段飲んでいる水から置き換えるというもの。ほんのりレモン味で味の風味が強くないため、味噌汁や炊飯などの料理にも活用できる。

「『生活への溶け込みやすさ』を重視し、日々の水分補給に組み込める利便性にこだわりました。当初は女性を主なターゲットとして想定していましたが、外食が多く胃腸の不調に悩む30代~70代の男性からも『水なら手軽に始められる』と予想以上の反響をいただいています」

 化粧品と比べて、腸活は効果を実感しにくいこともあり、後回しにされがちだ。だからこそ、「体感や継続しやすさを考慮した手軽な手段が求められている」と齊藤さんは感じている。

「美容という面から考えても、外側からのスキンケアと内側からのインナーケアは、どちらも欠かせないパートナーです。毎日の生活の中で自然に心地よく続けられる体験を届けていきたいと思っています」

 健康意識の高まりや高齢化の進展などを背景に、機能性飲料市場ではさまざまな商品が登場している。BCLカンパニーのように、アウターケアで培った知見をインナーケアに広げる企業の動きも、その一つであり、消費者の選択肢は今後も増えていくと考えられる。

 目に見える変化を追う「アウターケア」と、からだの内側に目を向ける「インナーケア」の両立が注目される現代。その両方を無理なく取り入れるためには、難しく考えすぎず、身近な選択肢の中から直感的に選んでも、良いのかもしれない。


取材・文/中西奈津子

【PROFILE】カンパニーエグゼクティブ 兼 企画本部 本部長 齊藤久美子さん 
 2012年BCL入社 。自身の生活実感を起点に『サボリーノ』や『乾燥さん』など数々のヒット商品をプロデュース 。2児の母として育児と両立しながら、25年に役員へ就任 。現在はスキンケア分野に留まらず「腸活」など新事業開発を牽引している 。
編集部おすすめ