「ふやしたいのは、笑顔です。」―。テレビCMなどで多くの人が聞いたことがあるだろう、アートネイチャーのモットーだ。
アートネイチャーと絵本の意外な取り合わせ。なぜ、アートネイチャーが絵本なのだろうか?
絵本ナビは2001年、絵本を通じて子どもたちが豊かな時間を過ごし、新しい世界を知るきっかけになってほしいとの趣旨で設立された。絵本に関する豊富な情報量を生かし、サイトの運営や絵本販売などを手がけてきたほか、絵本を求める子ども・施設と、それを応援したい企業や団体をつなぐことで絵本を寄贈する「こどもえほんだなプロジェクト」を進めている。同社は「いま必要なのは、子どもが安心できる場所で、保護者に限らない多様な大人が、子どもに一冊でも多く絵本を読みわたす機会をつくること」と訴えている。
アートネイチャー広報部の石田有沙主任が、偶然インターネットで絵本ナビの記事を目にしたのは去年の春だったという。同社はSDGsへの取り組みに定評があり、17の目標の中に「質の高い教育をみんなに」という項目があったため「このプロジェクトは未来を担う子どもたちに平等に教育を届けることができる。会社の方針と親和性がある」と確信。「絵本の寄贈で子どもを通じた社会貢献活動に生かせないか」と上司に相談すると、社内での調整や事業の承認が思いのほか順調に進んだ。絵本ナビの担当者とも何度も交渉を進めた結果、夏から秋にかけ、都内の乳児院や子育て支援センター、富山県の認可外保育園などへの寄贈が決まり、今年の春までに寄贈先の施設は計5カ所になった。
アートネイチャーはこれまでもSDGsへの取り組みを積極的に進めている。環境面では容器に再生PETやエコボトルを採用し、プラスチック削減に努めるほか、全社的に省エネを促進。
今年に入り、石田主任のもとに絵本ナビ経由で寄贈先からの「喜びの声」が届いた。「子どもたちが喜んでくれているという生の声が聞けてうれしい。絵本をきっかけに子どもたちの世界が広がり、笑顔が増えてくれたら」とこのプロジェクトの発展に期待を寄せる。
ただ、アートネイチャーにとって、絵本のプロジェクトは始まったばかりだ。石田主任は「まずは5施設への寄贈が決まってほっとしている」とした上で「大切なのは継続すること。反応をみながら、さらなる展開ができないか、社内全体で考えていきたい」と今後の活動に意欲を示す。
広報部の菅谷健一部長は「役員もこのプロジェクトの意義を理解しており、新しい社会貢献へのきっかけ作りができればよいと考えている」と歓迎する。現時点では、同社にとっての「第2弾」の時期は未定だが、今後も寄贈先の施設の地域性なども考慮して、積極的に寄贈を進めていきたいという。
「ふやしたいのは、笑顔です。」。アートネイチャーが大切にしているおなじみのモットーに加え、今年からは、絵本を通じて子どもたちの笑顔を増やしていくつもりだ。
絵本ナビによると、これまで「こどもえほんだな」の設置を希望する施設の申し込みは百数十件に上っているという。