市街地での出没などクマに関する報道が世の中を震撼させた2025年。クマとの距離がこれほどまでに意識された年はなかっただろう。

実際に山という「現場」を知る登山者はどう感じ、どう行動しているのだろうか。アウトドア事業を行うヤマップ(福岡市)は、全国の登山者を対象に「クマに関する登山者意識調査」を実施した。インターネットを利用したアンケート調査に1415人が回答した。

 「登山中に、クマを目撃した経験はありますか?」という質問には、約3割があると回答。クマ以外の野生動物(サルやイノシシなど)との遭遇経験者は93.2%に達し、野生動物は「いて当然」の存在になっているようだ。

 登山頻度の変化について調査したところ、全体では約6割が「変わらない」と回答。地域別に見ると、「九州・沖縄」では93.7%が変わらないのに対し、「北海道・東北」では48.3%にとどまるなど、クマの出没状況による地域差が顕著に表れている。また、「週に1回以上登るコア層」や「共存のための環境づくりを支持する層」ほど、これまで通り活動を継続する傾向が見られた。

「登山者はクマの生息域にお邪魔している意識を持つべきか」聞いたところ、92.8%が「お邪魔している意識を持つべき」と回答。活動地域別では「北海道・東北」の割合が高く、登山歴や遭遇経験の有無においても、山との関わりが深い層ほどその傾向が強まっている。

 昨今のクマの話題で変更・強化した対策を聞くと、「熊鈴・ラジオ」(54.7%)や「事前の情報収集」(47.3%)、「単独登山の回避」(38.3%)などが上位に。撃退(スプレー等)よりも遭遇回避(会わない対策)が重視され、接触そのものを未然に防ぐ工夫が主流となっていることがうかがえる。

 また、具体的な対策に対するスタンスを聞くと、「人間の安全のための管理(駆除等)」と「共存のための環境づくり(保全)」の両方を支持する層が最多(43.1%)となり、駆除のみに賛成の「駆除優先派」(37.9%)や、保全のみに賛成の「理想的共存派」(17.1%)を上回った。

 なお、ヤマップでは、12月22日(月)20時から、YAMAP公式YouTubeチャンネル で「クマ観」をアップデートするライブ配信を開催する予定。クマの生態に詳しい山﨑晃司教授(東京農業大学 地域環境科学部)を招き、「クマに遭遇した方はどのように行動したか」「遭遇したとき、本当に有効な対処法・心構えとは?」など、報道だけでは見えてこないクマの生態を、さまざまな視点から解説する。2026年の登山シーズンをより豊かに、安全に楽しみたい人はぜひチェックしよう。

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