果物が嫌いという人は少ないと思うが、日本人の果物消費量は年々低下傾向にあるという。政府の家計調査などによると、世帯あたりではここ10年で2割ほど減少。
▽キウイのじゅうたん
日本から赤道を越え約9000キロ、オーストラリア南東の太平洋南端に浮かぶニュージーランド。地図を見ると、先はもう南極だ。10時間半の空の旅を終え、北島にある最大都市のオークランド空港に降り立つと「最果ての地のロマン」を感じる。4月の現地は秋と春の違いはあるが、ちょうど日本と同じで過ごしやすい季節だ。何はともあれ目指すのはキウイ農園。オークランドから国内便に乗り、北島の北側にあるキウイ栽培の中心地というタウランガに向かった。
この辺りの湾は「ベイ・オブ・プレンティー」という名前で、陸地の一帯は「ベイ・オブ・プレンティー地方」と呼ばれる。
農園主のティム・トーアーさんとリンダ・ホウズさんが「ここは果樹栽培に適した火山灰地で水はけがいい。雨が降るので水やりは不要」と説明してくれた。「頭を下げて股の間から見るといい」と言うので、天橋立でするように股のぞきをすると、「キウイのじゅうたん」の壮観が広がった。
▽ゼスプリ経験
69歳というティムさんは大学で園芸学を学び、卒業後はキウイ農家へ栽培指導などを行う仕事に就いた。2008年に3歳年下のリンダさんと出会い、10年3月に8ヘクタールのオーチャード(農園)を購入した。「生涯の伴侶とここで生きていくという決意ですね」と話を向けると、リンダさんは「私は国内の別のところに住んでいたんだけど、彼と出会ってここに来たの」と少女のような笑顔になった。
一方、ティムさんの答えはより現実的だった。「ゼスプリ・エクスペリエンス(経験)の一部になりたかったから」。
▽同じ夢
ニュージーランドのキウイ生産者にとって、ゼスプリの一員であることのメリットは大きい。病害虫対策や品種改良では、ゼスプリが社として研究開発した成果を共有できる。ティムさんが農園を購入した年にはキウイが細菌に感染する「かいよう病」が流行。その後の数年で全世界でのゴールドキウイの売り上げを半減させるほどの猛威を振るった。ティムさんも「うちのゴールドキウイも壊滅した」と振り返る。しかし、その後ゼスプリが病気への耐性を持った新品種のサンゴールドキウイを開発。サンゴールドキウイが生産量、売り上げともグリーンキウイを圧倒していく流れをつくった。
ニュージーランドは輸出の6~7割を、キウイや乳製品、羊肉、ワインといった農産品が占める。
(中に続く)