専門知識がなくても、テキストや画像、音声、動画などのコンテンツ作成を可能にしてくれる“生成AI”ですが、教育現場に広まっていくことについては様々な意見があるようです。その利用方法に関する調査結果を見ていきましょう。
小学生の生成AIの認知率は約2割
小学生の生成AIの認知率は約23%であることがわかりました(ベネッセコーポレーション調べ)
2022年11月にアメリカのOpenAI社が「ChatGPT」を公開すると、その高度な文章生成能力から一気に生成AIが注目されるようになりました。その後、さらに学習データ量が増え、2024年5月に発表された新モデル「ChatGPT-4o」では、応答の速度や精度が一気に向上しました。
そんな中、2023年7月に文部科学省より「初等中等教育における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」が発表され、教育現場での生成AI活用に関する取り組みや検証が続いています。
そのような状況を受けて、株式会社ベネッセコーポレーションは、全国の小学3年生から小学6年生とその保護者1032組を対象に、ChatGPTなどの生成AIの認知、利用経験や今後の利用意向、利用する上で大事だと思うことなどについてアンケート調査を実施しています。
最初に、対象となる1032組に対し、子どもと保護者それぞれの生成AIの認知率を調査。「生成AI(ChatGPTなど)について知っていますか?」と尋ねると、「知っている」と回答した小学生は233人で全体の23%でした。しっかりと詳細を認識できている子どもはまだそれほど多くないようです。

保護者の生成AI認知率は53%。「聞いたことはあるがどのようなものかわからない」という回答も合わせると、約8割の人が生成AIを知っているという結果でした(ベネッセコーポレーション調べ)
同様に、保護者を対象に生成AIの認知度を調べたところ、「知っている」と回答した人は53%(542人)でした。「聞いたことはあるがどのようなものかわからない」と回答した人の30%を合わせると、「生成AI」という言葉を聞いたことがある人は全体の約8割にのぼりますが、はっきりと認知している人はそこまで多くないという印象です。
生成AIを「知っている」と回答した子どものうち、利用経験者は約7割

生成AIを「知っている」と回答した子どもに生成AIの利用経験を尋ねたところ、全体の約7割が「使ったことがある」と回答しました(ベネッセコーポレーション調べ)
ここからは、生成AIを「知っている」と回答した子ども233人と保護者542人を対象に質問しています。まず子どもを対象に、「生成AIをどのくらい使っていますか?」と質問したところ、「よく使っている」の16%、「時々使っている」の28%、「試しに使ってみたことがある」の26%を合わせた70%が「使ったことがある」と回答しました。
現代のデジタルネイティブである子どもたちは、“生成AIがどのようなものかを知ったからには使ってみたい”という心理が働くのかもしれません。

生成AIを「知っている」と回答した保護者の66%は、子どもの生成AIの利用に肯定的な回答をしています(ベネッセコーポレーション調べ)
続いて、生成AIを「知っている」と回答した保護者に対して「お子さまの生成AIの利用についてどう思われますか」と質問したところ、14%が「積極的に使ってほしい」、52%が「少し使ってみてほしい」と回答。
一方で、20%が「あまり使ってほしくない」、4%が「まったく使ってほしくない」と、約2割の保護者は子どもの生成AIの利用に否定的であることも判明しています。
子どもに生成AIを使ってほしくない理由は「自分で考えなくなりそうだから」

保護者が子どもに生成AIを使ってほしい理由の第1位は「新しい技術の活用力を養うよい機会になりそうだから」でした(ベネッセコーポレーション調べ)
保護者の間で肯定的、否定的で意見が分かれた“子どもの生成AIの利用”ですが、その理由についても質問しています。
前項で「積極的に使ってほしい」「少し使ってみてほしい」と回答した理由を尋ねると、「新しい技術の活用力を養うよい機会になりそうだから」(35%)、「子どもが新しい興味に出会えそうだから」(22%)、「自分で考える力が伸びそう」(13%)、「情報の正誤の判断能力が身につきそうだから」(11%)、「書いて表現する力が伸びそうだから」(11%)、「子どもの興味や関心が深まりそうだから」(8%)といった順にランクイン。いずれも、子どもの成長や新たな興味への期待が感じられる回答となっています。

生成AIの利用に否定的な意見の中には、新しい技術への不安もあるようです(ベネッセコーポレーション調べ)
反対に、「あまり使ってほしくない」「まったく使ってほしくない」と回答した理由を尋ねると、最も多かったのは「自分で考えなくなりそうだから」の48%でした。他にも、「自分で書いて表現することをしなくなりそうだから」が23%、「情報の正誤の判断がつかなそうだから」が12%、「子どもにとって不適切な内容に出会ってしまいそうだから」が12%、「新しい技術で不安だから」が5%という結果になっています。
おおむね肯定的な意見の裏返しといった印象を受けますが、新しい技術ゆえの不安を感じている保護者も少なくないようです。
生成AIを使いたい(使ってほしい)のは「好きなことについて調べる時」

生成AI利用に肯定的な意見を持つ子どもと保護者に生成AIを使いたい(使ってほしい)シーンを尋ねたところ、最も多かった回答は「好きなことについて調べる時」でした(ベネッセコーポレーション調べ)
ここからはさらに、前項で今後の生成AI利用に肯定的な意見を持つ子ども205人と保護者358人に対象を絞って質問しています。
「どのような時に生成AIを使いたいですか/使ってほしいですか」と質問したところ、両者ともに最も多かった回答は「好きなことについて調べる時」でした。続く「学習での疑問解決」「調べ学習(自由研究など)での情報収集」は子ども、保護者ともに上位の回答となっています。
一方で、子どもはテーマ決めや疑問の解決といった回答が多いのに対し、保護者は「アイデアを探したり考えを広げたりする時」という回答が多く、保護者は生成AIを利用しつつ、子どもたち自身の能力や思考を伸ばしていってほしいと考えていることが伺えます。
最後に、生成AIを使う時にどのくらい大事だと思うか、5つの項目をあげて質問し、「とても大事/まあ大事/あまり大事ではない/まったく大事ではない/わからない」から回答を選択してもらいました。
同様に、「正しい情報かどうかを確かめる」に対しては子どもの90.5%、保護者の90.2%が、「生成AIへの質問のしかたを工夫する」に対しては子どもの86.7%、保護者の85.4%が、「生成AIが書いた文章をそのまま使わない」に対しては子どもの85.9%、保護者の86.6%が、「保護者と一緒に使うようにする」に対しては子どもの82%、保護者の73.3%が「大事だと思う」と回答していました。
それぞれの項目で子どもと保護者の回答に大きな差はないため、両者は同じような感覚で生成AIと向き合っている印象を受けます。
今後もさらなる進化を遂げ、生活にも深く溶け込んでくると思われる生成AI。子どもの学習面でもうまく活用し、学習効果の向上に役立てていけるよう、親子で一緒に考えていきたいですね。
出典元:【株式会社ベネッセホールディングス】
※サムネイル画像(Image:Robert Way / Shutterstock.com)
By OTONA LIFE