2022年の国内のQRコード決済における「3分の2」のシェアを占めるPayPay。日常生活でQRコード決済が大きく浸透してきた中、PayPayはもはや「インフラ」に近い存在です。
ちなみに「2023年8月1日からの他社クレジットカードの締め出し」が大きく報じられたものの、他社クレカ締め出しは実際には2025年1月からに期間延長されています。2023年7月時点で1年以上の猶予があるため、引き続きPayPayを使いたい場合はこの期間中にPayPayカードを発行しておくとよいでしょう
(画像引用元:PayPay公式サイト)
加えてPayPayは「還元率のみ」で見ると、普通にクレジットカードや他社スマホ決済を使った方が「お得」なケースも。センセーショナルに報じられた「他社クレカ締め出し」や「還元率のみで見た時の微妙さ」が原因で、2025年1月までに他社スマホ決済に乗り換えようか、迷っている方もいるのでは?
この記事ではPayPayのサービス変更点とその対応策、他社スマホ決済との比較を行い、ユーザー目線で「本当にPayPayはやめたほうがいいのかどうか」を解説します。
結論としては、QRコード決済にインフラとしての安定性や使える店舗の多さ、利便性を求めるならば「PayPayがベスト」。一方で「還元率だけ」を見ると、他の決済手段も候補にはなり得ます。ただしこの場合、注意点もあります。それらについては後半で具体的に比較・解説します。
PayPayは「やめた方がいい」?他社スマホ決済との比較ポイント
スマホ決済を比較・検討する際は「還元率」と「使える場所の多さ、利便性」をセットでチェックすることをおすすめします。還元率だけが高くとも、使える場所が少なく、使い勝手が悪ければあまり意味がないためです。
「使える場所の多さ」は、基本的には加盟店数で評価可能。ただし各社によって「加盟店数」の定義が異なるケースがある点に注意が必要です。

PayPayは2022年8月時点の発表で、PayPayの加盟店数は374万カ所だと公表。
ユーザー目線では、自分がよく行くお店が「どのスマホ決済に対応しているか」チェックすると良いでしょう。公式発表の数値上はPayPayよりも他社スマホ決済の「加盟店数」が上回っていても、集計基準が異なるケースがあるため、実際に身の回りの複数店舗に足を運んでみると「やはりPayPayの方が導入店舗が多そうだ」ということもあるものです。
参考元:「PayPay」の登録ユーザーが5,000万人を突破! ~日本の人口の約2.5人に1人が登録! 決済を担う社会インフラへと成長~
参考元:au PAY、2023年3月の新規加盟店について
PayPayって本当にお得?
「還元率だけを見ると、他の決済手段も候補にはなり得る」と、先に書きました。前知識として2023年7月現在の、PayPayの還元率について簡単にご紹介します。
PayPayを利用している方の多くは、2018年12月に実施された「100億円あげちゃうキャンペーン」などをきっかけに「PayPayは還元率が高い」イメージをお持ちではないでしょうか。

しかし2023年7月現在、実際のPayPayの還元率は「最大2.0%」。PayPay残高での支払いの基本付与分は0.5%で、PayPay STEPの条件達成をしなくては1.0%の還元率は得られません(画像はPayPay公式サイトより引用)

PayPay ステップの達成条件は「PayPayまたはPayPayカード、PayPayカード ゴールドで合わせて30回の支払い(200円以上の支払いが対象)」か、「PayPayまたはPayPayカード、PayPayカード ゴールドで合わせて10万円の支払い」というもの。PayPay STEPのカウントは毎月リセットされるため、1.0%以上の還元を得るには毎月条件を満たす必要があります。単月での達成は難しくなくとも「毎月クリアする」のは相応に大変です(画像はPayPay公式サイトより引用)
たとえばクレジットカードなら、1.0%の還元が特に条件なく適用されるカードが多いことを踏まえるとPayPayは必ずしも「お得」とは言えないでしょう。そのため「ポイント還元重視」ならば他の決済手段の方が適していることがあるのは事実です。
「PayPayをやめた方がいい」理由:還元率が低い
先にも述べた通り、PayPayはしばしば「還元率の低さ」が他の支払い手段への乗り換えの動機になることがあります。
たとえばPayPayカードを発行している場合、基本付与分が1.0%。

たとえばJCB CARD Wの還元率は通常1.0%。Amazonでの買い物は2.0%。セブン-イレブンでの買い物では2%、スターバックスではスターバックスカードへのチャージで5.5%。楽天カードの還元率は通常1.0%で、他の楽天サービスを併用すると最大で16倍まで上がります(画像は各公式サイトより引用)
もっとも上記の比較は、単なる「還元率」に基づくものです。たとえばJCB CARD Wで貯まるポイントはOki Dokiポイントで、筆者が知る限りではよくANAマイルやJALマイルに交換されるポイントの1つです。「自分が使いたいお店でそれらのポイントやマイルが便利か」はまた別問題。
どのポイントを貯めたいのかという目的意識も忘れずに、還元率をチェックすることもおすすめします。
「PayPayカード」にあまりクレジットカードとしての魅力が無い
先述した通り、PayPayは2023年5月に「PayPayカード」「PayPayカード ゴールド」以外の他社クレジットカードの利用停止を発表しています。

たとえばエポスカードなど他社カードを登録しているユーザーは2025年1月までに「PayPayカード」を新規発行する必要があります。この変更は「PayPayをやめたほうがいい」大きな理由の1つになり得るでしょう。2枚目以降のクレカを保有したくない人も多いものです(画像はPayPayカード公式サイトより引用)
そのPayPayカードには、年会費無料、決済時の還元率が1%といったメリットがあります。
むしろ他社には旅行傷害保険、ショッピング保険などが自動付帯したり、ETCカードが年会費無料になる特典のあるクレジットカードも多くありますが、PayPayカードにはこういった特典はありません。
年会費有料のPayPayカード ゴールドのみ、他社の年会費無料のクレジットカードと同等の特典が付与されます。「クレジットカード」としては魅力が小さいとは言えるでしょう。この点は2025年1月までに、PayPayカードの特典や付帯保険の充実が期待される点ではあります。今後のアップデートが望まれる点だと筆者は感じます。
参考元:PayPayカード
参考元:PayPayカード ゴールド
【加盟店数・還元率】PayPayと他社QRコード決済を比較・検証
PayPayは日本最大のQRコード決済サービスですが、他社スマホ決済サービスも多数あり、PayPayよりも還元率が高いケースもあります。ここでは、人気の高い楽天ペイとau PAYをPayPayと比較してみました。
なお「楽天ペイ」「au PAY」の加盟店数には「※」を併記しています。これは集計基準がPayPayとは異なる可能性があるためです。ご注意ください。
楽天ペイ(※加盟店数:約500万):残高チャージ&残高払いで1.5%還元
楽天ペイは、楽天グループのQRコード決済サービスです。

楽天ペイは、楽天カードから楽天キャッシュにチャージすれば0.5%還元、さらにその楽天キャッシュから支払いを行えば1%還元、つまり簡単に1.5%のポイント還元を受けることができます。PayPayで1.5%還元を受ける場合、年会費11,000円(税込)の掛かるPayPayカード ゴールドを手に入れるか、もしくはPayPayステップの条件を達成する必要があります。
なお楽天ペイの加盟店数は「約500万」と多くのメディアで言われています。しかしこの数値は、楽天が公表している「楽天ペイ(アプリ決済)」「楽天ポイントカード」「楽天Edy」の利用可能カ所数の合計に基づくものとみられます。
楽天ペイ単体での加盟店数が「約500万」であるか否かは、筆者が今回確認した限りでは不明でした。そのため、繰り返しではありますが「還元率だけ」を重視した乗り換えにはご注意ください。あくまで「還元率」と「加盟店数」の両方を重視することは忘れないようにしましょう。
参考元:「楽天ポイント」、累計発行ポイント数が2.5兆ポイントを突破
au PAY(※ポイント・加盟店数:565万カ所):ローソンでポイントの2重取りが可能
au PAYとはKDDIが提供しているQRコード決済です。

au PAYは支払い200円(税込)ごとに1ポイントが付与、つまり、PayPayと同じく0.5%のポイント還元が受けられます(画像はau PAY公式サイトより引用)
さらにau PAYはローソンで支払いを行えば、au PAYのポイント還元にくわえ、Pontaカード分のポイント還元を0.5~1%受けることができます(カードの提示不要)。Pontaカード提示の1%還元を受けるためには、16:00~23:59の間に買い物をする必要がありますが、PayPayステップを達成するよりも楽だといえるでしょう。
なおau PAYのポイント・加盟店数とは、すでに述べた通りですが「設置個所数」です。加盟店数と設置個所数はあくまで別物である点は、ご注意ください。
PayPayをやめた方が良いと言われるその他の理由
PayPayをやめた方が良いと言われる理由は、上記以外にもいくつかあります。ここでは、その他の理由について紹介します。
不正アクセス被害の過去
2023年現在、PayPayでは顧客のクレジットカード情報などは暗号化して保存されているため個人情報管理の安全性は高いです。とはいえ、PayPayでは過去に不正アクセス被害によって、当時の全加盟店約260万点の銀行口座情報を含む情報が流出したことがあります。
もっともこうした点に不安がある場合は、機能の制限こそ大きくなりますが「本人確認をせずにPayPayを使う」手もあります。
参考元:サイバーセキュリティ.com「PayPay不正アクセスで加盟店等の情報約260万件流出か、ブラジルからの攻撃」
店舗側の導入メリットが小さくなっている
少し目線を変えて、「店舗側」の導入メリットも考えてみましょう。サービス開始当初、PayPayが熱狂的に受け入れられた背景には「店舗側の手数料も無料」だったことが挙げられます。

一般的に飲食店などがクレジットカードを決済方法として導入する場合、決済額に対して数パーセント程度の手数料が発生するのが一般的です。この手数料が経営を圧迫するとして、たとえば国内では飲食店や小規模事業者はいまだに「現金のみ」の店舗が多いのも事実です。だからこそPayPayの「手数料無料」は画期的で、爆発的に普及しました
しかし、PayPayは2021年10月以降、店舗側の手数料を有料化。1.60%または1.98%の2プランで、店舗に対してサービスを提供しています。「現金重視」の店舗であればPayPayを導入しないというのも、十分に選択肢としてはありかもしれません。
ただしPayPayの手数料が特段高いということはないので、この場合は「スマホ決済そのものを導入しない」判断となるでしょう。
参考元:「PayPay」加盟店における2021年10月以降の決済システム利用料について
PayPayの利用メリット:日本人の2人に1人が利用する決済インフラへ
PayPayをやめた方が良いと言われる理由をまとめてご紹介しましたが、PayPayにはそれを上回る利用メリットもあります。ここでは、PayPayの利用メリットについて紹介します。
「日本人の半分が利用するペース」のユーザー増加で一大経済圏へ
PayPayはすでに経済圏を築き、国内の5大経済圏のひとつにもなっています。
PayPayは、2023年2月にユーザー数約5,500万人を突破。日本の人口はおよそ1億2000万人であり、このユーザー増加ペースが継続すると「日本人の2人に1人が利用する」決済インフラになり得ます。事実として2022年のQRコード決済のシェアの3分の2はPayPay。
加えて2023年4月には「賃金のデジタル払い(給与デジタル払い)」が、労働基準法の改正によって解禁。PayPayは自社のリリースの中で、PayPayでの給与受け取りを可能にすることをすでに示唆しており、申請も提出済みと公表しています。
たとえば給与をPayPayで受け取り、PayPay上で家族に生活費を送金。日常の買い物もPayPayで行い、貯金や資産運用もPayPayの金融サービスで行うという未来がすぐそこに迫っているのではないでしょうか。
こうした利便性は従来の電子マネーやクレジットカードにはないものです。PayPayは経済圏であり「入れておいて損はないQRコード決済」であることは間違いありません。
オフライン決済が可能な機能を国内スマホ決済で初搭載
2023年7月20日、PayPayは国内主要QRコード決済で初めてインターネットにつながっていなくても決済ができる機能を搭載したことを発表しました。これにより通信障害時やインターネット回線が使用できない時などの状況下においても、決済が可能になります。
OTONA LIFE | オトナライフこれ助かる~ PayPay、コード決済初「オフライン支払いモード」を搭載 – 利用方法や注意点を紹介https://otona-life.com/2023/07/21/183785/現金やクレジットカードがなくても支払いが可能なキャッシュレス決済サービス「PayPay」。今ではさまざまなお店で利用できるため、普段から活用している人も多いのではないでしょうか。しかし、キャッシュレス決済には“電波状況が悪い場所では使用できない”という欠点が…。実際に...筆者の個人的な体験ですが、地下街などの店舗では電波が悪くPayPay決済できないこともこれまではしばしばでした。そうしたストレスが今後は無くなります。同機能はPayPayが特許を出願中でもあり、他社に対する大きな優位性と言えるでしょう。
PayPay支払いやチャージの上限額
2023年7月時点でのPayPayの支払いとチャージの上限額を一覧にすると以下の通りです。30日間で最大200万円程度利用できる点には一定の魅力があります。この最大額は、一般的なゴールドカードに相当する水準のためです。
過去24時間過去30日間PayPay残高50万円200万円PayPayあと払い(8月以降「クレジット」表記)50万円200万円青いバッジがついている+本人認証設定済みクレジットカード25万円25万円本人認証設定済みクレジットカード2万円5万円本人認証未設定クレジットカード5,000円5,000円金融商品の購入50万円200万円銀行口座のチャージ50万円200万円PayPayあと払いのチャージ
(8月以降「クレジット」表記)50万円200万円
ただし登録内容や利用状況次第で金額は引き下がります。またPayPayあと払いを利用する場合はPayPayカードで別途定められている上限額を上回る利用はできないため、ご注意ください。
PayPayポイント運用でポイントを増やせる
PayPayは、2020年4月に「PayPayポイント運用」というサービスを開始しました。これは、自分の持っているポイントを投資信託に運用することで、ポイントを増やせるというサービスです。
これは文字通り、現金ではなく持っているPayPayポイントで運用を行えるというもの。長期運用向けの金(ゴールド)コース、スタンダードコースをはじめ、短期運用向けのテクノロジーコース、チャレンジコース、逆チャレンジコースの5コースが用意されています(画像はPayPay公式サイトより引用)
実際の現金を使うわけではないため、投資初心者や、今後資産運用をしたいという方の練習におすすめです。
PayPayの利用がおすすめの人、おすすめではない人
PayPayはPayPayカード、PayPayカードゴールドを持っている方におすすめ。また、PayPay加盟店でよく買い物をする方は、意識せずともPayPayステップを達成できるため、簡単にポイント還元率アップも狙えます。
2023年現在、水道代や税金のキャッシュレス支払いはPayPayのみしか対応していない自治体もあります。「キャッシュレスで税金を便利に支払いたい」といった場合も、PayPayはおすすめです。
また今後、PayPayでの給与受け取りの開始もほぼ確実です。PayPayで給与を受け取り、家族への送金も貯金も資産運用もPayPay経済圏の中で行う日が近いでしょう。
そのため一種の「金融インフラ」としてPayPayを使うのもおすすめ。国内QRコード決済No.1のインフラであるため、導入店舗も多く、サポートも手厚いので「入れて困る」ことはあまりないです。
一方、買い物は基本的に他社クレジットカードなどで行う方、楽天ペイやau PAYなどでポイント還元率アップを狙っている方にはPayPayステップの条件達成が難しいのも事実。「還元率だけ」を重視すると、おすすめできない一面があります。
【まとめ】結局、PayPayは使い続けるべき?やめるべき?
2023年7月現在、PayPayを使い続けるべきか、否かは個人のライフスタイルにもよるため一概には言えません。
ただしPayPayには経済圏の1つとして、極めて大きな魅力があることは事実です。給与のデジタル受け取り開始に向けても、PayPayはすでに動いており、機能がユーザーに提供され始めると従来以上に大きく利便性が拡大するでしょう。
また「電波が悪い場所での決済エラーを確実に避けたい」といった場合にも、PayPayがおすすめ。この技術はPayPayが特許を出願中で、他社への圧倒的な優位性です。
加えて一部の自治体などでは、スマホ決済での税金支払いを「PayPayでのみ受け付けている」場合があります。こうした場合もPayPayを使い続けると良いでしょう。こうした点を踏まえると、少なくとも「使い続けても損が無い」QRコード決済であることは間違いありません。
一方で「還元率だけ」を重視すると、PayPayより優れた他社も存在するのは事実です。今後、2025年からは他社クレジットカードの追い出しもあるため、継続的な利用に不安がある方は「PayPayが自身に本当に必要なのか」「ポイント還元率の高いほかのQRコード決済の方がいいのではないか」を確かめ、利用するかどうかを決めましょう。
By OTONA LIFE