桃屋のCMといえば、喜劇役者の三木のり平さん(1999年没)をモデルにしたキャラクターと、三木のり平さん本人によるナレーションのアニメCMが有名です。1958年の『江戸むらさき』CMから始まったこのアニメCMは、2018年に60周年を迎えます。
桃屋の象徴とも言える『のり平CM』ですが、きっかけはテレビCM放映に先立つ1953年に掲載された新聞広告でした。当時の主力商品だったのり佃煮『江戸むらさき』のシリーズ広告で、有名人が江戸むらさきのおいしさを語るものにある時、三木のり平さんが登場します。様々な有名人が随筆のような短い文章を載せていたところ、三木さんは執筆依頼に対し「私がとやかく言うより、絵でも書きましょう」と、鼻メガネの自画像にキャッチコピーのような短文を添えたものを差し出しました。
これが評判になり、三木のり平さんが自画像とともに様々な事物を描く『のり平漫筆』というシリーズ広告に発展したのです。三木のり平さんをモデルにしたキャラクターが登場するテレビCMは、この延長線上に誕生したものでした。『江戸むらさき』のCMとして誕生した第1作は、商品名の由来となった歌舞伎を題材にした『助六篇』です(助六が巻く鉢巻きの紫を『江戸紫』といい、これと佃煮に使う醤油の別名「むらさき」をかけた)。
以来、三木のり平さんはアニメの上で300以上のキャラクターに扮し、商品も『江戸むらさき』だけでなく、桃屋の様々な商品のCMに登場するようになります。1999年に三木のり平さんが亡くなった後もアニメCMのキャラクターは生き続け、三木のり平さんのご子息であるコメディアン、小林のり一(旧芸名:三木のり一)さんがキャラクターの声とナレーションを担当しています。
2012年を最後にのり平アニメのCMは休止していましたが、60周年を記念して復活。過去の名作を元にデジタル技術で完全復刻したCMが制作されました。
エイケンによるデジタル復刻では、フィルム時代の発色と質感、そして動画の動きの完全再現をするということで始まりましたが、元のCMフィルムが劣化・退色しており、コマごとに色味が異なってどれを「基本」とするか迷ったといいます。元のセルを参考にしようとすると、当時のフォルムの色再現性から逆算して色を指定しているからか、想像以上に明るい色になっており、そこにも驚きがあったとか。社内で過去のCMを実際に見ていた世代からアドバイスをもらいつつ、当時の参考ムービーと実際のセルを資料としながら、すっきりしたヌケの良いデジタル特有の発色が出ないよう、昭和っぽくスミを入れた色で再現していったそうです。
2018年1月5日からのCM放送に先立ち、2017年12月27日・28日限定で、東京・銀座のギャラリーでかつての『のり平アニメ』の資料など50点を展示した『のり平アニメ展』を開催します。これまでの作品の歴史を振り返り、当時を懐かしみつつ、アニメ作品の制作技術の進歩も感じられる展示となっています。また開催期間中、各日先着60名に2018年で発売45周年となる『ごはんですよ!』と『香ばし葱油味 穂先メンマ』の2本セットがプレゼントされます。
■桃屋『のり平アニメ』CM誕生60周年記念!『のり平アニメ展』 ■開催日時:2017年12月27日・28日 11:00~18:00 ■会場:石川画廊(東京都中央区銀座7-7-8) ※入場無料
(咲村珠樹)