この夏、子どもたちの思い出づくりにぴったりな万博。どう過ごせばより特別な体験になるのか。
■「楽しい」が「学び」につながるパビリオン
「勉強しに来たわけじゃないけど、楽しい体験が結果的にエネルギーや環境の理解につながった」となるのが、万博の面白いところ。入り口はあくまでゲームや遊びでも、振り返ったときに自然と学びに結びつく仕掛けが各所にある。その仕組みが特に充実しているのが日本企業のパビリオンだ。
例えば「ガスパビリオン おばけワンダーランド」では、XR(クロスリアリティ)ゴーグルを装着して、かわいいおばけに変身する体験から始まる。遊び終えた後は、未来の都市ガス「e-メタン」やカーボンニュートラル化への取り組みについて自然に学べる流れだ。「ブルーオーシャンドーム」では、超撥水加工の盤面を転がる水滴が、滝・川・海へと変わるインスタレーションに目を奪われる。その美しさに後ろ髪引かれつつ次のエリアへ進むと、美しい海や生命体がプラスチックゴミに飲み込まれていく地球の痛ましい映像に心がざわつく。海洋環境問題を「心で感じる」仕掛けだ。
■ネットでは得られないホンモノ体験
今はインターネットで何でも調べられる便利な時代。でも、実際に「会って話す」「その場で感じる」体験には特別な価値がある。パビリオンで案内してくれるアテンダントの中には、海外から来日している人も多い。
ヨルダン館やクウェート館では、本物の砂漠の砂に触れることができる。実際に手で触れたサラサラの砂、そのひんやりした感触は、教科書の知識よりもずっと深く子どもの心に残るはずだ。「万博で触ったあの砂の国」という思い出は、いつかその国や世界への興味につながるかもしれない。ホンモノに触れた体験が、子どもの将来の種になる。
■予約なしで楽しめる場所も上手に活用
人気パビリオンの予約が取れなくても心配しなくていい。海外パビリオンの多くは予約なしで入場できる。また、パビリオン以外にも見どころはたくさんある。
例えばトイレ。会場には「普通のトイレ」とは別に、若手建築家が設計した8つの「デザイナーズトイレ」と4つの「トイレ併設の休憩所」がある。これらの施設は、1970年の大阪万博を担当した若手建築家が後に著名な建築家になったように、大阪・関西万博でも「若い世代の挑戦の場をつくりたい」という願いから生まれた。どこが「普通」と違うのか、注目しながら利用してみるのもいい。
さらに、海外の食事にもぜひ挑戦してほしいが、子どもには難しいかもしれない。そんな時は、日本のグルメやスイーツの食体験もおすすめ。大阪ヘルスケアパビリオンの予約なしで入れる「ミライの食と文化ゾーン」では、未来型の食体験ができる。「AIR WATER NEO MIX STAND」ではロボットが野菜や果物のスムージーを提供してくれる。
■世界地図を広げて「思い出の整理」
万博の楽しみは会場だけで終わらない。自宅に帰ったら、ぜひ世界地図を使って「思い出の整理」をしてみよう。ヨーロッパ、アジア、アフリカ・・・訪れたパビリオンの地域を塗りつぶしていくと、子どもたちの記憶もより鮮明になる。「北米は行ったけど、南米はまだだね」などと話しながら、次に行きたいパビリオンの計画を立てるのも楽しい時間になるだろう。
私自身、52歳になった今でも、8歳の時に訪れたポートピア’81の思い出が忘れられない。海外旅行が簡単ではない今だからこそ、子どもたちにはぜひ万博という非日常の中で異文化に触れる体験をさせてあげたい。