商船三井が8月20日、パシフィコ横浜で開催された第9回アフリカ開発会議(TICAD9)の併催イベント「TICAD Business Expo & Conference」に登壇し、アフリカでの発電船事業について紹介した。

 「発電船」とは聞き慣れない言葉かもしれないが、文字通り発電する機能を持つ船舶のこと。

海に浮かぶ発電所だ。もともと重油を燃料とする発電船事業を展開していたトルコの発電船事業者カルパワーシップ社と商船三井が協業。商船三井がアジアの海運会社で唯一手がける、LNG(液化天然ガス)の貯蔵・再ガス化機能を有する“FSRU”(Floating Storage and Regasification Unit、浮体式LNG貯蔵再ガス化設備)を発電船と共に設置することで、発電船の燃料を環境負荷の低いLNGに転換する取り組みを進めている。

 LNG船(最下部の船)で運ばれてきたLNGを隣のFSRUに移し、貯蔵。電力需要に応じてLNGをガス化(気化)させ、発電船(上部にある3隻)に送り、ガスでつくった電力を陸上の電力網に送電する。

 伝統的な海運事業に加え、船舶を活用した多様な社会インフラ事業を展開する商船三井。現在アフリカでは、モザンビークとセネガルの2カ国で発電船事業を開始している。

 同社の小林潤氏は、アフリカの電力事情について、アクセス格差の是正とグリーンエネルギーへの移行という二つの緊急の課題があるとする。「大陸全体で、約6億人が依然として電気へのアクセスがない状態で生活しています。サハラ以南のアフリカには、電気が使えない人々の約80%が集中しており、多くの国ではアクセス率が30%未満です。単に不便なだけでなく、医療、教育、産業の成長が制限されている状態です。同時に、世界は脱炭素化へと進んでいます。

発展の途上にあるアフリカ経済では、電力供給を実現しつつ、エネルギー転換に貢献する解決策を必要としていますが、ここに当社のLNG発電ソリューションの意味があると考えています」という。「私たちの事業の主な利点は三つあります。第1に速度。陸上の発電所は、土地の取得や許可取得などに通常5年から7年かかりますが、発電船は数カ月で電力供給を開始できます。第2に柔軟性。需要の変化に応じて船舶の場所を移すことができます。第3にクリーンな燃料であること。LNG発電は重油と比較してCO2排出量を約2~3割減らすことができます」とアピールする。

 同社の渡邉達郎常務執行役員は「LNG発電船事業をはじめとするさまざまな事業でパートナーと協力し、アフリカの持続可能な未来を支えるインフラ、物流、エネルギーソリューションを構築したい」としている。

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